大腸がんの原因は口の中にいる歯周病菌(フソバクテリウム)?
最近、がんと細菌(とくに歯周病菌)との関係がクローズアップされてきました。
例えば、フソバクテリウム(Fusobacterium)という細菌は、おもに口の中に存在する常在菌(嫌気性のグラム陰性菌)で、もともと歯周病の原因菌として知られていました。
ところが最近、大腸がんの組織から多量のフソバクテリウム(なかでもフソバクテリウム・ヌクレアタム: Fusobacterium nucleatum)が検出され、注目されるようになりました。
フソバクテリウム・ヌクレアタムが感染した大腸がん患者は、予後が悪く、また抗がん剤に抵抗性を示すことが報告されています。
一方で、これまでヒトの腸内からフソバクテリウム・ヌクレアタムが検出されることは少なく、大腸がん組織におけるフソバクテリウム・ヌクレアタムの感染経路はよくわかっていませんでした。
今回、日本の研究者らは、大腸がん患者のがん組織および唾液を調べ、口腔内に存在するフソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんへ移行している可能性を報告しました。
つまり、歯周病菌が大腸がんの発生や進行に直接関与している重要な証拠であると考えられます。
大腸がん患者は、がん組織と口腔内にフソバクテリウム・ヌクレアタムの同一株を有する
日本の研究者らは、14人の大腸がん患者から、大腸がん組織と唾液を採取しました。
これらのサンプルから、フソバクテリウム選択培地によって、コロニーを培養しました。
分離したコロニーから、16S rRNA系統解析およびarbitrarily primed ポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)法を用いて種を同定し、さらにフソバクテリウムの菌株のタイプを決定しました(下図)。
結果を示します。
以上の結果より、大腸がん患者の4割以上で、がん組織と唾液にフソバクテリウム・ヌクレアタムの同一の菌株が存在することが示されました。
フソバクテリウム・ヌクレアタムは、口腔内に存在する常在菌の一種であり、歯周病の原因として知られています。
今回の結果によって、一部の大腸がん患者では、口腔内のフソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がん組織に移行している可能性が示唆されました。
この結果より、口腔内の細菌を制御することで、大腸がんの治療や予防につながる可能性が示唆されました。
例えば、フソバクテリウム・ヌクレアタムの口腔内から腸内への移行を阻止したり、腸内のフソバクテリウム・ヌクレアタムを殺菌できれば、一部の大腸がんが予防できると考えられます。
今後のさらなる研究を期待したいですね。
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