大腸がん 手術 運動

がん手術前の運動によって生存率が改善:プレハビリテーションの重要性

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がん患者さんの高齢化にともない、体力(持久力、筋力)が低下している患者さんが多くなってきました。

また、一部のがん(とくに消化器がん)では、さまざまな理由によって栄養状態の悪化や筋肉量の低下がみられることがあります。

さらに、がんの告知を受けた患者さんの多くは、ショックから精神的に落ち込んだままの状態がしばらく続きます。

このため、手術までの間にさらに栄養状態が悪化し、体力が低下するといった悪循環に陥ることがあります。

がん患者さんが何もしないまま手術をむかえると、手術後の回復が遅れて入院期間が長引いたり、重症の合併症がおこるリスクが増えたりする可能性があるのです。

そこで、こういった事態を避けるために、手術前からのリハビリテーション、いわゆるプレハビリテーション(prehabilitation)の重要性が注目され、欧米を中心に医療の現場に導入されつつあります。

実際に多くの研究結果より、がんの手術前にプレハビリテーションを行うことにより、手術の合併症がおこるリスクを減らし、早期に回復することが証明されています。

驚くべきことに、最近、「プレハビリテーションによってがんが再発せずに生存できる期間が長くなる」という研究結果が報告されました。

今回、プレハビリテーションと大腸がん患者の予後についての研究結果を紹介します。

プレハビリテーションが大腸がん患者の無再発生存率を改善

Improved Disease-free Survival After Prehabilitation for Colorectal Cancer Surgery.  2019 Sep;270(3):493-501. doi: 10.1097/SLA.0000000000003465.

対象と方法

本研究では、大腸がん患者を対象とした過去の3つのプレハビリテーションについての研究結果をまとめ、予後(生存期間)についてのデータを解析しました。

手術を受けた202人の大腸がん患者(ステージI~III)を、プレハビリテーションあり群(104人)とプレハビリテーションなし群(98人)に分け、無再発生存期間および全生存期間を比較しました。

プレハビリテーションは、運動(有酸素運動+レジスタンス運動(筋トレ))に、栄養サポート精神的ケアを加えたものを実施しました。

結果

■ プレハビリテーションの期間は、術前およそ30日間(20~40日)でした。

■ プレハビリテーションのプログラム遵守率(患者さんが実施できた割合)は80%でした。

■ すべてのステージを含めた全体の患者での生存解析では、全生存期間および無再発生存期間に有意な差を認めませんでした。

■ ステージIIIの大腸がん患者(全体の33%)においては、レハビリテーションあり群の5年無再発生存率(73.4%)はプレハビリテーションなし群(50.9%)に比べて有意に高いという結果でした(P = 0.045)。

■ 多変量解析では、プレハビリテーションの実施は、すべての患者およびステージIIIのどちらにおいても無再発生存の改善と相関する独立した因子でした。

結論

以上の結果より、プレハビリテーションによって、ステージIIIの大腸がん患者の無再発生存期間が延長する可能性が示されました。

今後、大規模なランダム化比較試験などにおいて、プレハビリテーションとがん患者の予後との関係がより明らかになることと思います。

がん患者さんが自分でできるプレハビリテーション

残念ながら、日本の病院ではプレハビリテーションのプログラムを導入しているところは少ないと思います。

手術を受ける病院にこういった術前からのプログラムや生活指導がない場合には、患者さん自身がその必要性について評価し、自主的に取り組むべきだと思います。

私の外来では、高齢のがん患者さんや、膵臓がんの手術など比較的からだへの負担が大きい手術を受けることが決まった患者さんには、たとえ短期間であっても、しっかりと準備をしてもらうようアドバイスしています。

過去のプレハビリテーションについての研究論文を参考に、「がん患者さんが自分でできるプレハビリテーション」を考えてみました。

1.運動(有酸素運動+レジスタンス運動)

ウォーキング、ランニング、サイクリング(エアロバイク)、水泳などの有酸素運動を1日20~30分間をできれば毎日、

ダンベル運動、スクワットなどのレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)1日20分間を週に2~3日行ってください。

筋肉が弱っていると感じる人は、とくに筋トレをがんばってください。

2.栄養サポート

バランスのとれた食事をこころがけ、とくにタンパク質を体重1Kgあたり1.2~1.5グラムを摂取しましょう。

足りない分は、ホエイプロテインなどで補充しましょう。

3.精神的ケア

気持ちを家族やまわりの親しい人に話す、あるいは心配・不安なことを具体的にノートに書き出すことで、少しでも安が軽くなることがあります。

あるいは、マインドフルネス瞑想などをとりいれてみましょう。

がんや手術に対する恐怖や不安が強い場合、まずは主治医や看護師に相談してください。

必要な場合は薬を処方してくれたり、専門家(精神科、心療内科、腫瘍精神科など)による精神的ケアを手配してくれるでしょう。

 

プレハビリテーションをふくめ、がんの手術前に「患者さんにしてもらいたいこと」は、こちらの本にまとめています。

まとめ

がんの手術前のプレハビリテーション(運動+栄養サポート+精神的ケア)によって、がん患者さんの生存期間が延長するという研究結果を紹介しました。

がんと告知されて不安な毎日を過ごされている患者さんが、できるだけ早くショックより立ち直り、手術までの期間に自分でできる準備をしっかりとやり、がんを克服されることを心より願っています。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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