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「がん手術を成功にみちびくプレハビリテーション」出版のお知らせ

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この度、12月18日に大月書店から『がん手術を成功にみちびくプレハビリテーション:専門医が語る がんとわかってから始められる7つのこと』を出版させていただきます。

がんの手術や治療が延期となる患者さんが増えています

私の病院でも、予定していた手術が延期となり、がん患者さんの待ち時間が長くなっています。

手術が延期となった患者さんに、「手術までどう過ごしたらいいですか?」といった質問をいただくことがあります。

実は、がん患者さんが、手術までの期間をどう過ごすかで、手術が成功するかどうかが決まることもあるのです

そして、手術の前から始める運動や栄養サポートといった準備(リハビリ)を「プレハビリテーション」と呼びます。

しかしながら、このプレハビリテーションは、まだ日本では普及しておらず、導入している病院は少ないと思います。

ですので、手術を受ける病院にこういった術前からのプログラムや生活指導がない場合には、患者さん自身がその必要性について評価し、自主的に取り組むべきなのです

本書では、このプレハビリテーションの重要性と具体的な方法について詳しく解説しています。

がんの手術を控えた患者さんが「術前にどのような準備をすればよいか」ついて詳しく解説します。

新型コロナウイルス感染拡大によるがん治療のおくれ

新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の医療を大きく変えてしまいました。

これは、いわゆる感染症患者を受け入れる特定の病院の医療崩壊や、一部の病院で発生した院内感染、クラスター(感染者集団)といった問題だけにとどまらず、医療全体のシステムにも大きな打撃を与えています。

なかでも重大な問題は、すべての外来受診・入院の中止や制限、患者さん自身による受診控え、および、それに伴う「診断・治療の遅れ」です。

実際に、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くのがん患者さんの検査や治療が中止または延期となりました

今後しばらくの間、がん患者さんの入院・手術が迅速に行えていた以前のような診療体制にもどることは難しいと考えられます。

がんの手術や治療が遅れる患者さんが増えていく可能性があります

がんの手術が決まった患者さんはどう過ごすべきか?

がんの手術が決まったとき、多くの患者さんは不安を抱え、ただ手術日まで待つだけの生活を送ります。

「頭が真っ白で、何もする気がおこらない」、
「今更じたばたしたところで、どうにもならない」、あるいは
「手術は外科医がするのだから、お任せするしかない」といった心境でしょう。

もちろん、「手術がうまくいくかどうか」は病院の医療レベルや外科医の技量にもかかっています。患者さんにはどうすることもできないという側面もあります。

しかし、長年がんの手術を担当してきた私の経験や多くの研究結果を調査してわかったことは、手術の成功はむしろ「患者さん自身の手術に向けての準備」にかかっているということです。

つまり、手術までの期間でやるべきことはたくさんあるのです。

プレハビリテーションとは?

プレハビリテーション(prehabilitation)とは、手術(あるいは、広い意味では「治療」)を受ける予定の患者さんが、手術の前からおこなうリハビリテーションのことです。

簡単にいうと、「手術に向けてのこころとからだの準備」です。

がん患者さんの多くに、さまざまな理由によって栄養状態の悪化や筋肉量の低下がみられることがあります。

また、日本における急激な高齢化にともない、体力(持久力、筋力)が低下しているがん患者さんが増えてきました。

このような栄養状態が悪化した患者さんや、体力(とくに筋力や筋肉の量)が落ちた患者さんが、そのまま手術を受けると、合併症(手術にともなっておこる望ましくない病態)が増えることがわかっています。

合併症がおこると、その治療のために入院期間が長引くことが予想されます。また、最悪の場合、命をおびやかす状態におちいる可能性さえあるのです。

このような事態を避けるため、最近では手術の直後から「早期離床(ベッドに寝ている状態から、できるだけ早く座ったり、立ったり、歩いたりすること)」をすすめ、リハビリテーションを開始することが一般的となってきました。

ただ、なかには手術後からのリハビリテーションでは機能回復が間に合わず、合併症が起こってしまう人もでてきます。

そこで、手術前からリハビリテーションを開始する重要性が注目され、欧米を中心に医療の現場に導入されつつあります。

これが「プレハビリテーション」です。

プレハビリテーションは、もともと整形外科の領域で始まりましたが、最近ではがんの手術にも適用されることが多くなり、その高い効果が認識されつつあります。

「がん手術を成功にみちびくプレハビリテーション」でお伝えしたいこと

12月18日に『がん手術を成功にみちびくプレハビリテーション』が出版されます。

この本では、がん患者さんが手術後の合併症を減らして早期に回復し、最終的にがんを根治するために、やるべき運動・栄養サポート・メンタルケアなどについて詳しく解説しています。

手術を控えたがん患者さん、あるいは、がんの治療が延期になった患者さんのための本です。

がんの治療が中止や延期となり、不安を抱えている患者さんも多いと思います

そのような患者さんに、「ピンチをチャンスに変えることができる」ということをお伝えしたいのです。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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