ビタミンDのサプリメントで肺がん術後の生存率が改善:ランダム化比較試験

 

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一般的には、「サプリメントではがんは治らない」あるいは、「がんに効くサプリメントはない」といわれています。

一方で、多くの実験データや研究により「一部のサプリメントにはがんの発生や進行を抑える効果がある」ことも明らかとなりつつあります。

なかでも、ビタミンDと癌との関係については、多くの臨床研究がおこなわれています。たとえば、血液中のビタミンD濃度が低い人は、高い人に比べて乳がんや肺がんの発症リスクが高いことがわかっています。

今回、ビタミンDのサプリメントが、一部の肺がん患者の術後の生存率を改善するという日本での臨床試験の結果を紹介します。

「サプリメントががんの進行を抑える」というエビデンスとして、貴重な報告であると思います。

ビタミンDのサプリメントと非小細胞性肺がん患者の生存との関係

Vitamin D Supplementation and Survival of Patients with Non-small Cell Lung Cancer: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Clin Cancer Res. 2018 Jul 17. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-18-0483. [Epub ahead of print]

【背景】

過去の研究によると、血清ビタミンD(25-hydroxyvitamin D:25(OH)D)濃度が高い肺癌患者は、予後がよい(生存期間が長い)と報告されています。

しかしながら、ビタミンDのサプリメントが非小細胞性肺がん患者の予後を改善するかについては、わかっていません。

今回、ランダム化比較試験により、ビタミンDのサプリメントが非小細胞性肺がん患者の予後(生存期間)におよぼす影響を前向きに調査しました。

【対象と方法】

本試験は、慈恵医科大学病院において実施された、ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験 (UMIN000001869) です。

ステージIA~IIIAまでの非小細胞性肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)の患者を、術後にビタミンD(1日1,200 IU)のサプリメントまたはプラセボ1年間投与するグループにランダムに割り付けました。

主要評価項目は無再発生存期間(RFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)としました。

また、サプリメント投与前、および投与後に、患者の血清25(OH)D(ビタミンD)濃度を測定しました。

【結果】

●155人の非小細胞性肺がん患者が、ビタミンD群(77人)またはプラセボ群(78人)に割り付けられ、3.3年間(中央値)観察されました。
●観察期間中に、40人(28%)が再発し、24人(17%)が死亡していました。
●全体の患者では、無再発生存および全生存期間ともに、ビタミンD群とプラセボ群で有意な差を認めませんでした(下図)。

ビタミンDと肺がん生存率全体のグループ

●しかしながら、血清25(OH)D(ビタミンD)濃度が低い(20 ng/ml未満)患者に限定したサブグループ解析によると、5年無再発生存率 (86% vs. 50%, P = 0.04) および5年全生存率 (91% vs. 48%, P = 0.02)ともに、ビタミンD群のほうがプラセボ群よりも有意に良好でした(下図)。

ビタミンDと肺がん生存率ビタミンD濃度低下グループ

【結語】

以上の結果より、ビタミンD濃度が低下している(<20 ng/ml)非小細胞性肺がんの患者では、術後のビタミンDのサプリメントが予後を改善する可能性があると結論づけています。

その他のがんにおけるビタミンDの役割

ビタミンDは、肺がんだけでなく、他のがん患者の予後とも相関していることが報告されています。

たとえば、大規模な前向き研究において「血清ビタミンDの濃度は乳がんの予後(生存期間)と関係する」という結果が、アメリカの一流腫瘍学雑誌JAMA Oncologyに報告されています。

また、最近のメタ解析によると、血中の25(OH)D(ビタミンD)濃度が高い大腸がん患者では、低い患者に比べ、生存期間が長い(死亡リスクがおよそ30%減少する)と報告されています(Nutrients. 2018 Jul 13;10(7). pii: E896. doi: 10.3390/nu10070896.)。

このように、さまざまな種類のがんにおいて、ビタミンDはがんの発症や進行を抑制している可能性が指摘されています。

ビタミンDのサプリメント

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ビタミンDをしっかり摂取するためにはどうしたらよいのでしょうか?

厚労省の「統合医療」情報発信サイトによると、

天然食材のみから十分なビタミンDを得ることは難しい。多くの人にとって、ビタミンD強化食品を摂取すること、また、おそらく幾分かの日光に浴することも、健康的な体内ビタミンD濃度を維持するために不可欠である。人口集団によっては、1日当たりのビタミンD所要量を満たすためにはサプリメントの摂取が欠かせない

とされています。

つまり、天然食材からだけでは難しいので、ビタミンD強化食品を食べるかサプリメントで補い、さらに日光浴も必要、とのことです。

ビタミンD過剰摂取の危険性

一方で、ビタミンDを過剰摂取した場合には、食欲不振、体重減少、多尿、心臓不整脈などの非特異的症状を引き起こす場合があるそうです。

より深刻な場合には、カルシウムの血中濃度を上昇させ、血管や組織の石灰化を招き、その結果、心臓、血管、腎臓を傷害するので注意が必要です。参考までにビタミンDの許容上限摂取量をのせておきます。

ビタミンDの許容上限摂取量(UL)
年齢 男性 女性 妊娠期 授乳期
0~6カ月 1,000IU 1,000 IU
(25 µg) (25 µg)
7~12カ月 1,500 IU 1,500 IU
(38 µg) (38 µg)
1~3歳 2,500 IU 2,500 IU
(63 µg) (63 µg)
4~8歳 3,000 IU 3,000 IU
(75 µg) (75 µg)
9歳以上 4,000 IU 4,000 IU 4,000 IU (100 µg) 4,000 IU
(100 µg) (100 µg) (100 µg)

「統合医療」情報発信サイトより引用

大人の場合、1日4,000 IU(100 µg)が上限とされています

ちなみに先ほどのサプリメントでは1日1粒で25 μg(1000 IU)ですので、全く問題なさそうです。

がんの予防に、そしてがん患者さんの再発予防にも、ビタミンDのサプリメントをおすすめします。


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