膵臓がんの脳転移:症状、診断・治療・余命および特徴的な遺伝子異常とは?
膵臓がん(膵癌)の転移は、おもに肝臓、リンパ節、腹膜、あるいは肺に多くみられます。
一方、膵臓がんの脳への転移(転移性 脳腫瘍)は比較的まれで、1%に満たないと報告されています。
わたしも多くの膵臓がん患者さんを診てきましたが、脳転移の経験はありません。
これは、膵臓がんの悪性度が高くて予後が悪いため、脳転移がおこって症状がでるまで生存できない(他の臓器への転移によって死亡する)ことが原因ではないかと考えられています。
では、実際には膵臓がんの脳転移はどのくらいの頻度でみられ、また症状や予後はどのようなものなのでしょうか?
今回、膵臓がんの脳転移について、その臨床的特徴(症状、診断、治療、予後)と遺伝子解析の結果が海外から報告されました。
膵臓がんの脳転移
Brain Metastases in Pancreatic Ductal Adenocarcinoma: Assessment of Molecular Genotype-Phenotype Features-An Entity With an Increasing Incidence? Clin Colorectal Cancer. 2018 Feb 7. pii: S1533-0028(17)30290-6. doi: 10.1016/j.clcc.2018.01.009. [Epub ahead of print]
【対象と方法】
2000年から2016年までの間に、米国ニューヨークのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの患者データについて、後ろ向きに調査しました。
脳転移をみとめる膵臓がん患者について、その臨床的特徴(年齢、性別、症状、治療法、予後)を調べ、がん(原発巣あるいは転移巣)の組織が入手可能な症例では遺伝子変異について解析しました。
【結果】
臨床的特徴
■ 膵臓がん患者5824人のうち、25人(0.4%)に脳転移が認められました。
■ 男性15人(60%)、女性10人(40%)であり、年齢の中央値は58歳(44~79歳)でした。
■ 発見(脳の画像検査)のきっかけとなった症状は、頭痛(36%)が最も多く、その他としては顔面あるいは手足の筋力低下(16%)、視力異常(12%)、運動失調(8%)、およびけいれん(8%)でした。
■ 脳転移の診断時、すでに肝転移が17人(68%)、肺転移が13人(52%)、および腹膜播種が5人(20%)に存在していました。
■ 治療は、ほぼ全例で抗がん剤治療が行われており、4例(17%)に開頭手術、15例(63%)に放射線治療(全脳照射あるいは定位的照射)が行われていました。
■ 全患者の生存期間(中央値)は1.5ヶ月(1~31ヶ月)でした。
■ 開頭手術を受けた4例では生存期間(中央値)は11ヶ月であり、うち2例では21ヶ月と31ヶ月の長期生存が得られていました。
遺伝子異常
■ 25人中6人で生殖細胞変異(生まれつきの先天的遺伝子異常)の検索を行うことができ、3人にBRCA変異(BRCA1が2例、BRCA2が1例)が認められました。
■ 体細胞変異(後天的な遺伝子異常)の解析が行えた7例では、全例(100%)にKRAS変異を認めました。
【結論】
膵臓がんの脳転移は比較的まれな病態(1%以下)であり、BRCA遺伝子の生殖細胞変異との関連が示唆されました。
生存期間(中央値)は1.5ヶ月と予後はきわめて悪いが、開頭手術や放射線による集学的治療によって長期生存が得られる可能性もあります。
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