肥満と低体重(やせ型)は肺がん術後の生存率を低下:適正体重をキープする重要性

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日本における平均寿命の延長にともない、高齢のがん患者が増加しています。

がんの標準治療には手術、抗がん剤、放射線治療がありますが、高齢のがん患者さんに手術を選択するかどうかについては議論がつづいています。

とくに高齢のがん患者さんでは合併症のリスクが高いこともあり、術後の生存期間(余命)が短いことが予測される場合には手術の選択は慎重であるべきです。

これまでの研究により、術前の体重(体格指数:BMI)が術後の生存率に影響することがわかっています。とくに高齢のがん患者さんでは低体重(やせ型)の人が多いため、体重の予後への影響が無視できません。

今回、高齢の肺がん患者において、術前の体格指数(BMI)と術後の生存期間との関係を調査した研究結果が報告されました。

この結果によると、肥満と低体重はどちらも予後が悪化する予測因子であったとのことです。

やはり高齢者においても、食事と運動によって適正体重をキープすることが重要なようです。

体格指数(ボディマスインデックス:BMI)とは?

体格指数(BMI)とは、身長と体重から算出される肥満度をあらわす指数のことです。

BMIは以下の式で計算されます。

BMI = 体重(kg) ÷{ 身長(m)}

こちらのウェブサイト(CASIOの計算サイト)でも簡単に計算できます!

日本肥満学会による診断基準では、BMIが18.5未満を低体重(やせ型)25以上を肥満と診断しています(下表)。

日本肥満学会の肥満基準(2011年)
状態 指標
低体重(やせ型) 18.5未満
普通体重 18.5以上、25未満
肥満(1度) 25以上、30未満
肥満(2度) 30以上、35未満
肥満(3度) 35以上、40未満
肥満(4度) 40以上

 

高齢の肺がん患者における体格指数(BMI)と術後成績との関係

Significance of Body Mass Index for Postoperative Outcomes after Lung Cancer Surgery in Elderly Patients. World J Surg. 2018 Jan;42(1):153-160. doi: 10.1007/s00268-017-4142-0.

【対象と方法】

2004年から2011年までに外科的切除をおこなった1673人の肺がん患者が対象となりました。このうち、80歳以上の高齢患者158人(9.4%)について解析を行いました。

患者のBMIが18.5未満(低体重)、18.5以上・25未満(普通体重)、25以上(肥満)で3つのグループに分類し、術後の合併症および予後(生存率)を比較しました。

【結果】

■ BMIと術後の合併症には明らかな相関はなかった。
■ 全生存期間の解析では、低体重(BMI 18.5未満)および肥満(BMI 25以上)は、普通体重(18.5以上・25未満)に比べ、有意に短くなっていた(下図)

高齢肺がん患者におけるBMIと全生存率

■ 同様に、疾患特異的生存期間の解析では、低体重(BMI 18.5未満)および肥満(BMI 25以上)は、普通体重に比べ、短い傾向にあった。
■ 生存期間に影響を与える因子についての多変量解析(複数の互いに関連する変数を同時に分析する統計分析手法)では、普通体重(BMI 18.5以上・25未満)が唯一の独立した予後良好な因子として同定された。

【結論】

■ 低体重および肥満は、高齢の肺がん患者における手術後の予後不良因子である。
■ BMIは、高齢の肺がん患者における予後指標マーカーとして、簡便で有用である。
■ BMIの情報を考慮した手術適応の決定がのぞましい。

以上です。

一般的にがん患者では、体重減少がみられることがよくありますが、とくに高齢者では適正な体重を維持することが重要であることがわかります。

同時に、肥満も予後を悪くする因子であるため、日頃から食事および運動によって適正体重をキープしましょう!


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