膵臓切除後に注意する合併症:糖尿病はどの程度みられるのか?
膵臓のおもな働きとして、外分泌機能と内分泌機能があります。
外分泌機能とは消化液をつくって腸(十二指腸)の中に流す働きです。一方、内分泌機能とはインスリンなどのホルモンを血液の中に流して血糖値を調節する働きです。
膵臓がんなどの手術で膵臓を切除すると、これらの機能が障害されることがあります。とくに、内分泌機能が低下すると糖尿病(膵性糖尿病と呼びます)を発症したり、悪化することになり、生活の質を低下させる原因となります。
しかし、膵臓を手術した患者さん全員が術後糖尿病になるわけではありませんし、もともとの膵臓の機能や、切除のタイプ(部位)によっても異なってきます。
では、実際には膵臓を切除した場合にはどのくらいの患者さんが糖尿病になるのでしょうか?アメリカからの報告を紹介します。
膵切除後の膵性糖尿病の頻度
米国のトーマスジェファーソン大学で膵臓切除を行った1107名の患者を調査の対象としました。このうち、電話および糖尿病のアンケート調査が可能であった患者さん259人について、膵切除後の糖尿病の頻度を調べました。
これらの患者さんのうち、179人には膵頭十二指腸切除術(膵臓の頭側の切除)、78人には膵体尾部切除術(膵臓の尾部側の切除)を行っていました(下図)。
また、2人に膵全摘術を行っていました(予想通り、この膵全摘術を受けた患者はどちらもインスリンが必要な糖尿病を発症していました)。
手術から追跡調査までの期間(中央値)は、膵頭十二指腸切除グループで25ヶ月、膵体尾部切除グループで31ヶ月でした。
結果を示します。
膵頭十二指腸切除
術前糖尿病あり
術前糖尿病なし
膵体尾部切除
術前糖尿病あり
術前糖尿病なし
以上の結果より、以下のことがわかりました。
これらのことより、膵臓の手術後には、(切除のタイプによって異なりますが)つねに糖尿病になるリスクがあることを知っておくべきです。私の経験では、術後1年以上もたってから糖尿病になることもあります。
ちなみに、膵切除後の糖尿病に対しては、内服薬(経口血糖降下薬、DPP-4阻害剤など)でコントロール可能な場合もありますが、重症例ではインスリン注射が必要となります。
定期的に外来を受診して糖尿病の検査を受けること、そして、糖尿病を疑う症状(喉のかわきや尿が多くなる)があった場合にはすぐに主治医に報告することが重要です。
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