膵臓がんの新たな腫瘍マーカー CEMIP(KIAA1199)とは?CA19-9との併用で診断率アップ
膵臓がん治療における最大の問題点は、診断時におよそ70~80%の患者さんが切除不能の進行がん(局所進行または転移性)であるという事実です。
つまり、早期に発見されるケースがきわめて少ないということです。
現在、膵臓がんを発見するための確立されたスクリーニング検査(膵臓がん検診)はありません。この原因として、前立腺がんのPSAのように、膵臓がんのクリーニングに適した血液や尿中のマーカーが存在しないことがあげられます。
現在、膵臓がんの診断や治療効果判定に最もよく使われている腫瘍マーカーはCA19-9ですが、その感度と特異度は低く、スクリーニングには適していません。
今回、新たなバイオマーカーであるCEMIP(あるいはKIAA1199)が膵臓がんの診断率を大きく向上することが報告されました。
CEMIP(KIAA1199)とは?
我々の研究室では、膵臓がんにおけるヒアルロン酸の役割をテーマに研究をすすめてきました(詳しくは以下のページをご参照ください)。
これまでに、膵臓がんの組織(とくに間質というがん細胞のまわりの組織)にヒアルロン酸が大量にたまっていること。また、がん組織にたまったヒアルロン酸はがん細胞の悪性化をうながし、がんが浸潤(しんじゅん)・転移する手助けをしている可能性があることを報告してきました。
さらに、ヒアルロン酸は膵臓がんの新たな治療ターゲットとしても注目されています。
最近、CEMIP(別名KIAA1199またはHYBID)が、ヒアルロニダーゼとは独立したヒアルロン酸の強力な分解酵素であることが報告されました。
CEMIPは、大腸がんをはじめとするいくつかのがんで過剰に発現されていることが確認されています。我々は、膵臓がん組織におけるCEMIPの発現を調べた結果、膵臓がん細胞および組織において過剰に発現しており、また強く発現しているグループは予後不良であることを報告しました(Kogaら、Pancreatology 2017)。
また、膵臓がん細胞におけるCEMIPの機能解析を行い、CEMIPは低分子ヒアルロン酸の増加をともなって細胞の増殖、遊走、および浸潤能を亢進し、またがんの原因といわれている炎症によって誘導されることを明らかにしました(Kohiら、Oncotarget 2017)。
つまり、このCEMIPはヒアルロン酸を分解しながら膵臓がんの悪性化に深く関わっていることがわかってきました。
今回、海外からの研究によってCEMIPが膵臓がん診断の新たなバイオマーカーとして有用であることが報告されました。
CEMIPが膵臓がんの新たな診断マーカーに
研究者らは、324人の膵臓がん患者と49人の正常コントロール(健常者または良性疾患患者)から血液を採取し、CEMIPとCA19-9の濃度を調べました。
がんのステージとしては、ステージ1が1.2%、ステージ2が27.5%、ステージ3が18.8%、ステージ4が52.5%でした。
結果を示します。
以上の結果より、従来の血液中のCA19-9にCEMIPを併用することで、比較的早期のステージを含む膵臓がんの診断率(正診率)を向上することができ、とくにCA19-9が陰性の膵臓がん患者において補完的なマーカーとして有用であると結論づけています。
今後、より大規模な臨床試験でのさらなる評価は必要ですが、CEMIP(KIAA1199)は膵臓がんの新たな診断マーカー(腫瘍マーカー)となる可能性があります。
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