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「筋トレ」でステージ4の希少がんから生還したサバイバー吉賀賢人さんストーリー

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がんの治療で「筋肉」はとても大切です。

筋肉が減っている人では治療がうまくいかないことが多く、また、治療中に筋肉が減ると生存期間が短くなってしまうことがわかっています。

そこで、がん患者さんには「筋力トレーニング(筋トレ)」をすすめています

筋トレでがんに負けない「筋肉」を貯えてほしいのです。

今回は、「筋トレ」でステージ4のがんから奇跡の生還をはたした吉賀賢人(よしが・けんと)さんのお話を紹介します。

吉賀さんは、『筋トレが救った癌との命がけの戦い(体育とスポーツ出版社)』の著者でもあります。

筋トレでがんの大手術から生還した吉賀賢人さんのストーリー

吉賀賢人さん(ニックネーム:BIG TOE)は、まさに筋トレをライフワークにしている人です。

若い頃よりボディビルに目覚め、本場のアメリカで初代ミスターオリンピアのラリー・スコットから直接指導を受けました。

現役時代には、ミスター関西のタイトルをとるほどの一流のボディビルダーとして活躍されました。

  

引退後も筋トレを続け、年齢不相応(?)のたくましい筋肉を維持すると同時に、「月刊ボディビルディング」誌にトレーニング法についての連載をもつほどの筋トレのプロフェッショナルでした。

突然のがん(腺様嚢胞がん)告知、そして大手術

そんな吉賀さんをおそったのは、突然のがん告知。62歳のときでした。

しかも治療が難しいステージ4の希少がん。これまで大きな病気を経験したこともなく、健康体そのものだった吉賀さんにとって、まさに「青天の霹靂」でした。

2017年8月、吉賀さんは、数ヶ月前から自覚していた「のどの違和感」で病院を受診し、詳しい検査の結果、気管から発生した「腺様嚢胞がん(せんようのうほうがん)」と診断されます。

腫瘍の大きさは10cmもあり、すでに喉頭(いわゆる「のどぼとけ」の部位)にも広がっていました。

腺様嚢胞がんは、比較的ゆっくりと大きくなるものの、まわりの組織へ広がりやすく、遠くの臓器へ転移することも多いといわれています。

現時点では、手術で切除する以外に有効な治療法がありません。

しかし、がんを完全に取り除くためには、気管、喉頭(声帯)、甲状腺に加え、食道の一部も切除しないといけなくなる可能性があるとのことでした。

声帯を切除すれば、声を失うことになります。また、気管の大部分を切除すると、胸につくる「気管孔」から呼吸をすることになるため、温泉やプールに入れなくなります。

胸の筋肉や骨も切除しなければならないため、ライフワークであった筋トレもできなくなるかもしれません。

後遺症を考えると、もちろん手術はしたくありません。

一方で、手術しなければ、がんが大きくなって呼吸や食事ができなくなって死に至ると予想され、5年後に生きている確率は40%未満というきびしい現実を突きつけられます。

セカンドオピニオン外来を受診するなど他の治療法についても意見を求め、悩んだ末、吉賀さんは手術をうけることを選択します。

2017年9月12日、手術が行われました。

幸いなことに食道は切除せずにすみましたが、気管と喉頭を切除し、また気管孔を作成するために大胸筋と骨(鎖骨、肋骨、胸骨)も切除しました。予定よりも早く終わったとはいえ、それでも8時間を超えました。

手術中に死亡するリスクもあるこの大手術を吉賀さんは無事に乗り切りました。

術後は集中治療室(ICU)へと入室しましたが、経過は順調で、なんと術後10時間後には早くも歩行訓練が始まったとのことです。

現在は、「早期離床(そうきりしょう)」が推奨されており、術後できるだけ早く体を動かしてリハビリを開始しますが、それにしてもこんなに早くはじまったリハビリについていけたのも、吉賀さんが常日頃から筋トレで養った強靱な筋肉があったからだと思います。

長期の入院、放射線治療、そして退院

その後、再発予防のために放射線治療を追加し、また呼吸の問題などで入院期間が長くなりましたが、手術から5ヶ月目に退院となりました。

体重は10kg近く減ったとのことですが、やはり手術前に貯えていた筋肉で、大手術のみならずその後の治療や後遺症を乗り切ったと言えるでしょう。

吉賀さん自身も、「命をかけた大きな手術を乗り越えることができたのは、トレーニングで築き上げた体力と筋力があったからだ」と述べています。

退院後は、入院中に落ちてしまった体力と筋肉を取り戻すべく、リハビリテーションに励みます。

もちろんライフワークである筋トレも再開し、現在も下半身を中心にトレーニングを続けているとのことです。自宅での筋トレに加え、週に2回は公園でのトレーニングも取り入れているとのことです。

「魅せる筋肉」ではなく、「生きるための筋肉」作りが目的とのことで、無理をしないように心がけているそうです。

それでも現役のボディビルダーのようなたくましい筋肉が戻り、今では「本当にがんサバイバーなの?」というほどの筋肉を誇っています。

ブログ「★未来を生きる為に★BIGTOEの「筋トレが救った癌との命がけの戦い」」より

今後もがんの経過観察期間は続きますが、持ち前のガッツと「筋肉」で、がんに負けない生活を送られることと思います。

『筋トレが救った癌との命がけの戦い(体育とスポーツ出版社)』

健康を自負していたボディビルダーに、突然襲った「ステージ4」の癌宣告。

抗がん剤も、放射線も効かない稀少癌。

しかも手術に成功したとしても、呼吸を失い、声を失い、そしてボディビルダーにとって命ともいえる筋肉をも失わなければならないという。

そんな現実に直面して、生きる道を選んだ元ボディビルチャンピオンの癌との戦いの記録です。

(「BOOK」データベースより)

吉賀さんの闘病記『筋トレが救った癌との命がけの戦い(体育とスポーツ出版社)』は、すべてのがん患者さんにとって勇気をもらえる本です!

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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