胃がん肝転移をあきらめない!ニボルマブ(オプジーボ)による癌の消失(完全奏効)
手術および化学療法(とくに分子標的薬)の進歩によって、進行胃がんの治療成績(予後)は向上しつつあります。
しかしながら、転移や再発を認める手術ができない(切除不能)胃がんの生存率は、いまだ厳しい状況です。
免疫にかかったブレーキを解除する、新たな免疫治療薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)は、皮膚がん(メラノーマ)、非小細胞性肺がん、頭頸部癌などを対象に、その有効性が示されてきました。
最近、切除不能進行・再発胃がんまたは胃食道接合部がん患者を対象としたランダム化第III相臨床試験(ATTRACTION-2試験)において、ニボルマブは、プラセボに対して死亡のリスクを37%も低下させることが証明されました。
これを受け、2017年9月より、3次治療以降の切除不能進行・再発胃がんに対してニボルマブ(オプジーボ)が承認されました。これにより、これまで治療の手立てがなかった胃がん患者さんにも希望がもてるようになりました。
今回、「ニボルマブ(オプジーボ)が著効し、胃がんの肝転移が消えた」という症例報告が日本からありましたので、紹介します。
ニボルマブによる胃がん肝転移の完全奏効例
【症例】
77歳男性
【病歴】
●がん診断から切除まで
早期胃がん(2.2cm、リンパ節転移なし)に対して、腹腔鏡下胃全摘術を受けました(最終診断は、胃がんのステージIA)。
その28ヶ月後のCT検査にて、脾臓(ひぞう)に転移が発見されました。他の部位にあきらかな転移をみとめなかったことより、脾臓摘出術が行われました。
●1次治療(化学療法)
切除標本の検査でHER2(ハーツー)が陰性であったため、術後にS-1とオキサリプラチンによる抗がん剤治療を追加しました。
しかし、脾臓切除の4ヶ月後、今度は肝臓の両葉に多発する転移が発見されました。
●2次治療(分子標的薬)
このため、2次治療(セカンドライン)として、分子標的薬のラムシルマブ(サイラムザ)とパクリタキセルの併用療法が実施されました。
ところが、2サイクル施行後のCTにて腫瘍の進行を認めました(下図:白矢印が肝転移)。
●3次治療(免疫治療)
そこで、3次治療として、免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)ニボルマブ(オプジーボ:2週間おきに3mg/kg)を投与することになりました。
4サイクル後、肝転移の著明な縮小(55%の縮小)がみられました。
その後、8サイクル後に83%の縮小をみとめ、12サイクル後には、腫瘍は完全に消失していました(完全奏効:CR)(下図)。
ニボルマブ(オプジーボ)開始後8ヶ月が経ちますが、現在まで再発を認めていないとのことです。
まとめ
胃がんの肝転移が、3次治療からのオプジーボによって消失(完全奏効)した症例でした。
もちろん、すべての進行胃がんの患者さんに、オプジーボの効果が期待できるわけではないのですが、今後、このような症例が増えていくことと思います。
一方で、「どのような患者さんにオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤が効くのか」を事前に評価できるマーカーの開発、および(下がったとはいえ)高額な薬価が課題となっています。
いずれにせよ、これまでの標準治療では打つ手がなかった進行胃がん患者さんが、オプジーボに希望をつなぐことができるようになったことは、喜ばしいことだと思います。
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