ステージ4の胆管癌に対する化学療法(ゲムシタビン+S-1)でがんが消失した1例
胆管がんは比較的まれな疾患ですが、悪性度が高く、根治が難しいがんです。5年生存率は治癒切除後でも30%程度であり、いまだ低いままです。
とくに、転移をみとめる進行した胆管がんでは、有効な治療法が確立されていません。
進行胆道がん(胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がん)に対する抗がん剤治療では、現時点ではゲムシタビン(ジェムザール)とシスプラチンを併用したGC療法が最も有効であり、第1選択の標準治療となっています。
しかしながら、その治療成績は満足いくものではありません。
一方で、ゲムシタビンに耐性をしめす胆管がんに対して、2次治療としてS-1(ティーエスワン)が使われています。
とくに最近、ゲムシタビンとS-1の併用(GS療法)が進行胆道がんに有効であることが報告されつつあります。
今回、国内からGS療法によって完全寛解(がんの消失)を得たステージ4の胆管がんの1例が報告されました。
ゲムシタビンとS-1の併用によって病理学的に完全寛解が得られた胆管がんの1例
症例
患者は70歳の女性で、上腹部の不快感で受診されました。
CT検査では、肝内および肝外胆管と胆嚢(たんのう)の拡張をみとめました。
また、大動脈周囲のリンパ節が腫大していました。
MRCP検査では、胆管の狭窄がみられました(下図)。
内視鏡的に病変部にアプローチし、胆管の狭窄部の生検をおこないました。その結果、腺癌であることがわかりました。
以上の検査結果より、大動脈周囲リンパ節の転移をともなう進行した胆管がん(ステージ4)と診断されました。
治療
胆管の狭窄部にステントを挿入した後、抗がん剤治療を行う方針としました。
治療は、ゲムシタビン(1000mg/m2)とS-1(80mg/day)の併用を行いました。
副作用として骨髄抑制と下痢や嘔吐などの消化器症状がありましたが、80%への減量で対応できました。
32コースが終わり、CTを再検したところ、多くの腫大していたリンパ節はサイズが50%以上も縮小していました(下図)。
患者さんの同意のもと、根治をめざして手術(膵頭十二指腸切除術)が行われました。
切除標本の病理検査では、胆管の病変部にがんは残っておらず、線維化が認められました(下図)。
また、同時に切除した大静脈周囲リンパ節にもがん細胞は残っていませんでした。
以上の結果より、GS療法により、組織学的に完全寛解(CR)が得られたと判断されました。
術後に補助化学療法は行わず、手術から48ヶ月(2年)経過した時点で患者の状態は良好で、再発を認めていません。
進行胆道がんに対するゲムシタビンとS-1の併用療法:日本における現状
今回、大動脈周囲リンパ節への転移をともなうステージ4の胆管がんに対して、ゲムシタビンとS-1の併用(GS療法)が非常に効果を示し、組織学的な完全寛解(がんの消失)が得られた1例の報告でした。
これまで、日本では進行胆道がんに対してGS療法の有効性が検証されてきました。
進行胆道がんに対してゲムシタビン単独とGS療法を比較する第二相臨床試験(JCOG 0805)では、GS療法の奏効率は36.4%であり、1年生存率ではゲムシタビン単独より良好であったと報告されています。
また、切除不能または再発胆道がんに対して現時点での第1選択と考えられているGC(ゲムシタビン+シスプラチン)療法とGS療法を比較したランダム化第三相試験(JCOG 1113)では、1年全生存率がGC群で58.3%、GS群で59.2%と差を認めず、GS療法がGC療法に対して非劣性(劣っていない)であること示されました(米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器癌シンポジウム 2018)。
今後、GS 療法は進行胆道がんにおける新たな標準療法の選択肢として期待されます。
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