ビタミンDの低下は乳癌の死亡率を高める:乳がんサバイバーにおける調査結果

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ビタミンDは脂溶性ビタミンで、カルシウムの吸収と骨の正常な成長を促す以外にも細胞成長、神経筋機能、免疫機能の調節、炎症の抑制効果など様々な役目を果たしています。

ビタミンDの不足と乳がんとの関係は以前から指摘されていましたが、たくさんの患者さんを追跡調査した、いわゆる前向き研究による裏付けはありませんでした。

今回、大規模な前向き研究において「血清ビタミンDの濃度は乳がんの予後(生存期間)と関係する」という結果がアメリカの一流腫瘍学雑誌JAMA Oncologyに報告されました。

血清ビタミンDの濃度は乳がんの予後と関係:パスウェイスタディにおけるケースコホート解析

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パスウェイスタディ(Pathway Study)という、アメリカの乳がんサバイバーが参加している大規模な前向きコホート研究グループのうち、最終的には9820名中4505名(46%;平均年齢58.7歳)がこの試験に参加しました。

これらの乳がんサバイバーについて、がんの診断時に血中ビタミンDのマーカーである25-hydroxyvitamin D (25OHD)を測定しました。

そして、12、24、48、72、96ヶ月(8年)後の予後(がんの再発やがんによる死亡など)や健康状態について追跡調査しました。

この血清25OHDの値と、乳がんの進行(再発)具合および予後(生存期間)について検討しました。

Association of Serum Level of Vitamin D at Diagnosis With Breast Cancer Survival: A Case-Cohort Analysis in the Pathways Study.(診断時の血清ビタミンDレベルと乳がん生存率との関係:パスウェイスタディにおける症例コホート解析JAMA Oncol. 2016 Nov 10. doi: 10.1001/jamaoncol.2016.4188. [Epub ahead of print]

その結果、次のことが明らかとなりました。

●血清25OHD(ビタミンD)濃度は、進行癌で低く、特にトリプルネガティブ乳がん(エストロゲン、プロゲステロン、HER2(ハーツー)に対する受容体がない予後不良な乳がん)で最も低かった

●血清25OHD濃度は、疾患進行および死亡と逆相関していた(つまり低いと疾患進行や死亡率が高い)。

●血清25OHDが最も低いグループでは、最も高いグループと比較して有意に全生存期間(OS)が短かった。

閉経前の女性では、特に血清25OHDと全生存期間との関係が強く、乳がんによる死亡率との関係も見られた。

これらの結果より、(特に閉経前の乳がん患者において)血清25OHD(ビタミンD)濃度は乳がんの進行度や予後(生存期間)と関係していることが示されました。

ビタミンDが乳がんの発症や死亡率をさげることを証明する初めての大規模な前向き試験です。

ビタミンDの不足を防ぐには?

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ビタミンDは乳がんだけでなく、大腸がんや前立腺がんなどの予防にも関与していることが分っています

では、ビタミンDが不足しないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか?

厚労省の「統合医療」情報発信サイトによると、

天然食材のみから十分なビタミンDを得ることは難しい。多くの人にとって、ビタミンD強化食品を摂取すること、また、おそらく幾分かの日光に浴することも、健康的な体内ビタミンD濃度を維持するために不可欠である。人口集団によっては、1日当たりのビタミンD所要量を満たすためにはサプリメントの摂取が欠かせない

とされています。

つまり、天然食材からだけでは難しいので、ビタミンD強化食品を食べるかサプリメントで補い、さらに日光浴も必要、とのことです。

ちなみにビタミンDを豊富に含む食品には以下のものがあります。

ビタミンD源となる食品群

ビタミンDを含む食品は極めて少ないのですが、脂肪性の魚(サケ、マグロ、サバなど)の身や魚肝油が最もビタミンDを多く含みます。

また牛レバー、チーズ、卵黄にも少量のビタミンDが含まれています。

参考までに、ビタミンD源となる食品群を挙げてみます。

食品 一食当たりのIU* パーセントDV**
タラ肝油、大さじ1 1,360 340
メカジキ、加熱済、90 ml 566 142
サケ(紅鮭)、加熱済、90 ml 447 112
マグロ、水煮缶詰、水抜後、90 ml 154 39
ビタミンD強化オレンジジュース、1カップ
(ビタミンDの添加量はそれぞれ異なるため、
製品ラベルを確認すること)
137 34
無脂肪乳、低脂肪乳、成分無調整乳、ビタミンD強化、1カップ 115~124 29~31
ヨーグルト、DVの20%を強化、6オンス
(強化度が高いヨーグルトのパーセントDVは右記よりも高くなる)
80 20
強化マーガリン、大さじ1 60 15
イワシ、オイル漬缶詰、オイル抜後、2尾 46 12
牛レバー、加熱済、90 ml 42 11
インスタントシリアル、DVの10%を強化、0.75~1カップ
(強化度が高いシリアルのパーセントDVは右記よりも高くなる可能性がある)
40 10
スイスチーズ、1オンス 6 2

*IU = 国際単位、**DV = 1日摂取量。「統合医療」情報発信サイトより引用

ビタミンD過剰摂取の危険性

一方で、ビタミンDを過剰摂取した場合には、食欲不振、体重減少、多尿、心臓不整脈などの非特異的症状を引き起こす場合があるそうです。

より深刻な場合には、カルシウムの血中濃度を上昇させ、血管や組織の石灰化を招き、その結果、心臓、血管、腎臓を傷害するので注意が必要です。参考までにビタミンDの許容上限摂取量をのせておきます。

ビタミンDの許容上限摂取量(UL)
年齢 男性 女性 妊娠期 授乳期
0~6カ月 1,000IU 1,000 IU
(25 µg) (25 µg)
7~12カ月 1,500 IU 1,500 IU
(38 µg) (38 µg)
1~3歳 2,500 IU 2,500 IU
(63 µg) (63 µg)
4~8歳 3,000 IU 3,000 IU
(75 µg) (75 µg)
9歳以上 4,000 IU 4,000 IU 4,000 IU (100 µg) 4,000 IU
(100 µg) (100 µg) (100 µg)

「統合医療」情報発信サイトより引用

大人の場合、1日4,000 IU(100 µg)が上限とされています

 


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