生活習慣

がん患者さんの熱中症対策:エアコン、経口補水液(オーエスワン)、冷却グッズ

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梅雨が明けたとたん、ほんとうに暑いですね。

みなさんいかがお過ごしでしょうか?

私の住む福岡でも、連日、最高気温が35度を超えており、今までに経験したことのないような暑さです。

今後、熱中症のため病院に救急搬送される人が激増する可能性があります。

健康な人でも熱中症になるのですが、糖尿病などの持病(基礎疾患)がある人は、熱中症を発症するリスクが高くなるといわれています。

また、ご高齢のがん患者さんは、とくに熱中症に気を付ける必要があります

今回は、がん患者さんの熱中症対策ということで、お話しします。

熱中症とは?

熱中症の定義

熱中症とは、「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称(熱中症診療ガイドライン 2015)」と定義されています。

つまり、適応できなほいどの暑い環境にさらされることで、体内の水分や塩分のバランスがくずれたり、体温の調節機能がうまくはたらかなくなったために、気分不良、めまい、けいれん、嘔気、頭痛、意識障害などのさまざまな症状を起こす病態のことです。

熱中症の重症度分類

重症度によって、次の3つの段階に分けられます。

Ⅰ度(軽度): 現場での応急処置で対応可能
       …… めまい、失神、立ちくらみ(脳への血流不全) 
          筋肉痛、筋肉の硬直(発汗に伴う塩分の不足で生じるこむら返り) 
          大量の発汗

Ⅱ度(中等度): 病院への搬送を必要とする
       …… 頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感

Ⅲ度(重度): 入院して集中治療の必要性あり
       …… 意識障害、けいれん、手足の運動障害
          高体温(体に触ると熱い。いわゆる熱射病、重度の日射病)

軽度(I度)の場合は現場における適切な処置で軽快しますが、中等度(II度)以上は病院での治療が必要となります

どんな環境でおこるか?

一般的には、炎天下で長時間、肉体労働や運動をしていた場合に発生しやすいのですが、(室温や湿度の高い)家の中でじっとしていても、熱中症にかかることがあります

とくに、夜間、暑さが残った部屋の中で寝ていて熱中症にかかるといったケースも多く報告されています。

とくに熱中症に気を付けるがん患者さんとは?

熱中症は、だれにでもおこる可能性がある病気ですが、体力が低下している人や、がんなどの持病(基礎疾患)がある人ではとくに注意が必要です。

なかでも、以下のがん患者さんは熱中症になりやすいと考えられます。

水分があまりとれない人

抗がん剤治療中などで、食欲がなく、水分があまりとれていない患者さんでは、とくに熱中症に注意が必要です。

消化管(胃や腸)の手術を受けた人

消化管の手術(胃や腸の切除)により、通過障害や水分の吸収障害がある患者さんは、熱中症になりやすい可能性があります。

利尿薬(尿を増やす薬)を飲んでいる人

高血圧、心不全、肝硬変、あるいは胸水・腹水・むくみの治療で利尿剤(ラシックスなど)を飲んでいる患者さんは、すでに脱水の傾向があるため、熱中症になりやすいと考えられます。

高齢のがん患者さん

一般的に、高齢者はからだの水分バランスを保つ機能が低下しています。このため、脱水になりやすい傾向にあります。

とくに、高齢者では脱水があっても「喉の乾きを感じない・感じにくい」といわれており、熱中症になりやすい原因となっています。

がん患者さんの熱中症対策(予防)

次に、がん患者さんの熱中症対策についてです。

涼しい部屋で過ごしましょう!

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まず、基本的なことですが、できるだけ暑い場所をさけ、涼しい場所にいることです。

とくに日中は、エアコンの効いた涼しい部屋で過ごしましょう

また、夜間でも温度が高い場合には、エアコンの温度を27~28℃に設定して休みましょう。

とにかく水分と電解質補給:経口補水液がベスト!

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これも何度も聞いているとは思いますが、熱中症を予防するためには、こまめな水分+電解質補給が欠かせません

水やお茶を持ち歩いている患者さんが多いのですが、緊急時の熱中症対策としては不十分です。

普段は水やお茶でよいのですが、汗をかいたときに水ばかりを飲み続けると、体液が薄まって「低ナトリウム血症」などを引き起こし、脱水がさらに悪化すると言われています。

また、お茶(緑茶)やコーヒーには利尿作用(尿が増える作用)があり、かえって脱水がすすむ可能性があります。

このため、汗をかいた時の熱中症予防(治療)には、経口補水液(オーエスワン)がベストです。

一般的なスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、また水と電解質の吸収を速めるために、スポーツドリンクと比べて糖濃度は低い組成となっています。

できれば、オーエスワンを常備しておき、お出かけのときには持っていくようにしましょう。

注意点:オーエスワンにはナトリウム(500ml中575mg=食塩1.46g相当)とカリウム(500ml中390mg(=バナナ1本分))が比較的多く含まれていますので、高血圧などで医師から塩分制限の指示がある場合、あるいは腎機能障害(腎不全)でカリウム制限がある場合には、注意が必要です(主治医と相談してくさい)。

出かけるときは冷却グッズを!

さて、熱中症を予防するためには、できるだけ涼しい部屋で過ごすのが理想的なのですが、生活する上で1日中外に出ないわけにはいきません。買い物や、通勤、また病院の受診などでお出かけすることもあるでしょう。

また、朝夕、ちょっとした運動やウォーキングをつづけておられる人もいるでしょう。

そこで、外出時に役に立つ冷却グッズを紹介します。

保冷剤・冷却(クール)タオル

保冷剤を冷凍庫に冷やしておき、外出時にタオルなどにまいて持っていきましょう。あるいは、ビニール袋に氷を入れてもいいでしょう(すぐに溶けてしますので長時間は使えないのですが)。

ちなみに、首、腋(わき)や鼠径部(足のつけね)に当てると効率よく体温を下げることができます。

こちらの冷却タオルもお出かけの必需品です。

携帯用扇風機

うちわでもいいのですが、最近では携帯用の扇風機が手頃な価格で売っています。

また、最近では首にかけるタイプの携帯扇風機が売ってます。

ちなみに私も通勤時などに使っていますが、意外と涼しくて役に立ちます。

このようなちょっとした工夫で、熱中症を予防することが可能です。

もし熱中症がうたがわれたら:対処法

最後に、熱中症が疑われた場合の対処法です。

暑い場所に長時間いて、その後、気分不良、めまい、けいれん、嘔気、頭痛、意識障害といった症状がでた場合、熱中症を疑います

まずは、すずしい場所に移動し、経口補水液(オーエスワン)を飲みます。

それでも症状が改善せず、気分が悪い状態や倦怠感がつづく場合には、重症化する前に病院を受診しましょう。意識障害をともなう重度の場合には、夜間でも、救急病院を受診しましょう。

やはり、熱中症には、点滴(経静脈補液)が最も効果的です。

まとめ

一部のがん患者さん(とくにご高齢の場合)は、熱中症のリスクが高いと考えられます。

エアコンの効いた涼しい部屋で過ごす、汗を多くかいたときは水分+電解質の補給(経口補水液)、そして、外出時には冷却グッズで少しでも体温を下げる工夫をしましょう。

もし、熱中症の疑いがある場合には、躊躇せずに病院を受診しましょう。

暑い日がつづきますが、熱中症の対策をしっかりとして、なんとか乗り切りましょう!


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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