QOL(生活の質) 食事療法

ケトン食による生存期間の延長:マウスのがん腹膜播種モデル

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がんの食事療法については、効果が確認され、確立されたものはありません。

糖質を減らす食事療法(低糖質ダイエットあるいはケトン体ダイエット)についても、いまでに一定の見解は得られていません。

今回、マウスのがんの腹膜播種モデルにおいて、ケトン体ダイエット(ケトジェニックダイエット)が通常の食事よりも生存期間を延長させたという研究結果が報告されました。

ケトン食(ケトジェニックダイエット)とは?

ケトン体ダイエットとは、炭水化物(糖質)の摂取量を非常に少なくすることにより、ケトン体という物質がエネルギーとして使われる状態に誘導する食事療法のことです。

アメリカ人医師ロバート・アトキンスが考案したアトキンスダイエット(Atkins Diet)が原型となっています。

ケトン体ダイエットは、もともと難治性小児てんかんの治療法として以前から知られていましたが、最近、ケトン体にがん抑制効果があることが動物実験などで証明され、国内外で臨床研究が行われております。

いくつかの実験モデルではケトン食によるがん抑制効果が見られていますが、人での臨床試験ではまだケトン食のがんへの効果は証明されていません

そもそも薬剤と違って、食事療法の臨床試験は製薬会社などの資金源がありませんので、なかなか前に進まない現状があります。

ケトン食によるがん腹膜播種モデルの生存期間延長

ketogenic diet improves the prognosis in a mouse model of peritoneal dissemination without tumor regression.  2019 May;64(3):201-208. doi: 10.3164/jcbn.18-103. Epub 2019 Mar 7.

日本の研究室からの報告です。

BALB/c マウスの腹腔内に、colon 26というマウスの大腸がん細胞を移植し、実験的に腹膜播種モデルを作成しました。

これらのマウスを、ランダムに通常食群とケトジェニックダイエット群に分けました。

食事の成分は以下の通りです。

 

通常食(Regular diet)とケトジェニックダイエット(Ketogenic diet)の栄養組成

Ingredients Regular diet


Ketogenic diet


(g/100 g diet)
Casein 20.3 14.4
Soybean Oil 7.0 72.4
Dextrin 63.2 3.7
AIN-93G mineral mix 3.5 3.5
AIN-93 vitamin mix 1.0 1.0
Cellulose 5.0 5.0

通常食ではデキストリン(炭水化物)が多いのに対して、ケトジェニックダイエットではデキストランの代わりに脂質である大豆油(soybean oil)が多い組成となっています。

これらの食事を与え、生存期間や栄養状態および腫瘍の進展について評価しました。

結果を示します。

■ 通常食群に比較して、ケトジェニック食群では、生存期間が有意に延長していました(P < 0.005)。

■ 健康状態、栄養状態(赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値など貧血の程度)外貌ケトン食群のほうが良好でした

■ 腹水の量は、ケトン食群で有意に少ないという結果でした。

■ 一方で、腫瘍の重さは、両グループ間で差はありませんでした。

以上の結果より、「ケトン食は腫瘍の成長は抑えないものの、栄養状態や腹水のコントロールを改善することで生存期間を延長した」と結論づけています。

ケトン食はがん腹膜播種に対する治療として効果が期待できるとしています。

まとめ

もちろん、このような動物実験のデータをそのまま人にあてはめることはできませんが、今回の実験結果からは、ケトン食(ケトジェニックダイエット)は一部のがん患者さんの全身状態を改善する可能性があります

今後さらなる検証が必要と考えられます。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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