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がん患者さんのお腹が膨らむ原因は?気をつける症状と自分でできる対策

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腹単

がん患者さんでは、さまざまな原因でお腹が膨らむ(張る)ことがあります。

この状態を、医学的には腹部膨満(ふくぶぼうまん)といいます。

一時的なこともありますが、徐々に悪化し、お腹がパンパンに腫れてしまうケースもあります。なかには、緊急の対応(治療)が必要な場合もあります。

今回は、がん患者さんのお腹が膨らむ原因と気をつける症状、受診のタイミング、そして自分でできる対策について解説します。

腹部膨満の原因

お腹が膨らむ原因として、大きく分けて、消化管ガス液体(腹水)、そして臓器そのものがあります。

1.消化管ガスによるもの

胃や腸のなかに、ガスや食べ物が停滞することでお腹が膨らむことです。

腸が詰まった場合、腸閉塞イレウスとも呼ばれます。

以下の原因があります。

腫瘍によるもの

胃や腸にできた腫瘍が大きくなり、消化管がせまくなったり、塞がれることです。

また、腸の外側から発生したがんが、まわりから腸を締め付けることもあります。

あるいは、消化管にできた腫瘍から出血し、お腹が張る場合もあります。

癒着によるもの

お腹の手術後の癒着(ゆちゃく)が原因で腸が狭くなることがあります。

腸がよじれた状態になったり、腸への血液の流れがとだえた場合、絞扼性(こうやくせい)イレウスといって緊急手術が必要となることがあります(後述)。

消化不良

消化不良によって食べたものが胃や腸にたまり、お腹が膨らんでいる状態です。便秘の人で多くみられます。

薬の副作用

腸の運動をおさえるような薬を飲んでいる人では、腸に便やガスがたまり、お腹が膨らむことがあります。

特にモルヒネ系の痛み止めなどを飲んでいるがん患者さんでよくみられます。

2.腹水貯留によるもの

お腹の中に水がたまってお腹が張ることです。

以下の原因があります。

腹膜炎

何らかの原因でお腹の中に炎症が起こると、腹水がたまることがあります。

原因不明のこともあります。

低アルブミン血症

栄養状態が悪化し、血液中のアルブミン(タンパク質)が減少すると、全身の浮腫(むくみ)が出現し、同時にお腹に水がたまることがあります。

悪性腹水(がん性腹膜炎)

がんがお腹のなかに散らばり、腹膜から腹水が吸収されなくなることで、腹水がたまることがあります。

これを悪性腹水(がん性腹膜炎)といいます。

3.臓器そのものの腫大(しゅだい)

あまり多くはありませんが、がんの進行にともない、臓器そのもの異常に大きくなることです。

肝臓や脾臓(ひぞう)などが腫大してお腹が張ることがあります。

気をつける症状と受診のタイミング

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腹部膨満の原因として、緊急の処置が必要な場合があります。

以下のような症状を伴う場合、できるかで速やかに病院を受診する必要があります。

気をつける症状

急激な腹痛・嘔吐

お腹のはりと同時に、急激な腹痛とはきけ・嘔吐が出現した場合、腸閉塞(絞扼性イレウス)をおこしている可能性があります。

腸の血流が途絶えて壊死(くさること)におちいる可能性がありますので、緊急手術が必要となります。

吐血・下血

お腹が張ると同時に、吐血や下血を伴う場合、消化管からの出血が疑われます。

緊急で止血が必要となることがあります。

受診のタイミング

以上のような症状がある場合、なるべく早く病院を受診しましょう。

夜間であれば、救急病院を受診してもよいと思います。その際には、必ずかかりつけ病院の情報やお薬手帳を持参しましょう。

 

お腹のはりが軽く、よくなったり悪くなったりする場合には、通常の定期受診まで経過をみても大丈夫でしょう。

食事の工夫や便秘対策でもお腹のはりがとれない場合には、主治医に相談してみましょう。

お腹のはりが徐々に悪化する場合には主治医に相談するか、かかりつけの病院を受診しましょう。

自分でできる対策

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腹部膨満に対して自分でできる対策としては、食事を工夫することと、便秘を防ぐことです。

食事を工夫する

1回の食事量を減らし、食事回数を増やすことで、お腹の張りが軽くなることがあります。

また、消化管ガスが増える原因となる食物繊維を多く含む食べもの(芋類など)や発酵食品は控えましょう。

また、ゲップやおならは我慢しないようにしましょう。

便秘を防ぐ

がん患者さんに多いのは、便秘によってお腹の張りがひどくなることです。

自分でできる便秘対策(非薬物療法)としては、以下のものがあります。

  • 規則正しい生活習慣
  • トイレの時間の確保(時間をきめて、ゆっくりと)
  • 適度な運動、ストレッチ、ヨガなど
  • 腹部のマッサージ
  • ハーブティーなど

詳しくはこちらの記事をどうぞ。

まとめ

がん患者さんのお腹が張る原因として、消化管ガスや腹水があります。

お腹の張りと同時に、急な腹痛、吐き気・嘔吐、吐血・下血をともなう場合には、緊急に病院を受診しましょう。

便秘を解消すると、お腹の張りが軽くなることがあります。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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