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炎症が膵臓がんの生存期間を決める:新たな予後因子CRP/アルブミン比率

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昔から炎症とがん(悪性腫瘍)との間には深い関係があることが示されてきました。つまり、慢性の炎症はがんの原因となり、またがんを進行させることがわかっています。

最近、炎症の程度が、がん患者の生存期間を予測するマーカーとなることがわかってきました。一般的に、炎症の強いがん患者の生存期間は短く、一方炎症のない(弱い)がん患者の生存期間は長いことが報告されています。

今回、炎症の程度を反映するスコアであるCRP(C-リアクティブ・プロテイン)/アルブミン比率が、膵臓がん患者の生存期間を決定する重要な因子であるとの研究結果が発表されました。

今回の研究により、膵臓がんの進行および予後における炎症の重要性があらためて確認されました。

CRP(C-リアクティブ・プロテイン)とは?

CRPは肝臓で産生されるタンパク質の一種で、通常は血液の中にはほとんど存在しませんが、体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合に血液中に増加します

したがって、風邪やインフルエンザ、肺炎、その他の感染症など様々な原因による炎症の有無や程度を診断するためにCRPが測定されます

血液中のCRPの基準値(正常値)は0.3mg/dl以下で、それ以上だと炎症があることを疑います。また炎症の程度に応じて高くなります。すなわち、炎症が強いほど血清CRP値は高くなります

CRPは炎症がおきてから6時間前後で増え始め、数値の上昇までに12時間程度かかるとされています。また、一度上昇すると下がるまで24時間程度を要するため、炎症性の病気を発症してすぐの場合や、治癒直後には指標とならないこともあります。

また、CRPの値を調べることで心筋梗塞やがんを見つける手掛かりになることもあるため、一般的な血液検査の項目として測定されます。

膵臓がんの新たな予後スコアとなるCRP/アルブミン比率

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中国の研究チームは、2010年~2015年までの5年間に治療した386人の膵臓がん患者について、単変量・多変量解析という手法で、予後(生存期間)を決定する因子について解析しました。

Prognostic Value of the CRP/Alb Ratio, a Novel Inflammation-Based Score in Pancreatic CancerAnn Surg Oncol. 2016 Sep 20. [Epub ahead of print]

解析した項目は、年齢、性別、がんの部位、腫瘍の大きさ、血清CA19-9(腫瘍マーカー)値、ステージに加え、炎症の新しい指標としてCRP/アルブミン比率です。

ちなみに、アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質で、こちらも炎症の指標となります。すなわち、炎症が強くなると肝での合成が低下し、消費が亢進するために、アルブミン値は低下します。

したがって、炎症が強くなるとCRPが上昇してアルブミンは低下するため、CRP/アルブミン比率は高くなります

また、すでに予後との関係が報告されている他の炎症関連のマーカーとして、好中球/リンパ球比率、血小板/リンパ球比率、および修正グラスゴー予後スコアについても調べました。

結果は以下の通りです。

CRP/アルブミン比率が0.18より高い(つまり炎症が強い)膵臓がん患者では、0.18より低い(炎症の程度が弱い)患者に比べ、生存期間が有意に短い(予後が不良)結果でした(下図)。

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■単変量解析(それぞれの因子について単独で予後との関係を調べる解析)では、全生存期間との関連を認めた因子は、腫瘍の大きさ、CA19-9値、ステージ、そして、すべての炎症関連マーカー(CRP/アルブミン比率、好中球/リンパ球比率、血小板/リンパ球比率、および修正グラスゴー予後スコア)でした。

■多変量解析(関係のあるすべての因子と予後との関係を総合的に調べる解析)では、CRP/アルブミン比率、腫瘍の大きさ、およびステージが生存期間を決定する独立した予後因子となりました。例えば、CRP/アルブミン比率が0.18より高い患者では、0.18より低い患者よりも死亡率がおよそ2倍にもなることが分りました

■ROC曲線による解析では、CRP/アルブミン比率のAUC(ROC曲線下面積、つまりマーカーとしての精度)が他の炎症関連マーカーよりも高く、予後を予測する最もすぐれた因子であることがわかりました。

まとめ

この研究結果より、炎症の強さは膵臓がんの予後(生存期間)を左右する最も重要な因子であることが示されました。

また今回、CRP/アルブミン比率という炎症関連スコアが、膵臓がんの新たな予後因子になる可能性が示されました。

炎症を抑えるには?

ちなみに、がんの進行を早めるとされる炎症を抑える方法には以下のものがあります。

1.規則正しい生活

2.ストレスをなくす

3.肥満または持続的な高血糖の状態を防ぐ

4.消炎鎮痛剤やステロイド剤(副作用もあります)

5.抗炎症作用のある食物(ファイトケミカルを含む食べ物一般、アブラナ科の野菜、ウコン(クルクミン)、緑茶(カテキン)、ブドウ・赤ワイン(レスベラトロール)、トマト(リコピン)、オメガ3脂肪酸を含む食べ物(青魚)など)

6.抗炎症サプリメント

炎症を抑える効果のあるサプリメントには色々ありますが、なかでもEPA(エイコサペンタエン酸)には強力な抗炎症作用があります。実際にEPAには、がん予防効果、抗がん作用があることがわかっています。このため、がん患者さんにはEPAのサプリメントをすすめています。

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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