抗がん剤の副作用(好中球減少)の時期で治療効果を予測:転移性大腸がん患者での研究

採血

抗がん剤治療による副作用は、患者さんにとって非常に厄介な問題であり、生活の質を低下させるばかりでなく、ときに治療を延期または中止せざる終えない事態を引き起こす原因になります。

一方で、「ある種の副作用がでたほうが、抗がん剤の治療効果が期待できる」という報告もあります。その副作用の一つが好中球減少(neutropenia)です。

これまでの多くの研究によると、抗がん剤による好中球減少は、乳がん、子宮頸がん、膵臓がん、および卵巣がんなどにおける予後良好な因子であると報告されています。つまり、抗がん剤による好中球減少は、「その薬ががんに効いている」という証拠だと言えます。

また最近、この抗がん剤による好中球減少の時期(タイミング)が、治療効果(生存期間)に影響をおよぼすことが明らかになってきました。

今回、転移性大腸がん患者に対する標準的な抗がん剤治療(mFOLFOX6)によってみられる早期の好中球減少は、長期生存のサインとなるというあらたな研究報告を紹介します。

抗がん剤による好中球減少

好中球は白血球の一種で、細菌や真菌などによる感染からからだを守るという重要な役割を果たしています。

一般に、血液中の好中球数が1マイクロリットル当たり1000個未満に低下すると、感染のリスクが高くなり、500個未満になると、感染のリスクが大幅に上昇するといわれています。

多くの抗がん剤の副作用として、好中球減少がおこります。この場合、治療を一旦中止したり、投与スケジュールを変更したり、あるいは抗がん剤の量を減らすなどの対策が必要となります。

また重症の好中球減少では発熱をともなう場合があり、発熱性好中球減少症(FN)と呼ばれています。

抗がん剤減少がおこるタイミングは抗がん剤の種類(レジメン)や投与量によっても様々ですが、一般的には抗がん剤投与後7〜14日ごろに最も減少します。

また、そのタイミングもさまざまで、1クール目(初回)の抗がん剤投与でおこることもありますし、2~3クール目以降におこることもあります。

好中球減少のタイミングが転移性大腸がん患者の予後を予測:mFOLFOX6治療患者における研究

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Timing of chemotherapy-induced neutropenia predicts prognosis in metastatic colon cancer patients: a retrospective study in mFOLFOX6 -treated patients. BMC Cancer. 2017 Apr 4;17(1):242. doi: 10.1186/s12885-017-3240-6.

【対象と方法】

2012~2014年の間に、初回治療としてmFOLFOX6(フルオロウラシル(5-FU)、ℓ-ロイコボリン(レボホリナート)、オキサリプラチン(エルプラット)の併用療法)を実施した転移性大腸がん患者290人を対象としました。

血液中の好中球数が1マイクロリットル当たり2000個以下の場合に好中球減少ありとしました。

副作用としての好中球減少がみられなかったグループを好中球減少なし群、みられたグループを好中球減少あり群とし、また好中球減少ありの場合、3クール終了時より前にみられたグループを早期群3クール終了時より後にみられたグループを晩期群として分類しました。

【結果】

■ 全体で、181人(63%)に好中球減少がみられ、141人(78%)は早期、40人(22%)は晩期におこっていました。
■ 全生存期間(中央値)は、好中球減少なし群6.7ヶ月であったのに対し、好中球減少あり群で16.3ヶ月有意に延長していました(P < 0.001)。
■ さらに、全生存期間(中央値)は早期群20.7ヶ月晩期群12.8ヶ月であり、晩期群よりも早期群で有意に延長していました(P < 0.001)(下図)。

好中球減少の時期と全生存 mFOLFOX6

■ 無増悪生存期間(中央値)も同様の結果であり、早期群が最も長く、次いで晩期群、好中球減少なし群となっていました。
■ 多変量解析(複数の互いに関連する変数を同時に分析する統計分析手法)の結果、好中球減少の時期は予後を決める独立した因子となり、晩期群では(好中球減少なし群に比べて)全死亡リスクがおよそ24%早期群では全死亡リスクがおよそ62%も減少するという結果でした。

【結論】

以上の結果より、転移性大腸がん患者に対するmFOLFOX6治療によって引き起こされる好中球減少の時期は、生存期間を予測する因子であり、早期にみられた場合には最も長期の予後が期待できるという結論でした。

 

つまり一般的には、おなじ患者さんのがん細胞好中球抗がん剤に対する感受性(反応)は同様であると予想され、好中球など骨髄細胞へのダメージが大きいほどがん細胞への効果も高くなると考えることができます(もちろん抗がん剤が効きにくいがん細胞もありますが)。

じっさいの臨床においては厄介な問題となる抗がん剤の副作用ですが、このように予後良好のサインとなる場合があります。

 


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