がん患者はなぜ痩せるのか?体重を維持・増加させるためにできること5つ
がんになると、(浮腫や腹水がたまって体重が増える患者さんを除いて)ほとんどの患者さんでは体重が減ります。
進行がんでは特に体重減少がひどく、短期間で5キロ程度やせることもしばしばです。がんで亡くなる直前の芸能人の激やせが話題になることもありますね。
がんに伴う体重減少のメカニズムについてはまだ不明な点が多いのですが、いくつかの原因はわかっています。また一部のがんでは、体重減少があると生活の質(QOL)が低下するだけではなく、生存期間が短くなるといったデータもあるのです。
このため、なんとしてもこの体重減少を防ぐ(あるいは改善する)必要があるのですが、実際にはどうしたらよいのでしょうか?
がん患者さんの体重減少の原因をさぐり、体重を維持・増加させるためにできることを解説します。
痩せることが多いがんの種類は?
一般的に、どのがんでも進行するにつれて痩せる傾向にあるのですが、消化器系のがんでは特に体重減少が多くみられます。
体重が減る代表的ながんには、食道がん、胃がん、膵臓がん、胆道がん(胆管がんなど)、大腸がんなどがあります。
また多くの研究において、体重減少(あるいは骨格筋の減少)は予後不良のサインであることが分かっています。
がん患者さんが痩せる理由
●栄養不足
がんの症状や治療(とくに抗がん剤)に伴う副作用の代表的なものが食欲低下です。多くのがん患者さんは食欲低下のために食事量が減ります。
がんによって消化管が狭くなったり塞がれた場合(腸閉塞)、食べ物の通過が悪くなって食事がとれなくなります。また、検査や治療(手術など)のために食事ができない期間もあります。このため摂取すべき栄養の絶対量が低下し、体重減少へとつながります。
●消化・吸収障害
消化器系にできたがんの場合、食べたものがしっかりと消化・吸収できないことがあります。例えば膵臓がんの場合、膵臓で作られる消化酵素の分泌が低下し、せっかく食べたものが消化されなくなることもあります。
また手術で胃や腸(とくに小腸)を切除した場合、消化吸収の機能が低下することがあります。
●代謝異常
がん患者さんでは、がん細胞が放出する化学物質(サイトカインなど)によって代謝(からだでおこる生命維持のための反応)の異常がおき、必要な栄養を合成できなかったり、利用できなくなります。また、筋肉ではたんぱく質の分解が進行し、やせ細ってきます。簡単に言うと、「がんに栄養を奪い取られている状態」です。
結果的に体重減少、全身の衰弱がみられるようになりますが、このような状態をがんの悪液質(カヘキシア)と呼んでいます。
●炎症
がんによって慢性の炎症が引き起こされますが、この炎症によって体の必要な栄養素が奪われていきます。実際に、炎症の程度(CRP(C反応性タンパク)の数値など)は栄養状態を反映し、CRPが高くなると、重要なたんぱく質であるアルブミンが低下します。
●運動不足
がんの治療や入院などに伴い、運動量が減ります。このため、筋肉の量が減ってきます。筋肉の量が減ると、活動性が低下してさらに運動量が減るため、悪循環となります。
筋肉量/筋力の低下をサルコペニアといいますが、このサルコペニアも術後の合併症やがんによる死亡率の増加と深く関係していることが明らかとなっています。
●その他
がん患者さんにみられる体重減少の原因は非常に複雑で、まだすべてのメカニズムは解明されていません。
がん患者さんが体重を維持・増加させるためにできること5つ
1.食事から栄養(たんぱく質)をしっかりとる
まずは食事から栄養をしっかりとりましょう。とくに筋肉の維持に必要な良質のたんぱく質を中心に、代謝に必要なビタミンやミネラルの豊富なものを食べてください。
ちなみに、1日に必要とされるタンパク質摂取量は、体重1Kgあたり1.2g(つまり体重50Kgの人では60g)です。
食欲のないときでもたんぱく質をとれるメニューについては、こちらをどうぞ↓
2.消化酵素剤・食欲増進剤を処方してもらう
消化不良(ガスやげっぷが多い、下痢しやすいなど)が疑われる場合や、消化管の術後(特に膵臓の切除後)で消化酵素が足りないと思われる場合には主治医に相談し、消化酵素剤(ベリチーム、エクセラーゼ、パンクレアチン、リパクレオンなど)を処方してもらいましょう。
また、明らかな原因(胃腸の潰瘍やびらんなど器質的疾患)がないのに食欲がない場合には、食欲の増進が期待できる薬(六君子湯、ガスモチン、ナウゼリン、プリンペラン、アコファイドなど)を試すことができるか、主治医と相談しましょう。詳しくはこちらをどうぞ↓
また、単純に便秘をしているだけで食欲が低下しますので、水分をしっかりとり、整腸剤、緩下剤や便秘の薬で排便もしっかりコントロールしましょう。
3.栄養補助食品を利用する
食事があまりとれない患者さんには、栄養補助食品を利用するという方法があります。市販のものには次のようなものがあります。
■ プロシュア
プロシュアはアボット社の栄養機能食品で、1本で280kcal(220mL)です。少ない量で効率よく高エネルギーを補給することが可能です。
またたんぱく質を14.6g摂取でき、1.8gものオメガ3脂肪酸(EPA 1.0g、DHA 0.8g)がとれます。
【ケース販売】プロシュアバナナ味 ボトルタイプ 220ml×24本
ちなみに、このプロシュアですが、抗がん剤治療(術後補助または緩和的化学療法)を受けている消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん、胆道がん、膵臓がん)患者128人を対象とした臨床研究において、炎症を抑え、骨格筋量および除脂肪体重を増加させ、最終的に生存率を高める効果がみられたと報告されています。
■ メイバランス
病院でもよく出てくる栄養補助食品がメイバランス(明治)です。このメイバランスMiniカップ1本で200kal(125ml)で、たんぱく質を7.5g含んでいます。いろいろな味があるので試してみるのもいいでしょう。
■ テルミール ミニ
こちらもよく病院食についてくる、栄養機能食品のテルミール ミニです。
1本125mLで200kcal(たんぱく質7.3g)で、4種類の味(コーヒー、バナナ、麦茶、コーンスープ)があります。
■ クリミール
こちらの森永乳業のクリミールも人気があります。
クリミールも1本(125ml)で200kcal、たんぱく質7.5gを含み、さらに味覚を正常に保つために必要な亜鉛(1.4mg)や赤血球の形成を助ける作用のある銅(0.14mg)などのミネラルも豊富に含んでいます。
ヨーグルト味、いちご味、コーヒー味、バナナ味、コーンスープ味、ミルクティー味、みかん味、くり味など、味が多彩で飽きがこないのがいいですね。
4.運動をする(レジスタンス運動)
体重を維持するためには、分解がすすむ分、新たに筋肉をつけないといけません。このためには筋肉に負荷をかける運動(レジスタンス運動)が必要です。
■ ダンベル運動
軽めのダンベルを手に持って、反動を使わずに10~20回程度左右に開閉したり、上げ下げしましょう。
■ 屈伸運動(スクワット)
軽く肩幅程度に足を開いて、呼吸を止めずにゆっくり行います。
膝を深く曲げた方が負荷がかかるため、慣れないうちは浅く曲げるところから始めましょう。
10~20回が目安です。
■ 足上げ(もも上げ)運動
肩幅に足を開いて立ち、片足ずつゆっくり上げ下げします。ももを上げるときに息を吐きましょう。左右とも10~20回が目安です
腹筋も同時に鍛えることができます。
また椅子に座ったまま、足を浮かせてキープする方法でも行うことができます。
オフィスや、自宅でテレビを見ているときなどにもオススメです。
■ 壁腕立て伏せ
通常の床に手をついて行う腕立て伏せがきついと思う方にオススメ。
壁やベンチの背もたれなどに手をついて、二の腕を意識しながらゆっくり行います。最低20回を目標にしましょう。
以上のうち、自分ができるものを組み合わせ(例えばダンベル運動+スクワットなど)、毎日10分程度でいいので続けてみましょう。
5.プロテイン・サプリメントを利用する
体重を維持するために必要なサプリメントを紹介します。
■ ホエイプロテイン
食事からのたんぱく質が足りない分をホエイプロテイン(乳清たんぱく質)で補いましょう。特に、筋肉の合成や維持に必要な、グルタミンやHMB(必須アミノ酸の1つロイシンの代謝物)が入ったものがベストです。
グルタミンとHMB、さらにアルギニン・シトルリンが入ったハイスペックなホエイプロテインはこちらです。
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1食(34g)あたりタンパク質が27g(+HMB 1,500mg)も摂れます。
フレイバーも、ヨーグルト風味にくわえて、フルーツミックスとチョコレート風味があります。
わたしの場合、毎朝ヨーグルト風味を飲んでます。
このスプーン1杯で34g(タンパク質が27g)です!
普通にコップで牛乳に溶かしても大丈夫ですが、わたしはブレンダーボトルでよくかき混ぜてから飲んでいます。
ちなみに、豆乳がよく合います。
筋肉(体重)を維持するための最強のプロテインだと思います!
■ HMB(3-ヒドロキシイソ吉草酸)
HMBとは3-ヒドロキシイソ吉草酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate)の略で、必須アミノ酸の「ロイシン」の代謝物のことです。最近、このHMBが筋肉の分解を防ぐサプリメントとして注目を集めています。
実際に、HMBは人での臨床試験でカヘキシアやサルコペニアを改善することが示されており、筋肉を維持して体重減少を防ぐために有効なサプリメントといえます。
わたしが実際に飲んでみて、オススメするのはこの2つです。
スポーツ関連で多数の研究に使用された実績のあるMetabolic Technologies社のHMBカルシウムを使用しています。
まるでガムのボトルのようです(笑)。
カプセルタイプです。
1日8粒で、2,000mgのHMBカルシウムを摂取できます!
次におすすめは、こちらの協和食研 HMBタブレット 360粒です!
袋に入ってます。
こちらはタブレットです。どちらも飲みやすいですね。
国産の原料を使用しており、1粒に250mgのHMBカルシウムを含んでいます。
1日8粒(推奨摂取量は6~12粒)で2,000mgとなります。
こちらの方が若干、コストパフォーマンスがいいようです。あとは、「カプセルとタブレット(錠剤)タイプのどちらが好きか」で選んでもらえればよいと思います。
筋肉を維持するためにとても効果がありますので、おすすめのサプリメントです。
■ オメガ3脂肪酸(とくにEPA)
オメガ3脂肪酸は体で合成されない必須脂肪酸の一種で、αリノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのことです。
オメガ3脂肪酸(特にEPA)は炎症を抑え、筋肉の分解を防ぎ、カヘキシアの治療にも有効である可能性が示されています。
じっさいに最近の報告では、オメガ3脂肪酸が進行膵臓がん患者の体重を増加させ、カヘキシアの改善をもたらすことが明らかとなりました。
このようにオメガ3脂肪酸(EPA)は体重維持に有効なサプリメントとして期待されています。
以上です。
がん治療の土台となるのは免疫力ですが、体重が減少し、カヘキシアの状態におちいると免疫力も低下してきます。
体重を維持・増加させ、しっかりと治療の土台となるからだをつくりましょう!
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