がんの原因:遺伝それとも生活習慣病?予防はできるの?
みなさんは、がんの原因は何かご存じですか?
「がんは遺伝の病気である」というのを聞いたこともあるでしょう。また、「がんは生活習慣病である」ということもよく言われています。
はたして、がんの原因は何なのでしょうか?
がんは遺伝病なのでしょうか?
それとも、生活習慣病なのでしょうか?
がんの原因は?遺伝か生活習慣か?
その答えは、両方です。
つまり、がんの原因は、遺伝的素因+後天的環境因子(生活習慣など)なのです。
このうち、遺伝の割合は少なく、生活習慣や環境の影響が非常に大きいと言われています。
がん全体で考えると、喫煙や飲酒、食事、運動、職業、環境などがしめる割合はじつに7割近くにも上るとされています。
例えば、1996年にハーバード大学のがん予防センターから発表されたがん死亡の原因では、環境因子が全体の68%であり、このうち喫煙(30%)、食事(30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)がおもな原因との報告でした。
日本人を対象とした大規模な疫学調査では、がんの原因として喫煙がおよそ20%、飲酒・食事・運動が10%、そして感染が20%(残り50%が原因不明)という結果でした。
日本人におけるがんの原因:Ann Oncol 23(5): 1362-1369.より作図
先ほどのアメリカのデータに比べて感染が多い傾向にありますが、少なくとも約30%は生活習慣が原因と考えられます。
また、日本人における感染症(肝炎やピロリ菌)が減少し、生活様式が欧米化していることを考えると、がんの原因としてますます生活習慣(とくに食事や運動)の占める割合が増加する可能性があります。
もちろんがんの種類によっては強く遺伝の影響をうけるもの(例えば遺伝性の乳がん、大腸がん、膵臓がんなど)もありますが、多くのがんは「生活習慣病」とも言えるのです。
遺伝の影響を強く受けるがんもある
最近、日本の大規模研究から、遺伝の影響を受けやすいがんが明らかとなりました。
Family history of cancer and subsequent risk of cancer: a large-scale population-based prospective study in Japan. Int J Cancer. 2019 Oct 8. doi: 10.1002/ijc.32724. [Epub ahead of print]
この研究では、40~69歳の日本人男女10万3707人を平均17年以上にわたって追跡したデータを元に、親(父、母)、兄弟、姉妹のうち、少なくとも1人ががんになった「がん家族歴がある」グループは「ない」グループと比べて、がんに罹患するリスクがどれだけ上昇するかを解析しました。
その結果、がん家族歴があると罹患リスクが有意に高まることが判明したがんは、「肺がん(1.5倍)」「食道がん(2.1倍)」「胃がん(1.4倍)」「肝臓がん(1.7倍)」「膵臓がん(2.6倍)」「子宮がん(1.9倍)」「膀胱がん(6.1倍)」の7種類でした(下図)。
出典:「大規模研究で判明した「家系が影響するがん」とその確率(NEWSポストセブン)」
家族(親や兄弟・姉妹)にこれらのがんの人がいる場合には、リスクが高まることを知っておいた方がいいでしょう。
生活習慣の改善でがんが防げるのか?
では、生活習慣の改善でがんは防げるのでしょうか?
100%防ぐことはできませんが、答えはイエスです。
多くのがんは、生活習慣の見直しによって予防ができるのです。
例えば、国立がん研究センター予防研究グループによると、日本では男性のがんのおよそ55%(がん発生については53%、がん死については57%)は予防可能なリスク要因によるものでした。
一方、女性では予防可能な要因はがんの30%近く(がん発生とがん死でそれぞれ28%と30%)を占めました。
つまり、生活習慣の改善により、少なくとも30~50%のがんを防ぐことができる可能性があります。
今からでも遅くありません。がんを予防するために、積極的に生活習慣の改善にとりくみましょう。
日本人のためのがん予防法
さて、ではがんを予防するためには実際にはどうしたらいいのでしょうか?
たくさん報告されているがん予防法のうち、一番簡単でかつ医学的エビデンス(証拠)のしっかりしたものは、国立がん研究センターから提案された「日本人のためのがん予防法」です。
日常生活で簡単にできますので、ぜひ参考にしてください。
(1)喫煙
たばこは吸わない。他人のたばこの煙を避ける。
たばこを吸っている人は禁煙をしましょう。吸わない人も他人のたばこの煙を避けましょう。
(2)飲酒
飲むなら、節度のある飲酒をする。
飲む場合はアルコール換算で1日あたり約23g程度まで。
日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度です。
飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。
(3)食事
食事は偏らずバランスよくとる。
*塩蔵食品、食塩の摂取は最小限に。
*野菜や果物不足にならない。
*飲食物を熱い状態で取らない。
食塩は1日あたり男性9g、女性7.5g未満、特に、高塩分食品(たとえば塩辛、練りうになど)は週に1回未満に控えましょう。
(4)身体活動
日常生活を活動的に。
たとえば、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行いましょう。
また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分程度おこないましょう。
(5)体形
適正な範囲内に。
中高年期男性の適正なBMI値(Body Mass Index 肥満度)は21~27、中高年期女性では21~25です。
この範囲内になるように体重を管理しましょう。
BMIの求め方 BMI値 = 体重(kg)/身長(m)2
(6)感染
肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。
機会があればピロリ菌検査を。
・地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けましょう。感染している場合は専門医に相談しましょう。
・機会があればピロリ菌の検査を受けましょう。
感染している場合は禁煙する、塩や高塩分食品のとりすぎに注意する、野菜・果物が不足しないようにするなどの胃がんに関係の深い生活習慣に注意し、定期的に胃の検診を受けるとともに、症状や胃の詳しい検査をもとに主治医に相談しましょう。
がんを早期発見する重要性
がんで死なないためには、「予防」に加えて、がんをできるだけ早い段階で見つけること、すなわち「早期発見」が重要になります。
たとえがんになったとしても、早期に発見して適切な治療を受けることができれば、がんで死ぬことは回避できる可能性が高いのです。
実際に、がんの病期(ステージ)別の生存率では、ステージ1の早期がんの5年生存率は90%以上であるのに対して、もっとも進んだ段階であるステージ4の場合、およそ20%まで下がります。
がんを早期に発見するためには、できるだけ早く「がんのサイン」に気づき、勇気をもって専門の病院を受診することが重要です。
そこで、「がんを早期発見するために、知っておくべき症状・危険因子(どんな人がなりやすいか)」を中心に、広くがんについての情報をまとめ、1冊の本にしました。
本書では、臓器(部位)別に、以下のおもながんの症状(サイン)と危険因子(どんな人がなりやすいか)をまとめました。
[st-midasibox title=”がんの種類(臓器)” fontawesome=”” bordercolor=”” color=”” bgcolor=”” borderwidth=”” borderradius=”” titleweight=”bold”]
口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆のうがん・胆管がん、膵臓がん、腎臓がん、尿路上皮がん(膀胱がん)、前立腺がん、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、悪性リンパ腫、白血病、皮膚がん、脳腫瘍
[/st-midasibox]
例えば、堀ちえみさんで話題となった舌がん(口腔がん)については、2週間以上治らない口内炎・できもの、口の中のかたいしこり、あごの下、首のしこり(リンパの腫れ)などが典型的ながんのサインです。
まとめ
- がんは遺伝と生活習慣の両方が原因です。
- 一部に遺伝の影響を強く受けるがんもありますが、生活習慣を改善することでがんのリスクを減らすことができます。
- また、がんを予防すると同時に、がんのサイン・症状を知っておき、気になる場合には医療機関を受診しましょう。
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