大腸がん 食事療法

抗がん剤治療中の食事の重要性:栄養サポートによって生存率が改善

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抗がん剤治療には筋肉が必要です。

多くの研究によると、抗がん剤治療をはじめる前および抗がん剤治療中の筋肉量の減少は、予後不良(生存期間の短縮など)と関連していることが明らかとなってきました。

したがって、抗がん剤治療をうけるがん患者さんは、筋肉量を維持する必要があります。

今回、転移性大腸がん患者を対象として、栄養サポート(栄養士によるカウンセリング)が筋肉量と治療成績におよぼす影響を調査したランダム化比較試験の結果が報告されました。

その結果、栄養サポートを受けたグループでは、生存率が改善していました

やはり、抗がん剤治療中の食事などによる栄養サポート(および運動)はとても大切であることがあらためて確認されました。

抗がん剤治療中における筋肉量減少と予後(生存期間)との関係

抗がん剤治療中には、筋肉量の減少がおこることが多いといわれています。

これは、食欲の低下によって食事量(特にタンパク質の摂取量)が減ったり、疲労感などから活動性(運動量)が低下したり、あるいは代謝異常などが原因であると考えられています。

この筋肉量の減少は、予後不良(生存率の低下)のサインであるという研究報告がいくつかあります。

たとえば、転移性大腸がん患者を対象とした研究は、抗がん剤治療中の筋肉量の減少が高度(9%以上)であったグループでは、それ以外(9%未満)のグループに比べて有意に予後不良でした(6ヶ月目の生存率が33%対69%、1年目の生存率が17%対49%, P = 0.001)(下図)。

筋肉量減少 転移性大腸がん 予後

この他にも、多くの種類のがんにおいて、抗がん剤治療前あるいは治療中の筋肉量の減少と予後不良との関係が示されています。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

抗がん剤治療における栄養カウンセリングの効果:転移性大腸がん患者におけるランダム化比較試験

The effect of nutritional counseling on muscle mass and treatment outcome in patients with metastatic colorectal cancer undergoing chemotherapy: A randomized controlled trial.  2020 Jan 29. pii: S0261-5614(20)30029-7. doi: 10.1016/j.clnu.2020.01.009. [Epub ahead of print]

この研究では、CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)やFOLFOX(5-FU+オキサリプラチン)などの化学療法を予定した107人の転移を認める大腸がん患者(平均年齢65歳)を対象として、栄養士による栄養カウンセリングを受けるグループ(以下、栄養サポート群)通常のケア(コントロール群)にランダムに割り付けました。

栄養サポート群では、十分なタンパク質とカロリーをとることを目的として、食事指導を行いました。

タンパク質は、体重あたり1.2グラム(体重50キロの人では60グラム)以上、1回の食事で25グラム以上を摂取することを目標としました。

この目標の到達率が75%未満であったり、体重減少がある患者では、経口の補助栄養食品を追加しました。

それでも栄養摂取量が足りない場合には、適応を十分に検討した上で、チューブによる栄養補助が行われました。

また、栄養士は、患者さんに運動をすること(ウォーキング、サイクリング、スイミングなどの中等度の運動を毎日30分以上、1週間に5日間)を推奨しました

一方で、コントロール群では、通常のケア(厳格なゴールなし、必要に応じて経口栄養補助食品も処方)を受けました。

結果を示します。

■ 2つのグループ間で、筋肉量の変化および筋肉量が減った患者の割合に差は認められませんでしたが、体重増加率は、栄養サポート群でコントロール群と比べて高いという結果でした。

■ 生存率に関しては、栄養サポート群でコントロール群と比べ、無再発生存率(P = 0.039)および全生存率(P = 0.046)において、有意に良好でした(下図)

以上の結果より、化学療法をうける転移性大腸がん患者において、栄養士によるカウンセリング(栄養サポート+運動)によって、体重増加および生存期間の延長効果が期待できると結論づけています。

さらなる臨床試験が必要であると考えられますが、ランダム化比較試験でこのような結果が得られたことは評価できると思います。

まとめ

今回、大腸がん患者を対象としたランダム化比較試験において、栄養サポート(タンパク質とカロリー強化)と運動によって予後が改善する可能性が示されました。

抗がん剤治療前および治療中には、できるだけタンパク質を中心とした食事摂取(および運動)をこころがけましょう。

理想的には、この研究のプロトコールにあるように、体重あたり1.2グラム(体重50キロの人では60グラム)以上、1回の食事で25グラム以上のタンパク質の摂取を目標にしましょう。

食欲がない人や食事摂取量が少ない人では、栄養補助食品(プロシュア、インパクトなど)も検討すべきだと思います。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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