再発性の頭頸部(とうけいぶ)がんに対するニボルマブの効果:第III相臨床試験
免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ(抗PD-1抗体)の快進撃が止まりません。今回は、難治性といわれる再発性頭頸部(とうけいぶ)がんに対するニボルマブの治療効果についてです。
通常のプラチナ製剤による抗がん剤治療後の再発性または転移性の頭頸部(扁平上皮)がんは、きわめて予後不良であり、治療法が限られています。
今回、ニボルマブ(オプジーボ)の再発性頭頸部がんに対する効果をランダム化オープンラベル第III相臨床試験で調査した結果が、一流医学雑誌のNew England Journal of Medicine(ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)に報告されました。
現在日本ではニボルマブ(オプジーボ)の適応は悪性黒色腫、非小細胞肺がん、および腎細胞がんに承認されていますが、頭頸部がんに対しても適応申請中です。
再発性頭頸部扁平上皮がんに対するニボルマブ
本試験のデザインは、以下の通りです。
- ランダム化オープンラベル第III相試験
- 対象はプラチナ製剤ベース化学療法後6ヶ月以内に、病勢が進行した再発性頭頸部扁平上皮がん患者361例です。
- これらの患者を、ニボルマブを2週間ごと投与(ニボルマブ群)、または治験担当医師が選択した標準的な単一薬剤(メトトレキサート、ドセタキセル、またはセツキシマブ)による全身化学療法(標準治療群)のいずれかのグループに2:1の比率でランダムに割り付けました。
- 主要評価項目は全生存期間で、副次的評価項目は無増悪生存期間、客観的奏効率、安全性(副作用)および患者報告によるクオリティーオブライフ(QOL)としました。
結果です。
- 全生存期間の中央値は、標準治療群の5.1ヶ月に対し、ニボルマブ群では7.5ヶ月でした。また全生存率(下図)は、ニボルマブ群で標準治療群より有意に延長していた(死亡ハザード比0.70、 P = 0.01)。
- このニボルマブの効果は腫瘍のPD-L1発現が1%以上の患者でのみ観察され、一方PD-L1発現が1%未満の患者ではみられませんでした。
N Engl J Med 2016 Nov 10;375(19):1856-1867より一部改変
- 1年生存率の推定値は、標準療法よりもニボルマブで約19%高かった(36.0% vs 16.6%)。
- 無増悪生存期間中央値は、標準治療群の2.3ヶ月に対し、ニボルマブ群で2ヶ月間であった(病勢進行または死亡のハザード比、0.89、 P = 0.32)
- 6ヶ月無増悪生存率は、標準治療の9.9%に対してニボルマブ群で19.7%であった。
- 奏効率は、標準治療群5.8%に対し、ニボルマブ群で13.3%であった。
- グレード3または4の治療関連有害事象(副作用)は、ニボルマブ群の13.1%に対し、標準治療群では35.1%であった。またニボルマブ群では、身体的、機能的、社会的機能は安定していたが、標準治療群では有意に悪化していた。
これらの結果より、再発性頭頸部がんに対するニボルマブ(抗PD-1抗体)の投与は比較的安全な治療法であり、標準的な治療法(メトトレキサート、ドセタキセル、またはセツキシマブ)と比べ、全生存期間を有意に延長することが示されました。
ニボルマブ(オプジーボ)の現状(2017年1月現在)
2017年1月24日現在、ニボルマブ(オプジーボ)は悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞肺がん、および腎細胞がんに承認を受けています。
またオプジーボは、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、および胃がんに対しても承認申請をしています。これらが承認されれば、オプジーボは6種類のがん治療への使用が可能になります(下図)。
まさにオプジーボの快進撃です。しかしながら、オプジーボもすべての患者さんにとって「夢の新薬」ではありません。
適応になったからといって、必ずしも効果が期待できる訳ではありません。例えば、今回の研究でもそうですが、一般的に腫瘍のチェックポイント(PD-1あるいはPD-L1)発現がない(あるいは低い)場合には効果が期待できません。
また、オプジーボは比較的安全と考えられていますが、免疫系に関連した多彩な副作用がみられることがあり、なかには死亡例も報告されています。またオプジーボの適応外使用、がん免疫療法との併用例において、重篤な副作用を発現した症例が報告されているとの情報もあり、注意が必要です。
さらに、安くなったとはいえ、やはり高額であることに変わりなく、医療費高騰の問題も抱えています。
とはいえ、治療の選択肢が限られていたがん患者さんにとって、オプジーボは希望の光になる可能性は高く、一刻も早く臨床で使用できるようになることを期待します。
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