がん骨転移に対するゾレドロン酸(ゾメタ)の投与間隔が変る?:4週毎 vs 12週毎のランダム化比較試験
乳がんなどの骨転移は、痛み(疼痛)、骨折、手足のしびれや麻痺、および高カルシウム血症など、さまざまな厄介な症状や合併症を引き起こします。
これら骨転移に伴う症状や合併症に対しては、ゾレドロン酸(第三代ビスホスホネート製剤、商品名ゾメタなど)が有効であり、現在4週間ごとの投与が標準的に行われています。
今回、海外の研究グループから、がん骨転移に対して、ゾレドロン酸の4週後と12週ごとの投与についてのランダム化比較試験の結果が報告されました。
今後、ゾレドロン酸の投与間隔が変る可能性があります。
がん骨転移に対する治療
がんの骨転移は、肺がん、乳がん、前立腺がんなどでみられます。骨転移は痛みの原因となるばかりでなく、骨折や高カルシウム血症などの合併症を引き起こすことより、積極的な治療が必要です。がん骨転移に対する標準的な治療について解説します。
がんそのものに対する薬物治療
まずは、がんそのものを抑える薬物治療を行うことが原則です。つまり、それぞれがんの原発(最初にできた部位)に応じて、一般的な抗がん剤、分子標的薬、および抗ホルモン剤などが使用されます。
放射線療法
痛みを伴うがん骨転移(有痛性骨転移)の治療として、放射線療法が非常に有効です。様々ながんのガイドラインでも、骨転移に対する放射線療法が勧められています。
痛みの緩和効果としての放射線療法の有効率は、もともとの原疾患(がん)にもよるが、60~90%であるとされています。また鎮痛効果は、照射開始後2週程度から出現し、4~8週で最大になると考えられています。
骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネート、デノスマブ)
近年、がんを抑制する治療と並行し、骨吸収抑制剤であるゾレドロン酸、デノスマブによる治療を行うことが一般化してきました。
これらの薬剤は、骨の中にある破骨細胞(はこつさいぼう)に選択的にアポトーシスを導入したり、細胞の働きを抑制することによって効果を発揮し、骨転移に伴う疼痛、病的骨折、脊髄圧迫症状、高カルシウム血症などの骨関連事象(症状や合併症)を有意に抑制することが分かっています。
しかし一方で、これらの薬剤は顎骨壊死(がっこつえし)という怖い副作用を引き起こすこともあり、注意が必要です。
がん骨転移に対するゾレドロン酸の投与間隔についてのランダム化比較試験
乳癌診療ガイドラインによると、骨吸収抑制薬の使い方として、「乳癌骨転移に対するビスフォスフォネートの投与方法は,クレアチニン・クリアランス60 mL/分を超える場合は,ゾレドロン酸は1回4 mgを15分以上かけて,3~4週毎に投与する。クレアチニン・クリアランス60 mL/分未満,30 mL/分を超える場合は減量して用いる。」となっています。
つまり、現在の実臨床では、ゾレドロン酸は3~4週毎に投与するのが一般的です。
Himelsteinら米国の研究者らは、ゾレドロン酸の12週ごとの投与が4週ごとの投与に対して非劣性(対照群に比べて劣っていないこと)であるかどうかを評価する、多施設ランダム化比較試験を行いました。
米国の269施設で登録された骨転移を有するがん患者1,822例(乳がん855例、前立腺がん689例、多発性骨髄腫278例)を対象としました。
このうち、ゾレドロン酸を4週間隔で投与するグループ(4週群)と12週間隔で投与するグループ(12週群)にそれぞれ911例を割り付け、2年間投与しました。
主要評価項目は、2年間の骨関連事象(臨床的骨折、脊髄圧迫、骨病変への放射線療法、あるいは骨関連の手術)の発生としました。
結果を示します。
■2年間の骨関連事象の発生は4週群が260例(29.5%)、12週群が253例(28.6%)で有意差は認められなかった(非劣性に対するP<0.001)。
■乳がん、前立腺がん、多発性骨髄腫のいずれのがんにおいても、4週群と12週群の骨関連事象発生率に有意差はなかった。
■4週群と12週群の間で、疼痛スコア、パフォーマンスステータス(日常生活の制限の程度)スコア、顎骨壊死(がっこつえし:ゾレドロン酸の特異的な副作用)と腎機能障害の発症率に差はなかった。
■骨代謝回転(C末端テロペプチド値)は、12週群の方が高かった。
以上の結果をまとめると、がん骨転移を認める患者さんに対して、ゾレドロン酸を4週間隔で投与するグループと12週間隔で投与するグループでは、骨折など骨関連事象に差はなく、また痛みや合併症についても差を認めませんでした。
今後、がん骨転移の患者さんに対してゾレドロン酸の投与間隔が現在よりも長くなる可能性がありますが、もちろん患者さんにとっては負担が減るため、好ましいことです。
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