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がん患者さんにみられるむくみ(リンパ浮腫)の原因と予防・治療について

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がん患者さんにみられる症状として、むくみ(浮腫)があります。これは、リンパ液や血液の流れ(戻り)が悪くなり、全身または局所の組織に水が貯まった状態です。

栄養失調や臓器の機能障害で全身性にむくみが出現する場合もありますし、手術などの治療後に手や足がむくむ場合(リンパ浮腫)もあり、その原因はさまざまです。

むくみがひどくなると手や足がパンパンに腫れて日常生活に支障をきたします。また、感染を合併すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)というひどい炎症をおこすこともあります。

むくみは軽視されがちですが、がん患者さんの生活の質(クオリティオブライフ)を低下させる原因となります。

そこで、今回はがん患者さんにみられるむくみの原因と予防・治療について解説します。

がん患者さんにみられるむくみ(浮腫)の原因

がん患者さんにみられるむくみ(浮腫)の原因はさまざまです。また、はっきりとした原因がわからないこともあります。

以下に、代表的なむくみ(浮腫)の原因をあげてみます。

栄養障害(低アルブミン血症)や貧血

がん患者さんでは栄養障害貧血をともなうことが多いのですが、これらは全身性の浮腫の原因となります。

とくに、タンパク質の一種であるアルブミンの不足により、浮腫が生じるケースがよくあります。

臓器機能障害(心不全、腎不全、肝硬変)

心臓、腎臓、あるいは肝臓の機能が低下した場合に、全身に浮腫がみられることがあります。

心不全では、全身の血液が心臓に戻りにくくなるためにむくみがおこりますが、その他の症状として動悸や息切れ、呼吸困難が出現することがあります。

腎臓や肝臓の機能低下では、やはりアルブミンが低下して浮腫の原因となります。

治療の後遺症(リンパ浮腫)

乳がん、子宮がん、前立腺がんなどで腋窩(わき)やそけい部(足の付け根)のリンパ節を切除したり、放射線治療をうけた場合に後遺症としてみられることがあります。

これはリンパ液の流れ(戻り)が悪くなり、手足にリンパ液がたまることでおこります。

抗がん剤の副作用

抗がん剤の副作用で浮腫がおこることがあります。

とくに乳がんに使われるタキサン系薬剤(タキソテール)で浮腫がおこることが多いとされます。

がんの進行によるもの

がんが進行し、腹膜播種(ふくまくはしゅ)や広い範囲でリンパ節転移をおこした場合などに、局所(とくに下半身)の浮腫がみられることがあります。

いわゆるがんの末期では、腹水や胸水とともに浮腫が出現し、徐々に悪化していきます。

むくみ(浮腫)の予防・治療法

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栄養状態・貧血の改善

栄養状態を改善し、タンパク質をしっかりとることで、浮腫が軽くなることがあります。

鉄欠乏性貧血がある場合には、鉄分が豊富に含まれている食べ物や鉄剤の補充を行います。

またカリウムを豊富に含む果物(バナナ、アボカドなど)や野菜(パセリ、ほうれん草など)をとることで、尿を増やし、浮腫を予防することもできます(ただし腎機能の悪い人はカリウム制限が必要になることがありますので注意してください)。

利尿剤(りにょうざい)

ラシックスやアルダクトンといった利尿剤(尿をたくさんでるようにする薬)を使うこともあります。

主治医と薬の治療について相談してください。

マッサージ

強くもむのではなく、末梢(手足のさき)から中心(心臓側)にむかって、なでるようにマッサージします。とくにぬるめのお湯につかってリラックスしておこなうとよいでしょう。

また、病院などで専門的なリハビリテーションやリンパマッサージ(リンパドレナージ)を受けることができます。

軽い運動

手足を使った軽い運動は、むくみを予防したり、治療に有効です。きつくない程度のウォーキング(とくに水中ウォーキング)などが適しています。

また、足がむくんでいるときは長い時間歩いたり、立ったままでいることは避けましょう。

患肢(むくんだ手足)の挙上

むくんだ手足を上にあげることで浮腫を予防または治療できます。

たとえば休むときは足の下にまくらや座布団などを入れ、できるだけ足を高くしましょう。

ストッキング

弾性ストッキングをはくことで足の浮腫が軽快することがあります。

医療用の弾性ストッキングについては病院で主治医または看護師に相談してください。

また、アマゾンなどで購入することも可能です↓

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以上です。

まとめ

がん患者さんにみられる浮腫にはさまざまな原因があります。

「むくみが気になる」あるいは「急に体重が増えたな」と思った場合には、遠慮せずに主治医に相談しましょう。

浮腫は心不全といった重大な病気の症状のことがありますし、がんの進行のサインのこともあります。

日常生活においては、タンパク質をしっかり摂り、同時に尿の量を確保すること、また局所的なむくみの場合には患部を高くすることを心がけてください。

これらの対策でむくみを予防あるいは軽減することが可能です。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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