胃がんで死なないために:危険因子、症状、早期診断法、治療、予後(生存率)まとめ

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また一人、若くして胃がんで亡くなった芸能人のニュースが報道されました。

EXILE一族のダンス&ボーカルグループ「FANTASTICS」のパフォーマー、中尾翔太(なかお・しょうた)さん(22)が、7月6日午前7時23分、胃がんのため、東京都内の病院で死去したとのことです。

胃がんは全体的には高齢者に多い病気ですが、50歳未満の若い人にも発症します

胃がんは早期に診断できれば、予後(治療成績)が良いがんです。ただ、初期には症状がないことが多いため、進行して見つかる場合もあるのです。

今回、胃がんの危険因子、初期症状、早期診断するための方法、治療法、および予後についてまとめます

胃がんの危険因子(リスクファクター)

 

ヘリコバクター・ピロリに感染している人

ピロリ菌は胃に感染して炎症(慢性胃炎)を引き起こす細菌で、人口の約50%(50歳以上の人では約70%以上)の人が感染しているとされています。

ピロリ菌の感染は、胃がんの重要な危険因子であることが証明されています(ただし、ピロリ菌に感染した人の全員が胃がんになるわけではありません)。

また、ピロリ菌の除菌によって胃がんのリスクは大幅に減りますが、ゼロになるわけではありません。

塩分の多い食事をとっている人

漬け物など、多量の塩分をとる食生活をしている人に、胃がんが多く発症することが報告されています。

喫煙習慣のある人

たばこは肺がんのがんの危険因子として有名ですが、胃がんのリスクも高めることが報告されています。

胃がんの家族歴がある人

家族(父親、母親、兄弟、姉妹)に胃がんの人がいる場合、胃がんを発症する率が高くなるといわれています。

日本からの報告(Int J Cancer. 2002 Feb 10;97(5):688-94)では、胃がんの家族歴は男女とも対象者の約10%に認められ、胃がん家族歴のある人は、ない人に比べ、男性で1.6倍、女性では2.4倍胃がんで死亡しやすいとのことです。

胃がんの症状

胃がんの代表的な症状を以下にあげます。これらの症状がつづく場合、年齢にかかわらず速やかに胃腸科など専門の病院を受診されることをおすすめします。

  • 胃(みぞおち)の痛み、不快感
  • 胸やけ、げっぷ
  • 吐き気、嘔吐
  • 血便(タールのような黒っぽい便)
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 腹部膨満(おなかが張った状態)

これらは胃がんだけの特徴的な所見ではなく、他の消化管の病気(逆流性食道炎、胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍など)でもみられる症状です。

また、胃がんは、とくに初期には自覚症状がないことがあります。

胃がんの診断法(検診・検査について)

胃がんを発見・診断するベストの検査法は、胃内視鏡検査(いわゆる胃カメラ検査)です。とくに、比較的若い人に多いとされるスキルス胃がんはエックス線検査ではわからないこともあります。

上記のような胃がんを疑う症状がある場合、病院を受診して内視鏡検査を受けることをおすすめします。

無症状の人には、以下のような検診(検査法)があります。

胃がん検診

全国の市町村では、50歳以上を対象に胃がん検診(2年に1回)をおこなっています(下表)。

市町村のがん検診

ちなみに、2016年4月から、胃がん検診の方法として、従来の胃エックス線検査(バリウム透視検査)と胃内視鏡検査(いわゆる胃カメラ検査)のどちらかを選べるようになりました。

これを受け、胃エックス線検査にかわり、胃内視鏡検査を行う市町村が増えましたが、現時点ではすべての自治体で内視鏡検査が可能なわけではありません。

また胃がん検診の対象者は50歳以上(エックス線検査は40歳以上)ですが、専門家によると、「40歳を過ぎたら1年に1回の定期検査が望ましい」という意見もあります。

胃がんリスク検診(ABC検診)

最近では、採血によって胃がんのリスクを評価する検査(ABC検診)が普及してきました。

これは、血液検査でピロリ菌に対する抗体と、萎縮性胃炎の程度を反映するペプシノーゲンを測定し、その組み合わせから胃がん発生のリスクを分類し評価する検診です。

ただ、この検査だけで胃がんがあるかどうかを判定することはできません。

高リスクと判定された人は、内視鏡検査など、さらなる検査を受ける必要があります。

腫瘍マーカー

胃がんに特異的な腫瘍マーカーはありませんが、CEACA19-9が陽性になることがあります。

ただし、これらの腫瘍マーカーは早期胃がんでの陽性率は低いため、スクリーニング検査としては有用ではありません。

 

腫瘍マーカー(血液などを用いたがんのスクリーニング検査)に関しては、現在、血液中のマイクロRNAを測定する検査などが実用化にむけて研究開発中です。

ただし、現時点では信頼のおける「胃がんを発見するマーカー(血液検査)」はありません。

胃がんの治療法

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胃がんの治療法は、ステージによって異なります。

以下に、ステージ別の治療法および予後について解説します(胃がんのステージ分類については、こちら(いしゃまちの記事)をどうぞ)。

ステージ別の胃がん治療法

ステージIA:内視鏡治療(胃カメラでがんを切除する)や胃切除術(リンパ節の切除範囲が狭い縮小手術)が行われます。

ステージIB:定型手術(胃の2/3以上切除と広い範囲のリンパ節切除)が行われます

手術後の病理学的検査(顕微鏡による検査)にてステージIであることが確定すれば、追加の治療(補助療法)は行われず、通常は経過観察が行われます。

ステージII:定型手術が行われます。

また、手術後の病理検査でステージIIが確定すれば、(がんが粘膜下層までにとどまる例や、漿膜下層まで到達するがリンパ節転移がない例を除き)術後の補助化学療法(抗がん剤治療)が追加されます。

ステージIII:定型手術(がんが周りの臓器に達している例では、他臓器の合併切除を追加)が行われます。

また、手術後の病理検査でステージIIIが確定すれば、術後の補助化学療法(抗がん剤治療)が追加されます。

ステージIV:がんを全て取り除くことを目標とする根治手術は難しいと考えられるため、薬物治療(抗がん剤治療)が中心となります。同時に、がんによる辛い症状を和らげる治療(緩和ケア)も行われます。

胃がんの腹腔鏡手術

最近、胃がんの手術では、小さな穴から手術する腹腔鏡(ふくくうきょう)手術が主流となってきました。従来の開腹手術に比べて傷が小さく、からだに負担が少ない手術です。

胃がんの予後(生存率)

胃がんの予後(生存率)は、ステージによって大きく異なります。以下に、ステージ別の予後を解説します。

ステージI:予後は極めて良好で、10年生存率(がんと診断されて10年後にも生存している確率)は95%です

ステージII:10年生存率は63%と比較的良好です

ステージIII:10年生存率は39と低下してきます。

ステージIV:予後は不良で、10年生存率は7.5%と報告されています。

つまり、いかに早期に発見することが重要かがわかります。

まとめ

胃がんで死なないためには、とにかく早期に発見することが重要です。

胃の痛みなど初期の症状を見逃さないこと、そして気になる症状がある場合には、速やかに医療期間を受診しましょう。

また、40歳以上の人では、胃がん検診をふくめ、定期的な検査を受けることをおすすめします。

 


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