QOL(生活の質) 肺がん

がんによる体重減少と悪液質(カヘキシア)の治療にアナモレリンが有効:進行性肺癌患者での臨床試験

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食欲不振および体重減少を特徴とする悪液質(カヘキシア)は、進行がん患者さんにとって生活の質を低下させるだけではなく、栄養状態を悪化させ直接的な死因となる最も厄介な問題です。

カヘキシアは通常の栄養サポートだけでは完全には改善せず、また効果のある薬剤もほとんどありません。

アナモレリンは、空腹時に消化管から分泌されるグレリンというホルモンと同様の作用を発揮する経口薬で、食欲の増進効果に加え、成長ホルモンの分泌促進によって筋肉量と体重の増加が期待できるがん悪液質の薬です。

海外での臨床試験において、アナモレリンはがん患者の食欲不振および悪液質を改善し、体重を増加させる効果が確認されています。

今回、悪液質を伴う日本人の進行性非小細胞肺癌患者に対するアナモレリンを用いた比較第III相試験の結果が報告されました。

アナモレリン(ONO-7643)とは?

グレリンは消化管(おもに胃)から分泌されるペプチドホルモンの一種であり、視床下部に働いて食欲を増進させ、また下垂体に作用して成長ホルモン(GH)の分泌を促進します。

アナモレリンは、小野薬品工業が開発したグレリンと同様の作用を発揮する経口グレリン受容体作動薬です。

これまでに海外において、カヘキシアをともなう進行性の非小細胞肺癌患者を対象として、アナモレリンの臨床試験(ROMANA試験)が実施され、体重(とくに除脂肪体重)の増加および食欲不振の改善が確認されています。

同時に、日本においても非小細胞肺癌の患者を対象とし、アナモレリンの有効性を調査した臨床試験が行われてきました。そして今回、無作為化プラセボ対照比較試験の結果が報告されました。

カヘキシアをともなう日本人非小細胞肺癌患者におけるアナモレリンの無作為化プラセボ対照比較試験

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Anamorelin (ONO-7643) for the treatment of patients with non-small cell lung cancer and cachexia: Results from a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter study of Japanese patients (ONO-7643-04). Cancer. 2017 Dec 4. doi: 10.1002/cncr.31128. [Epub ahead of print]

【対象と方法】

本試験は、食欲不振と半年以内に5%以上の体重減少(カヘキシア)をみとめる切除不能進行小細胞肺癌(ステージ3/4)の日本人患者174人を対象とした、二重盲検ランダム化プラセボ対照比較試験です。日本の多施設(43施設)で実施されました。

登録後、アナモレリン群(84人)あるいはプラセボ群(90人)にランダムに割り付けられました。アナモレリン群は、1日1回、100mgのアナモレリンを経口投与しました。

12週間の治療期間中における、除脂肪体重(lean body mass:全体重のうち体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓などの総量)の変化、および食欲、体重、生活の質、握力などを調査しました。

【結果】

■ 除脂肪体重の変化(平均)は、アナモレリン群で+1.38Kg、プラセボ群で-0.17Kgで、アナモレリン群で有意に多かった(P < 0.0001)。
■ 全時点において、除脂肪体重の増加体重の増加、および食欲不振症状改善はすべてアナモレリン群で良好であった(下図)。

アナモレリン

■ アナモレリン群では、プレアルブミン値の上昇がみられた(3,9週目)。
■ 一方、握力および6分間歩行の結果については、両群間に差はみとめなかった。
■ アナモレリンによる目立った副作用はなく、安全に投与可能であった。

【結論】

アナモレリンは、カヘキシアを認める進行肺癌患者において、体重(除脂肪体重)を増加させ、食欲不振の症状を軽減し、栄養状態を改善することがあきらかとなりました。

現在、がん悪液質の有効な治療法はないため、食欲不振や体重減少で悩む多くの進行がん患者にとってアナモレリンの承認が待たれます。

 

☆がん患者さんが体重を維持・増加させるためにできることについては、以下の記事をご参照ください。


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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