ビタミンDのサプリメントが進行癌を予防する:ランダム化比較試験の二次解析
「サプリメント(健康食品)でがんは予防できるのか?」
「もしできるなら、どのサプリメントがいいのか?」
「2人に1人ががんになる」といわれる時代において、こういう疑問をお持ちの方も多いと思います。
結論から言うと、動物実験や疫学研究によって、いくつかのサプリメントにがん予防効果の可能性があることはわかっていましたが、ランダム化比較試験によって示された証拠(いわゆるエビデンス)はありませんでした。
今回、ビタミンDとオメガ3不飽和脂肪酸のがん予防効果について検証したランダム化比較試験(VITAL試験)の二次解析によって、ビタミンDのサプリメントによって、進行がん(転移性のがん/致死的ながん)の発症を抑えることがあきらかとなりました。
ビタミンDは進行がんの発症リスクを低下するか?
VITAL試験は、25,871人の健康な(がんのない)人を対象とした二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験で、ビタミンD(ビタミンD3)またはオメガ3脂肪酸のサプリメントによって、がんの発症リスクが低下するかをおよそ5年間にわたって調査した大規模な臨床試験です。
その一次解析では、ビタミンD(1日2,000 IU)あるいはオメガ3脂肪酸のサプリメントによるがんの予防効果は認められませんでした(ともに2019年にニューイングランドジャーナルオブメディシンに報告)。
しかしながら、これは全てのステージのがん(つまり、早期がんも進行がん)も含んでおり、また、体格(BMI)についても様々な母集団での解析でした。
そこで今回、このVITAL試験について、がんのなかでも進行がん(転移性または致死的がん)の発症リスクを調べ、また肥満の影響を調べるために体格(BMI)による階層化を行い、二次解析を行いました。
結果:ビタミンDによる進行がんのリスク低下(正常体重の人のみ)
ビタミンDのサプリメント摂取グループでは、プラセボ群に比べて、進行がん(転移性または致死的がん)の発症リスクが有意に低下していました(ハザード比 0.83, 95%信頼区間 0.69-0.99, P = 0.04)。
また、BMI(体格指数)による階層化を行ったところ、このビタミンDによる進行がんの抑制効果は、正常の体重(BMI)の人においてのみ認められました。
つまり、BMIが25未満のグループでは、ビタミンD群では、プラセボ群に比べて、進行がん(転移性または致死的がん)の発症リスクが有意に低下していました(ハザード比 0.62, 95%信頼区間 0.45-0.86)が、過体重(BMIが25~30)および肥満(BMIが30以上)のグループでは、差は認められませんでした。
結論
以上、VITAL試験の二次解析の結果、長期(およそ5年間)にわたるビタミンD(1日2000国際単位)のサプリメントによって、がん全体のリスクは変わらないものの、進行がん(転移性または致死的がん)の発症リスクは有意に低下していました。
また、肥満や過体重の人ではこの効果はみられなかったものの、正常体重の人においては、進行がんのリスクをおよそ40%近くも低下させることが示されました。
肥満は、それ自体ががんのリスクであり、また、肥満は体におけるビタミンD代謝の変化をもたらすという報告もありますが、なぜ、今回の結果のように、BMIによってビタミンDの効果に差がでたのかは不明です。
いずれにしても、がん予防の意味でも、体重をコントロールし、BMIを正常範囲に保つことは重要です。
ビタミンDにはがん進行を抑制する作用がある?
今回の研究では、ビタミンDのサプリによってがん全体の発症リスクは抑えられないものの、死に至る可能性の高い進行がんのリスクを下げることができる可能性が示されました。
つまり、ビタミンDは、たとえがんになってとしても、進行を遅くする抗がん作用があるということです。
ビタミンDには、免疫のシステムを強化する作用が確認されていますが、これもがんを抑制するメカニズムのひとつであると考えられます。
また、がん患者を対象としたビタミンDの効果を調査したいくつかの臨床試験では、ビタミンDによって肺がんや消化器がんの予後(生存率)が改善するといったデータもでてきています。
これらのデータも、ビタミンDががんの進行を抑える作用を示すエビデンスとなっています。
まとめ
ビタミンDは、がん患者さんにとっても、そして、健康な人にとっても効果が期待できるサプリメントのようです。