がんのバイパス手術とは?どんな癌で何の目的でするの?気になる合併症や予後は?
がんの手術には、がんを取り除くための手術(切除手術)だけでなく、がんによる管(くだ)や胃腸のつまりを改善するための手術があります。
これをバイパス手術といいます。
がんのバイパス手術の目的は、がんによる嫌な症状、合併症を改善し、生活の質を高めたり、抗がん剤など他の治療が行える状態にすることです。
バイパス手術には、がんの部位や病態に応じて様々な方法があります。
ときに複雑で、いくつかのバイパスを組み合わせる手術法もあります。また、栄養状態が悪い患者さんが多いため、術後に合併症がおこるリスクも高くなります。
今回は、がんのバイパス手術について、その目的、種類、合併症、予後などについて解説します。
がんのバイパス手術とは
がん(進行がん)による胆管(胆汁が流れる管)や消化管(胃腸)のつまりに対して、あらたな迂回路(うかいろ)をつくることをバイパス手術と呼びます。
多くの場合、ステージ4など切除不能ながんに対して行われます。
抗がん剤など他の治療にそなえて予防的に行われることもあります。
また、切除手術を目的として開腹し、がんの広がりが手術前の予想以上であった場合、術中に切除ができないと判断して、バイパス手術に切り替えることもあります。
がんのバイパス手術の目的は、胆道(たんどう)の閉塞の場合は、黄疸(おうだん)によって肝不全になるのを防ぐためです。
また、消化管(胃や腸)の場合は、がんによる消化管のつまりを改善し、食事がとれるようにすることが目的となります。
いずれの場合でも、がんそのものは切除できないため、そのまま残ることになります。
したがって、全身状態や生活の質を向上させるためや、その後の抗がん剤治療のための治療といえます。
がんのバイパス手術の種類
がんのバイパス手術には、大きくわけて胆道バイパスと消化管バイパスがあります。
また、胆道バイパスと消化管バイパスを組み合わせる場合もあります。たとえば膵臓がんでは胆管と十二指腸の両方が閉塞していることもあるため、胆道バイパスと消化管バイパスを同時に行うこともあります(ダブルバイパス手術といいます)。
1.胆道バイパス
対象となる疾患
胆道がん(胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がん)、膵臓がん、胃がんなどが原因となり、胆汁が流れる管が閉塞することがあります。
目的
胆汁が流れないと閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)となり、悪化すると肝不全を引き起こして致命的となります。
したがって、閉塞した部位よりも上流(肝臓側)と腸(おもに小腸)をつなぎます(閉塞した部位によってはバイパス手術ができないこともあります)。
術式
胆道バイパスには、胆管と小腸をつなぐ手術、胆嚢と小腸をつなぐ手術など、様々なパターンがあります。
また、手術の代わりにステントとよばれるストローのような管を狭いところに通す方法もあります。
2.消化管バイパス
対象となる疾患
食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がんなどが進行し、がん自体が消化管を塞いでしまうことがあります。
また、他の部位のがん(膵臓がんなど)が小腸や大腸にまで広がって塞いだり、がんが腹膜に広がる腹膜播種(ふくまくはしゅ)によって腸が閉塞することがあります。
目的
この消化管の閉塞(腸閉塞)に対して迂回路をつくり、食事が食べられるようになることを目的とした手術を消化管バイパス術といいます。
術式
閉塞した部位に応じて、胃と小腸をつないだり、小腸と小腸をつないだり、小腸と大腸をつないだりします。
また、手術の代わりにステントとよばれるストローのような管を狭いところに通す方法もあります。
がんのバイパスの合併症と予後
合併症
もっとも多い合併症は、つないだところがもれる縫合不全(ほうごうふぜん)という合併症です。
そもそもバイパス手術が必要な進行がんの患者さんは、食事がとれていないことや、悪液質(カヘキシア)をともなっていることが多く、栄養状態の悪化や免疫力の低下など条件はよくありません。
したがって、縫合不全や感染系の合併症(肺炎や傷の化膿など)が多くなります。
また、がんの進行具合によっては、せっかくバイパス手術を行ってもうまく機能しない(黄疸が改善されない、あるいは食事ができない)場合もあります。
予後
がんの種類やバイパス手術後の他の治療法(抗がん剤)の効果によって予後(余命)は変わってきますが、基本的には、ステージ4など進行がんの患者さんに行うことが多いため、予後は悪い(生存期間は短い)傾向にあります。
ただ、最近では抗がん剤や分子標的薬などの効果の高い薬剤がでてきましたので、バイパス手術後の化学療法でがんが縮小し、切除手術が可能となるような症例もでてきました。
まとめ
がんのバイパス手術とは、がんによって胆道や消化管が閉塞している状態を予防または改善するための手術です。
大きく分けて胆道バイパスと消化管バイパスがあり、同時に行うこともあります。
術後の合併症としては、吻合部縫合不全や感染症が問題となります。
一般的に予後は悪い傾向にありますが、最近ではバイパス手術後に抗がん剤の効果がみられ、あらためて切除手術(根治手術)が可能となる症例もでてきました。
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