アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)がトリプルネガティブ乳がん患者の生存期間を延長

 

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トリプルネガティブ乳がんに対しては、ホルモン療法やハーセプチンなどのHER2標的の分子標的薬の効果が期待できないため、通常の抗がん剤治療が中心となります。しかし、抗がん剤が効きにくいタイプもあり、新たな治療法開発が待たれています。

最近、がんに対する第4の治療として、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の適応が広まってきました。乳がんに対しても、免疫チェックポイント阻害剤の効果を調べるためにいくつかの臨床試験が行われています

今回、トリプルネガティブ乳がんに対する抗PD-L1抗体のアテゾリズマブ(atezolizumab、商品名テセントリク)の第I相試験のこれまでの結果が報告されました。

アテゾリズマブはトリプルネガティブ乳がん患者の生存期間を延長

転移のあるトリプルネガティブ乳がん患者112名に対する抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(TECENTRIQ;テセントリクの第I相試験が現在進行中ですが、全生存率を含めたこれまでの結果が、米国がん学会(AACR)年次集会(ワシントンDC、2017年4月)にて報告されました。

これは、現在までにトリプルネガティブ乳がん患者さんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験としては最大規模のものです。

報告された所見をまとめてみます。

■ 全体での奏功率はわずかに10%(免疫関連反応の基準では13%)であったが、これらの患者における奏効期間の中央値は21ヶ月であり、長期間継続する傾向にあることが示された(これまでのトリプルネガティブ乳がんに対するあらゆる治療の中で最長の奏効期間)。
■ 全生存率は、1年時で41%2年時と3年時はともに22%であった。
■ 重大な副作用はわずか11%安全性は高いことが示唆された。
■ 過去に抗がん剤治療や抗VEGF治療を受けた人より、初回治療としてアテゾリズマブ治療を受けた人のほうが奏功率が高かった(26% vs 7%)。
■ 腫瘍の生検によって測定した腫瘍浸潤リンパ球のPD-L1発現が高い患者では、低い(または発現がない)患者よりも奏功率が高かった(13% vs 5%)。

以上の結果より、本臨床治験の責任者であるPeter Shmid 氏は、「これはトリプルネガティブ乳がんに対する免疫治療のスタート地点である」とし、「一部のアテゾリズマブが奏効した患者の全員が長期生存のベネフィットを得たことは、われわれに希望を与える事実である」と述べています。

しかし一方で、わずか10%の患者にしか効果がなかったことをあげ、「この薬はすべてのトリプルネガティブ乳がんの解決策とはならない」としています。

また、腫瘍内の腫瘍浸潤リンパ球やCD8+リンパ球のレベルなども、治療効果を予測するマーカーとしては有用ではないとしています。

今後の最大の課題として、アテゾリズマブの効果が期待できる患者を特定するバイオマーカーを見いだす必要があります。

トリプルネガティブ乳がん患者を対象としたアテゾリズマブの日本における治験情報

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現在日本において、未治療の転移性トリプルネガティブ乳がん患者を対象にしてアテゾリズマブとNab-パクリタキセル(アブラキサン)を併用したときの有効性および安全性を確認する臨床試験が進行中(募集中)です。

主な参加条件および除外基準を下記に紹介します。

主な参加条件等

この試験の対象となりうる方

  1. 18歳以上の方
  2. 転移性又は局所進行性のトリプルネガティブ乳癌と診断されている方
  3. 手術不能の局所進行性又は転移性TNBCに対する化学療法又は全身標的療法の施行歴がない方
  4. RECISTという基準にて、腫瘍の大きさが測定可能な方
  5. ECOG PS(パフォーマンスステータス) 0又は1の方

この試験の対象とならない方

  1. CNS転移(脳転移等)を有する方。ただし,治療後の無症候性のCNS転移を除く。
  2. 軟膜・髄膜転移を有する方
  3. 自己免疫疾患の既往歴
  4. HIV、活動性HBVおよびHCVを有する方

詳しくは、以下のサイトの情報を参考にしてください。

転移性トリプルネガティブ乳がん 初回治療として、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブの第3相試験

 

【参考文献】

Atezolizumab Extends Survival for Breast Cancer. Cancer Discov. 2017 Apr 4. doi: 10.1158/2159-8290.CD-NB2017-053. [Epub ahead of print]

 


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