トリプルネガティブ乳がんのリスクを高める生まれながらの遺伝子変異を発見
トリプルネガティブ乳がんは、乳がん全体のおよそ10~15%にみられ、比較的若い女性に多いことが特徴です。
エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、およびがん細胞の増殖に関わるHER2(ハーツー)のすべてが陰性(ネガティブ)のがんです。
ホルモン療法やハーセプチンなどのHER2標的の分子標的薬の効果が乏しいため、治療の選択肢が限られています。
また、局所進行や転移をともなった状態で見つかることも多く、他のタイプの乳がんと比べて進行が早いとされています。
このため、トリプルネガティブ乳がんの危険因子を同定し、予防または早期発見の方法を確立する必要があります。
これまでの研究では、BRCA1という遺伝子に変異があるとトリプルネガティブ乳がんになりやすいことが分かっていましたが、そのほかの遺伝子異常に関しては不明でした。
今回、大規模な遺伝子調査により、トリプルネガティブ乳がんの発症リスクを高める複数の(生まれつきの)遺伝子変異が発見されました。
遺伝子パネル検査によるトリプルネガティブ乳がんの発症リスク遺伝子の同定
【対象と方法】
対象は、米国の多施設に登録された10901人のトリプルネガティブ乳がん患者。
このうち、8753人について21個の遺伝子パネル検査、および2148人について17遺伝子パネル検査を行い、生まれつきの遺伝子変異(生殖細胞変異)を調査しました。
対照群(26000人以上)と比較し、リスクを高める素因遺伝子を同定しました。
【結果】
【結語】
遺伝子パネル検査により、トリプルネガティブ乳がんの素因遺伝子(生まれながらの変異があるとなりやすい遺伝子)としてBARD1、BRCA1、BRCA2、PALB2、およびRAD51Dが発見された。
まとめ
およそ12%のトリプルネガティブ乳がん患者に、これらの遺伝子に生まれながらの変異があると考えられます。
この情報により、トリプルネガティブ乳がんのスクリーニング検査、リスクの評価、および予防法の開発・改善が期待されます。
さらに、これらの遺伝子(あるいは細胞シグナル経路)をターゲットにした新しい治療戦略(分子標的薬など)が効果的である可能性があります。
今後の研究を待ちたいと思います。