がん患者のカヘキシア(悪液質)治療には有酸素運動が有効!オートファジーの関与

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多くの進行がん患者にみられるカヘキシア(悪液質)とは、がんによる代謝異常や炎症によって引き起こされる骨格筋の持続性の喪失を特徴とした栄養障害のことです。

カヘキシアはがん患者の生活の質(QOL)を著しく低下させ、また進行すると死亡の原因となるため、これを防いだり、治療することが重要です。

これまでに、カヘキシアの予防・治療には積極的なタンパク質(アミノ酸)の補給に加え、オメガ3脂肪酸(EPA)や、HMBなどのサプリメントが有効であると報告されています。

一方で、カヘキシアには運動(有酸素運動やレジスタンス運動)が有効であるという研究報告もあります。

今回、カヘキシアの治療として有酸素運動および薬物療法が有効であり、またこのメカニズムにオートファジーが関与しているという研究報告を紹介します。

ちなみに、オートファジーとは自食(じしょく)とも呼ばれ、細胞内に異常なタンパク質が蓄積するのを防ぐために、これを分解する仕組みの1つです。

有酸素運動とオートファジーを調整する薬物療法がカヘキシアに有効:大腸がんの動物モデルによる検証

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Aerobic Exercise and Pharmacological Treatments Counteract Cachexia by Modulating Autophagy in Colon Cancer. Sci Rep. 2016 May 31;6:26991. doi: 10.1038/srep26991.

本研究では、マウスにC26大腸がん細胞を移植し、カヘキシアモデルを作成します。

これらのマウスを2つのグループに分け、一方にはゲージに車輪を設置し、有酸素運動として自発的に車輪走行を行わせました。

また、薬物治療のモデルとして、オートファジーを誘導する薬剤であるAICARおよびラパマイシン(rapamycin)を連日腹腔内に投与しました。

結果を示します。

■ カヘキシアを認めるC26担癌マウスの骨格筋において、オートファジー(オートファゴゾームの形成)の指標であるLC3bIIおよびp62タンパクの発現が異常に増加していた。
■ 同様に、実際の大腸がん患者の骨格筋の生検組織においても、LC3bIIおよびp62タンパクの著しい増加が認められた。
■ C26担癌マウスでは、前脛骨筋(下腿部前面にある筋肉)の重量および筋線維の断面積の低下が生じたが、車輪走行マウスではこれらの低下がみられなかった
■ 車輪走行を行わなかったC26担癌マウスに比べ、車輪走行マウスでは有意に生存期間が延長していた(P < 0.041)。また、各マウスの走行距離と生存期間の間には正の相関がみられた(P = 0.007)(下図)。

C26担癌マウスと車輪走行による生存率改善

■ オートファジーを誘導する薬であるAICARおよびラパマイシン投与群では、車輪走行と同様に前脛骨筋の重量および筋線維の断面積の低下が抑制されました

以上の結果より、がんに伴うカヘキシア(筋肉の萎縮)には筋肉細胞におけるオートファジーの異常が原因の1つと考えられ、有酸素運動およびオートファジーを誘導する薬剤はカヘキシアの予防や治療に有効である可能性が示唆されました

まとめ

今回の研究では、カヘキシアによる筋肉萎縮のメカニズムの1つとしてオートファジーの関与が明らかとなりました。

オートファジーは細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防ぐために重要な役目を果たしていますが、がん患者では骨格筋でこのオートファジーに異常がおこり、筋肉の萎縮がすすむと考えられます。

有酸素運動は筋肉のオートファジーを正常化し、カヘキシアを抑制することが示されました

また、オートファジーを正常化する薬物療法は、とくに有酸素運動ができない状況のがん患者におけるカヘキシアの予防・治療に利用できる可能性があります。

今後のさらなる研究および臨床応用が期待されます。

 


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