がんの予防 サプリメント

がん治療にサプリメント(健康食品)は必要か?医師おすすめ厳選5種

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がん患者さんからよく聞かれるのは、「がんに効くサプリメント(健康食品)はありますか?」、あるいは「飲むのならどんなサプリメントがいいか?」という質問です。

結論から言うと、「ある特定のサプリメントだけでがんが治る(消える)」という、しっかりとしたエビデンス(科学的根拠)はありません。

つまり、がん患者さんを対象とした大規模なランダム化比較試験で、その有効性(生存期間延長など)が証明されているサプリメントはないのです(そのようなサプリメントがあったら、すでに標準治療になっているでしょう)。

ただ、だからといって、サプリメントを完全否定するのもナンセンスだと思います。

なぜならば、サプリメントの中には、「体力の低下や栄養状態の悪化を防ぐ」、「免疫力を維持または高める」、「抗がん剤などがん治療の副作用を軽くする」、あるいは「(細胞や動物実験において)がん治療の効果を高める」といった、がん患者さんにとってメリットとなる効果が期待できるものがあるからです

そこで、私は以下の条件付きで、がん患者さんにサプリメントをおすすめしています。

  • まずは食事を見直すこと(サプリは、あくまで食事からの栄養をおぎなうものです)
  • 高額なサプリメントにだまされない(値段が高いサプリは、悪質な「がんビジネス」の可能性あり)
  • 飲むなら信じて続けること(せっかく飲むのなら、「効く」と思って続けてください)
  • からだに合わないと思ったら、すぐに中止して主治医に相談を!

では、具体的にはどんなサプリメントがよいのでしょうか?

がんとサプリメントの関係について英語論文を中心に調査した結果をもとに、がん治療をサポートする作用が期待できるサプリメントを5つ紹介します。

おすすめのサプリメント5種

(注意)以下のサプリメント(商品)自体のがんに対する効果についてのデータや報告はありません。ご購入・ご利用に際しては自己責任でお願いします。

1.マルチビタミン+ミネラル

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全身の代謝や栄養素のエネルギー変換機能を正常に保つためには、すべてのビタミンをバランスよく摂取することが大切です。

ところが、多くの人は食事から十分なビタミン類を摂取できていません。特に食事が十分とれないとき、あるいは消化吸収力が低下している場合、どうしてもビタミンやミネラルが不足してきます。

したがって、マルチビタミン(+ミネラル)は、すべてのがん患者さんにおすすめの基本のサプリメントです。

ビタミンでがんが治るわけではありませんが、がんの予防に有効であったというエビデンスがあります。

リンチ症候群という、がんの発症リスクが高まる遺伝性疾患の患者さん1966人を対象とした臨床研究において、3年間以上にわたってマルチビタミンを摂取していた人は、大腸がんを発症するリスクが50%以上も減少していたとのことです。

また、とくにビタミンCEには抗酸化作用があり、がん治療にともなう臓器障害・副作用を軽減する効果が期待できます。

実際に、マルチビタミンによって抗がん剤の副作用である末梢神経障害(手足のしびれ)が軽くなったという臨床研究があります。

また、ビタミンDは、がんの発症や進行を抑えることがわかっており、ビタミンDのサプリメント(1,200 IU/日)によって肺がん患者の生存率が改善したことが日本の臨床研究(ランダム化比較試験)で示されました。

したがって、マルチビタミン+ミネラルは、できれば長期にわたって摂取しましょう。

注意

一部のビタミンの摂取によって、抗がん剤の治療効果が低下したり、がんの転移が促進されたというデータもあります。

たとえば、抗がん剤治療を受けた乳がん患者さんを対象とした臨床試験において、ビタミンB12のサプリメントを治療前+治療中にとっていた人では、再発のリスクが80%、死亡のリスクが2倍に増加していました(マルチビタミンの摂取は、再発・死亡率との関連を認めませんでした)。

したがって、抗がん剤治療を受ける患者さんは、飲んでいるサプリメントについて、主治医とよく相談してください。

2.EPA(エイコサペンタエン酸)

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EPA(エイコサペンタエン酸)オメガ3脂肪酸に分類される成分で、私たちの健康に欠かせない必須脂肪酸とも呼ばれています。

がんと炎症は密接に関係しています。つまり、がんは炎症によって発生し、炎症によって進行するのです。

EPAは、炎症にともなって放出されるがん促進因子のひとつであるアラキドン酸の合成を抑える働きがあり、炎症を抑えることによってがんの増殖や転移を阻害する効果があります。

細胞や動物実験のレベルでは、EPAはがんの発生や増殖・転移を抑えることが多くの研究で報告されています。

また、実際のランダム化比較試験において、サプリメントとしてのEPAの投与は、大腸がん肝転移の患者さんの生存期間を延長することが示されています↓

このようにEPAには強い抗炎症作用があり、臨床試験をふくむ多くの研究においてがんに対する予防・治療効果が確認されています。

3.クルクミン(ウコン)

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「ウコンががんにいいの?二日酔いでしょ?」という方、まずはこちらの記事をどうぞ。

ウコン(ターメリック)に含まれる黄色のポリフェノール化合物であるクルクミンは、以下のさまざまな作用機序によってがんを抑制することが報告されています。

  • 抗酸化・抗炎症作用
  • がん細胞の増殖シグナルを阻害する作用
  • がん細胞に対する細胞死(アポトーシス)の導入作用
  • 血管新生(がんの成長に不可欠な、新たな血管を引き寄せる作用)の阻害
  • がんの進行を手助けする周囲の間質(かんしつ)細胞への抑制作用
  • がん免疫のブレーキとなる制御性T細胞を減少させ、一方がん攻撃の司令塔となるTh1細胞を増加させる作用

さらに、クルクミンは、実際の臨床試験においてもその抗腫瘍効果が確認されています

たとえば、膵癌(すい臓がん)患者を対象とした、クルクミン単独治療による臨床試験では、クルクミンの血中濃度が低かったにもかかわらず、2人に効果がみられ、肝臓への転移病変が著明に縮小した症例が報告されています(下図)

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Dhillon N., et al. Clin Cancer Res. 2008;14:4491-9.より引用

このようにクルクミンは、細胞や動物実験だけではなく、人での臨床研究で効果が確認されている数少ない抗がんサプリメントです

4.スルフォラファン

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多くの疫学研究により、アブラナ科の野菜を多く食べる人は、がんになりにくいことが分かっています。この理由の1つに、アブラナ科野菜にふくまれる化学成分(ファイトケミカル)であるスルフォラファンのがん予防効果が考えられています。

スルフォラファンには、強力な解毒作用、抗酸化作用、および抗炎症作用があり、がんに対する予防・治療効果があることが証明されています。

実際に、多くの細胞や動物実験により、スルフォラファンは、肺がん、乳がん、膵臓がんなどの増殖を抑制することが示されています。

とくに、スルフォラファンは、抗がん剤が効きにくいがんの親玉である「がん幹細胞(かんさいぼう)」を殺すことで、トリプルネガティブ乳がんに対する抗がん剤治療の効果を高めという報告があります(Cancer Lett. 2017 May 28;394:52-64)。

また、マウスの白血病モデルにおいて、スルフォラファンはマクロファージやナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性を高めることで、がんに対する免疫反応を改善すると報告されています(Mol Med Rep. 2016 May;13(5):4023-9)。

スルフォラファンをとるには、ブロッコリーやブロッコリースプラウトがいいようです。最近では、野菜コーナーでよく見かけるようになりました。

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5.ホエイプロテイン

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これは、正確にはサプリメントと言えるかどうか分かりませんが、がん患者さんにはプロテインをおすすめしています

がん患者さんでは筋肉量や筋力の低下によるサルコペニア(いわゆる筋肉やせ)がみられ、生存期間が短くなる原因となっています。

筋肉量の減少を防ぐには、少なくとも毎食良質なたんぱく質を 25~30 g 程度摂取しなければなりませんが、食事だけからこれだけの良質なタンパク質を摂取することは困難です。

そこで、良質のタンパク質を手軽にとれるホエイプロテイン(乳清たんぱく質)をおすすめします

最近報告されたランダム化比較試験によると、ホエイプロテインによってがん患者さんの栄養状態と免疫力(免疫グロブリン濃度など)が改善されることが証明されました

ホエイプロテインは、ザバス、ビーレジェンド、DNSなど色々なところから発売されていますが、特に筋肉の合成や維持に必要なグルタミンやHMB(必須アミノ酸の1つロイシンの代謝物)が入ったものがベストです。

がん患者さんがサプリメントを摂るときの注意点

サプリメントに依存しない

サプリメントは、あくまで食事から得られる栄養(あるいは食事ではなかなか摂れない成分)を補う目的です。「サプリメントを飲んでるから、食事はとらなくても大丈夫」では本末転倒です。可能な限り食事からの摂取を考えるべきです。

また、サプリメントや健康食品だけでがんが治ることは(ごくまれに報告例はありますが)まず期待できません。

したがって、サプリメントに依存するのではなく、セルフケアのひとつとして上手に利用することが大切です

過剰に摂取しない

サプリメントには適正な量というのがあります。たとえ体に必要な成分であっても、取り過ぎると逆に体に悪い響を及ぼすことがあります。

1日の摂取目安量を確認し、過剰に摂取することは避けましょう

治療中の場合には主治医に確認する

がんの治療(特に抗がん剤治療)を受けている患者さんがサプリメントを始める場合、できれば主治医に確認しましょう

体質に合わない場合もある

一般的に、市販されているサプリメントは医薬品ではなく、食品に分類されます。したがって、医薬品にみられる重大な有害事象(副作用)の心配はほとんどありません。

ただし、ある種のサプリメントは吐き気、下痢や便秘など軽度の消化管症状を引き起こす可能性もありますし、(他の食品と同様に)アレルギー反応の報告もあります。

体質に合わないと感じたら直ちに中止し、症状が続く場合には医療機関の受診をおすすめします。

まとめ

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がん患者さん(がんサバイバーの人)にとってもらいたい5つのサプリメントと、期待される効果を以下にまとめてみます。どれも、がんを克服する上で欠かせない作用です。

1.マルチビタミン → 抗酸化作用
2.EPA → 抗炎症作用
3.クルクミン → 血管新生阻害、抗炎症作用、がん幹細胞攻撃
4.スルフォラファン → 解毒・抗酸化作用
5.ホエイプロテイン → 筋肉(筋力)維持、サルコペニア予防

 

どのサプリメントがよいのか迷っている場合、まずはこの5つの基本のサプリメントを試してみてください!

追記

より新しいデータに基づいた、医師が独断で選ぶ「サプリメント10種」についてはこちらの記事をご覧ください↓

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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