無症状の膵臓がんは予後がいいのか?研究報告と尾道方式がもたらした重要なヒント
膵臓がんは、早期には症状が乏しいことより、多くの患者さんは切除不能の進行した状態で診断されます。
ただ最近では、症状のない段階で膵臓がんと診断される患者さんが増えているように思います。これは、1つには膵臓がんの危険因子(家族歴、糖尿病の新規診断や悪化、膵囊胞(のうほう)など)が医師や患者さんの間で広まり、早期受診のきっかけとなっていることが考えられます。
では実際に無症状の膵臓がんは予後が良いのでしょうか?また、無症状の膵臓がんを早期発見するためにはどうしたらよいのでしょうか?
日本からの研究結果を紹介します。
無症状の膵臓がんの臨床的特徴とは?
がん研有明病院の外科チームは、569人の膵臓がん患者(うち250人が外科切除、319人が切除不能)について症状と長期予後との関係を調査しました。
結果を示します。
以上の結果より、無症状の膵臓がんはステージが比較的早期であり、切除率が高く、このため予後が良いことが示されました。
一刻も早く、無症状の早期膵臓がんを発見するためのスクリーニング検査の導入が待たれます。
膵臓がん早期発見にむけて:尾道での取り組み
はたして、無症状の膵臓がんを発見することはできるのでしょうか?
昨年、「尾道方式」と呼ばれる膵臓がんの早期発見の取り組みの結果が、JA尾道総合病院の花田先生によって報告されました。
この取り組みを始めてから膵臓がんの早期発見例が増え、5年生存率が全国平均の3倍(20%)にまで上昇したとのことです。
尾道方式は、JA尾道総合病院の花田敬士診療部長(消化器内科)が、尾道市医師会(宮野良隆会長)と連携し、2007年から始めた。
花田さんらが、市内の開業医に、膵臓がんのリスクが高まる危険因子として、「糖尿病」「肥満」「喫煙」「家族に膵臓がん患者がいる」などがあることを情報提供。
開業医は、こうした情報に該当する患者がいた場合、腹部に超音波を当てる検査で膵臓の画像を見て、がんの疑いがある場合はすぐにJA尾道総合病院を紹介する――という診断の基準を作った。同病院では、体内に内視鏡を入れるなどして、より精密な画像でがんの有無を調べた。
尾道市の人口は約14万5000人で、15年までの約8年半で市民ら約8400人を調べ、約430人で膵臓がんと確定診断した。
このうち5年生存率が約80%とされる大きさ1センチ以下のがんの「1期」が36人、超早期の「0期」が18人いた。同病院の膵臓がんの5年生存率は、以前はほぼゼロだったが、2009年に診断を受けた人のうち、手術などの治療で20%にまで改善。
この成果は学会などで注目され、大阪市北区や熊本市、鹿児島市などで同様の取り組みが始まっている。
読売オンラインより(一部改変)
元の記事を読む:膵臓がんを早期発見する「尾道方式」…5年生存率、全国推計の3倍
このように、膵臓がんを早期に発見するためには、危険因子がある人には腹部の超音波検査をはじめとした膵臓がんのスクリーニング検査を受けてもらい、少しでも疑いがある場合には専門施設で精密検査を受けてもらうことが重要です。
開業医と専門施設との連携も必要ですが、国民のみなさんにも膵臓がんの危険因子(下記)を広く知ってもらうことが大切です。
この尾道方式が全国に広まり、1人でも多くの膵臓がん患者さんが早期に発見されることを期待します。
膵臓がんの危険因子(どんな人が膵臓がんになりやすいか?)
膵臓がんの危険因子(なりやすい因子)として、以下のことが報告されています。
■糖尿病の人(とくに、最近発症した人)
■膵管内乳頭粘液性腫瘍(一般的にIPMNと呼ばれています)や、膵のうほうのある人
■慢性膵炎の人
■肥満体型の人
■喫煙習慣のある人
■大量飲酒の習慣のある人
上記の危険因子が複数個(2個以上)ある場合には、特に膵臓がんのリスクが増加します。当てはまる方は、かかりつけ医または専門機関(消化器内科あるいは消化器外科)の受診をおすすめします。
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