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ケトン食(ケトジェニックダイエット)が末期がんを救う:最新の研究結果

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がんの食事療法には色々ありますが、最近、ケトン体ダイエット(あるいはケトジェニックダイエット)に注目が集まっています。

ケトン体ダイエットとは、アメリカ人医師ロバート・アトキンスが考案したアトキンスダイエット(Atkins Diet)が原型となっていますが、炭水化物(糖質)の摂取量を非常に少なくすることにより、ケトン体という物質がエネルギーとして使われる状態に誘導する食事療法のことです。

ケトン体ダイエットは、もともと難治性小児てんかんの治療法として以前から知られていましたが、最近、ケトン体にがん抑制効果があることが動物実験などで証明され、国内外で臨床研究が行われております。

はたしてケトン体ダイエットはがんに有効なのでしょうか?最近の研究結果を紹介します。

ケトン体とは

脂肪の分解により肝臓で作られ、血液中に放出されるアセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸のことをまとめてケトン体といいます。

つまりケトン体は脂質由来の物質で、ブドウ糖が枯渇した場合に脳をはじめ体のエネルギー源として使われます。

もともと、医師の間でもケトン体は糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病患者でケトン体が上昇し、意識障害などが起こる状態)との関連より、悪いものだという先入観や誤解がありました。

しかし最近では、ケトン体は原始時代より人間がメインに使用していたエネルギー源であり、また胎児や新生児においてはケトン体が非常に高値であることも分かってきました。

さらに、糖質制限によって生成されるケトン体が、がんの増殖を抑制するといった研究結果が細胞や動物実験にて明らかとなりました

そして最近、ケトン体ダイエットが実際のがん患者さんで効果があるとする臨床試験の結果が国内外から報告されました。

アメリカからのケトジェニックダイエットの報告

アメリカ(ピッツバーグ)の研究グループが、このほど進行がん患者を対象としたケトジェニックダイエット(modified Atkins diet:アトキンズダイエット変法)についての最終報告を、Nutrition & Metabolism誌(2016年)に発表しました。

抗がん剤治療を受けていない17名のさまざまな進行がん患者を対象とし、一日の糖質摂取量を20~40 gに制限するアトキンズダイエット変法を16週間続けるという試験です。

がんの種類としては、肺がん、皮膚がん(メラノーマ)、脳腫瘍、膵がん、胆管がん、肝臓がん、大腸がんなどでした。

11名(平均年齢65歳、平均体重92 kg)において生活の質(QOL)、体重や血液データ、およびがん治療効果が評価可能でした。

結果ですが、4週目、8週目、16週目の時点で、6名(54.5%)、5名(45.4%)、4名(36%)の患者で、がん治療に効果がみられた(がんの進行なし、または部分縮小)としています。特に、肺がんと皮膚がん患者のうち数名で生存期間の延長効果が得られたとしています

8名(73%)で体重の減少がみられたが、重大な副作用はなく、逆にほとんどの患者で生活の質(QOL)は改善したとのことです。治療効果があった患者では、治療効果を認めなかった患者より、より体重の減少がみられたということです。

ケトン食ががんを消す:国内の臨床研究結果

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さらに、国内からケトン食の末期がん患者に対する治療効果についての研究結果が報告されました。

「ケトン食ががんを消す」の著者である古川健司医学博士(多摩南部地域病院外科)によると、これまでに乳がんなどステージ4の患者さん22名に、抗がん剤治療と併用して免疫栄養ケトン食(ケトン食+EPA+タンパク質)を行ってきました。

その結果、3ヶ月以上続けることができた18名のうち、完全寛解(腫瘍が消失)が28%がんが消失もしくは縮小した患者さんの割合(奏功率)は39%、さらにがんが進行しなかった患者まで含む病勢コントロール率はなんと83%だったとのことです!

多くの患者さんが、すでに他の臓器に転移したステージ4のがんであることを考えれば、奏功率39%、病勢コントロール率83%は驚異的な数字です。

なぜケトン体ダイエットががんを抑制するのか

がん細胞は、正常細胞の3~8倍もブドウ糖を取り込んでいることがわかっています。まず、ケトン体ダイエットで糖質制限を続けると、血糖値の上昇が防げます。がん細胞はブドウ糖をエネルギー源にしていることから、糖質制限によって血糖値の上昇を防ぎ、がん細胞を兵糧攻めにすることが期待できます

また血糖をさげるために分泌されるインスリンはがんの成長を促すことが分っていますが、ケトン体ダイエットではインスリンの分泌が低下するため、がんの進行を防ぐことができます

さらに、きびしい糖質制限によって体内に生成されたケトン体が、がんを誘発する酵素であるβーグルクロニダーゼの活性を低下させ、炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす化学物質)が増えるのを抑えることで、抗がん作用を発揮することが示されています。

以上のメカニズムによって、ケトン食ダイエットはがんに対する抑制効果を発揮していると考えられます。

ケトン体ダイエットの注意点

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このダイエット法が危険あるいは適応にならない患者さんもいますので注意が必要です。以下の人は、糖質制限およびケトン体ダイエットの適応になりません。

■糖尿病の治療として、経口血糖降下剤の内服やインスリン注射を受けている患者

■膵炎(診断基準を満たす)がある場合

■進行した肝硬変がある場合(肝機能の障害がある患者さん)

■腎機能低下がある場合

■長鎖脂肪酸代謝異常症の患者

ケトン体ダイエットをお考えのがん患者の方へ

ケトン体ダイエットは、極端な糖質制限や理想的にはケトン体の測定が必要であることより、医師の監督なしで独自に行うことはおすすめできません。

まずは「ケトン食ががんを消す(光文社新書)」をご一読ください。

著者の古川先生による「がん免疫栄養ケトン食療法セミナー」が全国で開催されているそうですので、このセミナーへご参加ください。ちなみに「バイオロジックヘルス株式会社のホームページ」からセミナー資料請求や参加申し込みが可能とのことです。

いずれにせよ、いきなり自己流のケトン体ダイエットは危険ですので、まずは(ゆるい)糖質制限食からスタートするのがいいでしょう。

参考:「すべてのがん患者さんへ!楽しくゆるい糖質制限食のすすめ」

参考:「主食・スイーツをあきらめない!がんサバイバーの糖質制限ダイエットを強力にサポート」


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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