抗がん剤治療の副作用としての筋肉量減少(筋肉やせ)に注意!生存率低下と相関
抗がん剤治療中には、筋肉量の減少がおこることがあります。
つまり、「筋肉やせ」です。
これは、食欲の低下によって食事量(特にたんぱく質の摂取量)が減ったり、疲労感などから活動性(運動量)が低下したり、あるいは代謝異常などが原因であると考えられています。
この筋肉量の減少は、体重の低下とはまた別の問題であり、予後不良(生存率の低下)のサインであるという研究報告がいくつかあります。
今回は、転移性大腸がん、胆道がん、卵巣がん患者における抗がん剤治療中の筋肉量減少と生存期間との関係についての報告を紹介します。
抗がん剤治療中の筋肉量減少と生存率との関係
1.大腸がん
【対象と方法】
転移を認める大腸がん患者67人(平均年齢66歳)を対象とし、抗がん剤治療の前後で筋肉の面積を比較し、筋肉量の変化を測定しました。筋肉の面積はCT画像上の第三腰椎のレベルで測定しました。
この筋肉量の変化と生存期間との関係について調査しました。
【結果】
■ 全体では、3ヶ月間の抗がん剤治療中に、筋肉の面積は6%減少していました(P < 0.001)。
■ 治療期間中の筋肉量の減少が高度(9%以上)であったグループでは、それ以外(9%未満)のグループに比べて有意に予後不良でした(6ヶ月目の生存率が33%対69%、1年目の生存率が17%対49%, P = 0.001)(下図)。
■ 他の因子(年齢、性別、併存疾患など)で調整した予後因子の解析では、治療中の筋肉量の減少が9%以上であることは、死亡率をおよそ4.5倍に増加させるという結果でした。
【結論】
抗がん剤治療中の転移性大腸がん患者では、筋肉量の減少がみられ、高度の減少は生存率の低下と関連していました。
栄養補助や運動などによって筋肉量を保ち、予後を改善することができるかについてはさらなる臨床試験が必要であるとしています。
2.胆道がん
【対象と方法】
胆道がん(肝内胆管がん、胆嚢がん、肝外胆管がん、十二指腸乳頭部がん)患者524人を対象とした研究です。
ゲムシタビン+プラチナ製剤(シスプラチンなど)あるいは5-FU+プラチナ製剤などによる抗がん剤治療を受けました。
CT画像上、第三腰椎のレベルでの全筋肉面積を求め、身長で補正した値を骨格筋インデックスとしました。
【結果】
■ 抗がん剤治療中に骨格筋インデックスが減少したグループでは、維持されていたグループに比べ全生存期間が有意に短かった(P < 0.001)(下図)。
■ また、診断時の骨格筋減少および肥満も、全生存期間の短縮と相関していた。
【結論】
抗がん剤治療をうける胆道がん患者では、診断時の骨格筋減少と肥満に加え、治療中の骨格筋の減少が最も正確に予後不良を予測するマーカーとなることが示されました。
3.卵巣がん
【対象と方法】
卵巣がん患者123人について、術前抗がん剤治療の前後における骨格筋量をCT上第三腰椎レベルで測定しました。
骨格筋量の変化と予後(生存期間)との関係について調査しました。
【結果】
■ 抗がん剤治療中に骨格筋量が減少したグループでは、維持または増加していたグループに比べ全生存期間が有意に短かった(P = 0.004)(下図)。
■ 一方、治療開始時の骨格筋量は生存期間に影響しなかった。
【結論】
術前抗がん剤治療をうける卵巣がん患者では、治療中の骨格筋の減少があると予後が悪くなることが示されました。
まとめ
以上、転移性大腸がん、胆道がん、および卵巣がんにおいて、抗がん剤治療中の骨格筋量の減少は生存率の低下と相関していました。
つまり、抗がん剤治療中には筋肉を維持することが大切です。
現時点では、どうしたら筋肉減少を防げるかについてエビデンスのある方法は報告されていません。
今後、栄養介入(たんぱく強化補助食など)や運動(レジスタンス運動)、あるいはサプリメントが筋肉維持に有効かどうかについての臨床試験が必要だと考えられます。
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