コーヒーは大腸がんの再発を予防し、死亡率を低下:海外からの2つの研究結果より

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がんの手術後の患者さんに、「コーヒーは飲んでいいですか?」と聞かれることがあります。

術後の生活指導のパンフレットなどには、「コーヒーなどの刺激物は控えるように」と書かれているものもあります。また、「なるべく飲まないよう」指導している医師もいるようです。

私は、自分自身がコーヒーを好きなこともあり、患者さんにも「空腹時を避ければ飲んでいいですよ」とお答えしています。

以前より、コーヒーに含まれるポリフェノールは生活習慣病やがんを防ぐといわれており、じっさいに、肝臓がんに対する予防効果があることが日本から報告されています。

では、がんの手術後のコーヒーはどうなのでしょうか?

今回、コーヒーが大腸がんの再発を防ぎ、死亡率を低下させる(予後を改善する)という最近の2つの研究結果を紹介します。

大腸がん患者におけるコーヒー摂取、再発、および死亡率との関係

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研究1

Coffee Intake, Recurrence, and Mortality in Stage III Colon Cancer: Results From CALGB 89803 (Alliance). J Clin Oncol. 2015 Nov 1;33(31):3598-607. doi: 10.1200/JCO.2015.61.5062. Epub 2015 Aug 17.

【対象と方法】

米国における、大腸がん(ステージIII)患者に対する術後補助化学療法(抗がん剤)についての臨床試験(CALGB 89803試験)に登録された患者のうち、食事内容や生活習慣などのアンケート調査に解答した953人が対象となりました。

術後抗がん剤治療中および6ヶ月後に、カフェイン入りコーヒー(caffeinated coffee)、カフェインなしコーヒー(decaffeinated coffee)、およびハーブティー以外のお茶(nonherbal tea)の摂取量について、詳細なアンケート調査を行いました。

これらの結果と、がんの再発および死亡率との関係についてCox比例ハザードモデルを用いて解析しました。

【結果】

コーヒー(カフェインの有無を問わず)を1日に4杯以上飲む人では、全く飲まない人に比べて、大腸がん再発あるいは死亡リスクが42%低下していました。
カフェイン入りコーヒーを1日に4杯以上飲む人では、全く飲まない人に比べて、再発または死亡リスクが52%低下していました。
カフェイン摂取の増加は、がん再発または死亡リスクの低下と相関していました。
■一方で、カフェインなしのコーヒーおよびハーブティー以外のお茶の摂取は、再発率あるいは死亡リスクとの相関を認めませんでした。

【結論】

以上の結果より、ステージIIIの大腸がん患者において、コーヒーの摂取(1日4杯以上、とくにカフェイン入りのコーヒー)は、再発および死亡リスクを低下させることが証明されました。

研究2

Association Between Coffee Intake After Diagnosis of Colorectal Cancer and Reduced Mortality. Gastroenterology. 2018 Mar;154(4):916-926.e9. doi: 10.1053/j.gastro.2017.11.010. Epub 2017 Nov 20.

【対象と方法】

米国における、医療従事者を対象とした大規模なデータベースのうち、ステージ1、2、または3の大腸がん患者1599人を対象としました。

大腸がんの診断後(6ヶ月以上、4年未満)のコーヒー摂取について、アンケート調査を行いました。

追跡調査を行い、大腸がんによる死亡およびすべての原因による死亡との関係を解析しました。

【結果】

■7.8年(中央値)の観察期間中に、803人が死亡しており、うち188人が大腸がんが原因でした。
■コーヒーを全く飲まない人と比較して、1日に4杯以上コーヒーを飲む人では、大腸がんによる死亡リスクが52%低下しており、すべての原因による死亡リスクが30%低下していました。 
■カフェインの有無に関しては、カフェイン入りおよびカフェインなしコーヒーのどちらも多く摂取(1日2杯以上)することによって、大腸がんによる死亡およびすべての原因による死亡リスクが低下していました。 

【結論】

以上の結果より、大腸がん(ステージ1~3)患者において、コーヒーの摂取は、大腸がんによる死亡およびすべての死亡リスクを低下させることが証明されました。

まとめ

コーヒーを飲むことは、大腸がん患者の再発率を低下させ、生存率を改善させる可能性が示唆されました。

コーヒーが、大腸がんの再発を低下させる直接的なメカニズムについては、まだ解明されていません。

しかし、コーヒーに含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールの抗酸化作用や抗炎症作用血糖値の上昇を抑制する効果(糖尿病を予防する作用)などが関与していると考えられます。

今後さらなる研究が必要ですが、コーヒーは大腸がん患者さんにとって、制限する必要はなく、むしろ再発予防のためすすんで摂取すべき飲み物であるようです。

ただし、ご存じのようにコーヒーは刺激性が強く、胃酸の分泌を促進させる作用があるため、空腹時に飲むと胃を荒らすことにつながります。

また、夕方以降に飲むと、カフェインの覚醒作用で眠れなくなることもあります。

ですので、午前中から午後3時ごろまでに、空腹時をさけてコーヒーを楽しみましょう!

 


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