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配偶者(パートナー)の存在はがん生存率に影響:家族によるサポートの重要性

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とつぜんですが、皆さんには配偶者(あるいはパートナー)はいらっしゃいますか?

変な話に聞こえるかもしれませんが、配偶者(パートナー)の存在はがん生存率に影響するのです。

多くの研究によって、がんと診断された患者に配偶者(あるいはパートナー)がいる場合、独身の患者に比べて予後が良いことが明らかとなっています。

つまり、妻や夫がいる人では、がんになっても治ったり長生きする可能性が高いということです。

今回は、最近報告された「大腸がん切除後の生存率と配偶者の有無との関係」について紹介します。

配偶者の有無と結腸がん患者の生存率との関係

The impact of marital status on survival in patients with surgically treated colon cancer.  2019 Mar;98(11):e14856. doi: 10.1097/MD.0000000000014856.

対象と方法

治癒切除を受けた925人(男性531人 (57.4%) 、女性394人 (42.6%))の結腸がん患者を対象としました。

このうち、749人(80.9%)は婚姻状態(配偶者あり)であり、176人(19.1%)は非婚姻状態(配偶者なし)でした。

配偶者がいない人の内訳は、42人(4.5%)は一度も結婚していない人、42人(4.5%)は離婚または離別している人、そして93人(10.1%)は配偶者と死別した人でした。

配偶者の有無と生存率(観察期間中央値39ヶ月)との関係を調査しました。

結果

■ 配偶者ありと配偶者なしのグループ間に、年齢、ステージや補助抗がん剤治療の有無などの患者背景に差はありませんでした。

■ 配偶者ありのグループは、配偶者なしのグループに比べて、有意に5年(疾患特異的)生存率が良好でした(配偶者あり69.1%、配偶者なし55.9%)(下図)。

■ (複数の予後因子を同時に評価する)多変量解析では、「配偶者なし」は結腸がんによる死亡リスクを66%高める独立した予後因子であることがわかりました。

結語

以上の結果より、配偶者がいる結腸がん患者は、配偶者がいない患者に比べて生存率が高く、婚姻状態が予後を左右する重要な因子であることが示されました。

婚姻状態と他のがん生存率との関係

過去には、配偶者の有無とがん全体の予後との関係を調査した研究が報告されています。

Marital status and survival in patients with cancer.  2013 Nov 1;31(31):3869-76. doi: 10.1200/JCO.2013.49.6489. Epub 2013 Sep 23.

この研究では、アメリカのデータベースに登録された様々な部位のがん(肺がん、大腸がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、肝臓・胆管がん、非ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、卵巣がん、食道がん)と診断された70万人以上の患者を対象とし、配偶者の有無と治療経過(死亡率)の関連を調べました。

その結果、配偶者のいる患者では、配偶者のいない患者に比べ、がんによる死亡率が20%も低いことが分かりました。

とくに、配偶者の有無が死亡率にあたえる影響は、女性よりも男性患者で大きくなっていました。

独身の状態としては、一度も結婚していない人、配偶者と離別している人、離婚した人、死別した人のいずれもがんが進行した状態で発見され、結果的に死亡率が高くなるという結果でした。

また、いくつかのがん(前立腺がん、乳がん、大腸がん、食道がん、および頭頸部がん)に関しては、配偶者がいることによる死亡リスクの低下率は、標準的な抗がん剤による治療効果を上回るものであったということです。

なぜ配偶者がいることは生存率を高めるのか?

なぜ結婚している人では独身の人に比べてがんによる死亡率が低いのでしょうか?

研究によると、配偶者のいる患者では、独身の患者に比べ、がんが転移した状態で発見される率が17%低く、適切な治療を受ける率が53%も高いことが明らかとなりました。

つまり、結婚している人ではより早期にがんが発見され、しかもきちんと治療をうける傾向にあるということです。

夫婦間で互いの健康に注意をはらい、ちょっとした気になる症状でも病院の受診を促すことが、がんのより早期の発見につながる可能性があります。あなたの健康を心配し、「病院に行きなさいよ」と口酸っぱく言ってくれる人の存在が大切なのです。

また、配偶者(パートナー)がいる人は夫婦間で相談して適切な治療を選択できること、また、配偶者の励ましやサポートによってつらい副作用などに耐えることができ、治療が継続できる可能性があります。

これらの要因が、配偶者がいるがん患者の生存率向上につながっていると考えられます。

まとめ

未婚、離婚、離別、あるいは死別を含め、配偶者がいない状態は、がんの死亡リスクを20%も高めるということです。

したがって、がんになったときのことを考えたら、できるだけ配偶者がいることが望ましいと考えられます。

またパートナーは結婚相手である必要はなく、親しい友人や親族でも同じように生存率を上げるための役割を果たすことが可能であるとのことです。

あるいは、独身のがん患者さんを精神的・社会的にサポートするシステムを強化することで、がんの生存率を高めることが期待されます。

いずれにしても、がん患者さんにとっては、やはり妻・夫、家族や信頼できるパートナー・友人によるサポートが重要であることがわかります

拙書「がんが治る人 治らない人」でも述べていますが、

がんが治る人は、「まわりの人を頼り、感謝できる」人と言えます。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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