オラパリブは転移性乳がん(BRCA遺伝子変異陽性)の生存率を改善
転移を認める乳がんに対する治療には限界があり、新たな治療薬の開発・導入に期待が集まっています。
オラパリブ(アストラゼネカ)は新しい経口分子標的薬であり、DNAの修復酵素であるPARP(ポリADP-リボースポリメラーゼ)の阻害剤です。このPARP阻害剤は乳がんの原因遺伝子として有名なBRCA遺伝子(BRCA1またはBRCA2)に変異を認めるがんにより効果が高いという特徴があります。
今回、BRCA遺伝子変異陽性の転移性乳がん患者を対象とし、オラパリブ(olaparib)の有効性と安全性を比較した第III相ランダム化比較試験の結果が発表されました。
新たな抗がん剤PARP阻害剤とは?
ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)とは、DNAの修復に関与する酵素です。この酵素はDNA損傷に伴い活性化され、DNAの損傷を修復します。抗がん剤で傷つけたがん細胞のDNA修復にも関わると言われており、抗がん剤が効きにくくなる原因のひとつと考えられています。
このPARPを阻害する分子標的薬がPARP阻害薬です。BRCA1あるいはBRCA2の変異は遺伝性乳がんや卵巣がんのがんの原因になりますが、逆にBRCA1/2の変異がある患者さんはPARP阻害剤が効きやすいのです。
現在、海外ではオラパリブ(アストラゼネカ)、ベリパリブ、ニラパリブ、ルカパリブなどが乳がんや卵巣がんに対する治療薬として臨床試験中または承認されつつある段階です。
BRCA変異陽性転移性乳がんに対するオラパリブ:第III相臨床試験の結果
このほど、BRCA変異陽性転移性乳がん患者に対する経口PARP阻害剤オラパリブと標準的な単剤化学療法を比較した第III相ランダム化比較試験(OlympiAD試験)の結果が、米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)およびニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)誌にて発表されました。
本試験は、HER2陰性(ホルモンレセプター陽性またはトリプルネガティブ)の生殖細胞系BRCA1またはBRCA2遺伝子変異陽性乳がんの患者さんを対象としました。
これらの患者さんを、オラパリブ群(オラパリブ錠(300mg 1日2回投与))と医師が選択した標準的な単剤化学療法(カペシタビン、ビノレルビン、あるいはエリブリン)に、2:1に無作為に割り付けました。
最終的に302例の患者が登録され、205例がオラパリブ群に、97例が抗がん剤群に割り付けられました。
主要評価項目は無増悪生存(PFS)であり、副次的評価項目は2回目の病勢進行または死亡までの期間(PFS2)、客観的奏効率(ORR)、安全性と忍容性、および健康関連QOLでした。
結果を示します。
まとめ
今回報告された臨床試験では、新規抗がん剤であるPARP阻害薬オラパリブはBRCA変異陽性HER2陰性(ホルモンレセプター陽性またはトリプルネガティブ)転移性乳がん患者の病勢進行または死亡のリスクを42%も減少したという結果でした。
また安全性においても通常の抗がん剤治療よりも有害事象(副作用)が少ないという結果でした。
BRCA遺伝子に変異を認める乳がん患者さんが対象になりますが、今後、オラパリブと他の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法などの新たな治療戦略も考えられます。いずれにせよ、日本においてもオラパリブの早期承認が期待されます。
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