がんの遺伝子(DNA)検査:いくらかかる?何がどこまでわかり、本当に役に立つのか?

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分子生物学の革命的な進歩にともない、がんと遺伝子との関係について多くの情報が得られ、また膨大なデータが蓄積されつつあります。

また遺伝子解析法(とくにシークエンス技術)の簡便化、キット化、および低価格化によって、昔と比べるとずいぶん安く簡単に遺伝子検査を受けることが可能となりました。

現在、ネットで購入したり、一部の医療機関(病院)で受けられる様々ながんの遺伝子検査があり、一大ビジネスとなりつつあります。

一方で、これらの情報がどこまで正しく、また本当に役に立つのかについては議論が分かれるところです。

今回は、現時点で利用できるがん遺伝子検査の種類、内容、価格などについて紹介するとともに、実際には何がどこまで分かるのか、また利用するさいの注意点などについて考えてみました。

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がんの遺伝子検査とは?

がんの遺伝子検査とは、唾液や血液中のDNAを採取し、その塩基配列などを調べることによって、特定のがんを発症するリスク(かかりやすさ)や、がんの存在を診断するものです。

現在、利用できるがんの遺伝子検査には、大きく分けて以下のようなものがあります。

1.SNP(スニップ)によるがん遺伝的リスクの評価
2.発がんに関わる特定の遺伝子変異の検査
3.遺伝子発現(スイッチのオン・オフ)のパターンによるがん診断
4.マイクロRNAによるがん診断

以下に、それぞれについて解説していきます。

1.SNP(スニップ)によるがん遺伝リスクの評価

現在ネットで販売されている遺伝子検査のキットのほとんどは、SNP(Single Nucleotide Polymorphism: 一塩基多型)をマイクロアレイという技術で解析するものです。

そもそもSNPとは何でしょうか?

DNAとは、アデニン (A) 、グアニン (G) 、チミン (T) 、シトシン (C) という4つの塩基がならんだものですが、基本的には全人類で同じです。

ところが、個人個人でごくわずかな配列の違いがあることが分っています。このDNAの中のひとつの塩基が他のものに置き換わったものを、SNPまたはスニップといいます。

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このSNPのパターンが、たとえば髪の毛や目の色といった、生まれつきの人間の個性につながっているのです。

またこれまでの研究により、特定のSNPが、がんやいろいろな病気の発症と関連があることが分ってきました。

たとえば、「ある遺伝子のSNPのタイプが、Aタイプの場合、生涯で乳がんを発症する確率が5倍高くなる」といった具合です。つまり、このSNPの違いを調べることで、がんや他の病気にかかりやすいかどうかが分るのです。

SNPをベースにした遺伝子検査には、以下のものがあります。

マイコードは、実際にわたしも試してみました。こちらの記事をどうぞ↓

関連記事:DNAで癌になりやすい体質がわかる!がん予防のために遺伝子検査(マイコード)のすすめ

関連記事:有名人も受けた!「がん」のリスク、性格、肥満や肌のタイプまで分る遺伝子検査ジーンライフとは?

これらの遺伝子検査には、以下の利点があると考えられます。

  • 比較的安価に検査できる(検査項目数によって3~5万円)
  • 唾液などサンプル採取が簡単で侵襲が少ない
  • 結果によってはがん検診を受けるきっかけとなる(受けるべきがん検診がわかる)。
  • がん発症を予防するための生活習慣改善の具体的な方法がわかる。
  • がんが早期に発見されるきっかけとなる。
  • がん保険に入る動機となり、実際にがんになったときでも役立つ。

つまり検査を受けることにより、なりやすいがんにターゲットをしぼった「自分だけのオーダーメイドのがん予防法」が実践できるというメリットはあります。

しかし一方で、次のような欠点も指摘されています。

  • おもに海外の研究論文を参考にしており、日本人のデータがない(少ない)
  • 各社のキットによって結果が違うことがある(異なるデータベース(論文)を利用しているため)
  • データの解釈がむずかしい(どのくらいリスクが高いのか、わかりにくい)

したがって、このような欠点も含めて、あくまで「将来がんになりやすいかどうかについての情報のひとつ」として利用する必要があります。

2.発癌にかかわる特定の遺伝子検査

がんの中には、遺伝性(家族性)のものがあります。

たとえば、乳がんや卵巣がんのおよそ10%は遺伝性であることがわかっており、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群:HBOC」とよばれています。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の特徴
  • 若年で乳がんを発症する
  • トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体をもっていなくて、HER2発現がないタイプ)の乳がんを発症する
  • 両方の乳房にがんを発症する
  • 片方の乳房に複数回乳がんを発症する
  • 乳がんと卵巣がん(卵管がん、腹膜がんを含む)の両方を発症する
  • 男性で乳がんを発症する
  • 家系内にすい臓がんや前立腺がんになった人がいる
  • 家系内に乳がんや卵巣がんになった人がいる

HBOCの人では、生まれつき癌抑制遺伝子として有名なBRCA(BRCA1またはBRCA2)に変異があることがわかっています。

HBOCが疑われる場合、BRCA遺伝子検査を受けることで診断が可能となります。このBRCA遺伝子の検査ですが、現在は多くの病院で受けられますが、自費診療となります。 費用はおよそ20~30万円前後といわれています。

ガイドラインでは、HBOCと診断された場合、乳房および卵巣の健診を続けること、およびリスク低減手術について医療者と相談することを推奨しています。

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーはこのBRCA1に変異があることがわかり、予防的に両側の乳房切除をうけて話題をよびました。

つまり、このような遺伝子検査は、異常がみつかったときにどう対処すべきか判断が難しいことがあるという問題をはらんでいます。したがって、必ず遺伝子カウンセリングのシステムがととのった施設で検査を受けることをおすすめします。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)についての詳しい情報は、こちらのページをご参照ください。

日本HBOCコンソーシアム

遺伝カウンセリングを行いBRCA1/2遺伝子検査を提供できる医療機関については、以下のページをご参照ください。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の情報サイト

3.遺伝子発現(スイッチのオン・オフ)のパターンによるがん診断

がんと正常細胞では、遺伝子の発現(オン・オフ)に大きな違いがあることが分かっています。遺伝子発現マイクロアレイを使い、この違いをがんの診断に役立てる方法が実用化しています。

遺伝子発現マイクロアレイとは、ごく簡単にいうと、非常に多くの遺伝子の発現(スイッチのオン・オフ)を少量のメッセンジャーRNA(遺伝子の伝達に重要な役割をはたす核酸という物質)から調べることができる検査法です。

マイクロアレイのメーカーによっても違いますが、一度に数万~数百万の遺伝子(あるいはタンパク質をつくらないDNA配列)の発現を調べることができます。

2010年に日本の金沢大学の研究チームから発表された論文(Biochem Biophys Res Commun. 2010 Sep 10;400(1):7-15.)を紹介します。

まず39人の消化器系のがん(大腸がん11人、胃がん8人、膵臓がん14人)患者および15人の正常な人から血液を採取し、RNAを抽出し、マイクロアレイにて遺伝子発現パターンを比較しました。

この結果から、がん患者と正常な人とをよく区別できる25個のがん鑑別遺伝子セット」を決定し、別の集団(がん患者37人、正常人15人)でその正診率を確認しました。

その結果、この「25個のがん鑑別遺伝子セット」の正診率は、がん患者で100%(37/37)正常人で87%(13/15)でした(下図)。

マイクロアレイがんと正常発現強度

胃がんと大腸がんの患者の中には早期のがん(いわゆるステージI)も含まれており、この遺伝子発現プロファイリングによって、がんの早期診断につながる可能性があると結論づけています。

消化器がんマイクロアレイ血液検査

この研究結果にもとづいて開発された検査が、G-TACの「がんの早期スクリーニング検査」です。

わずか5mLの血液から、消化器がん(胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がん)の有無を感度90%以上で判別することができます

具体的な検査の詳細は、こちらの動画で解説されています。

検査の流れをまとめてみます:

1.医療機関(全国にある提携病院)での採血

2.RNAの抽出

3.RNAに目印となる蛍光色素をつける

4.スライド上にあるプロ-ベ(遺伝子の鋳型)とRNAを結合

5.結合したRNAの量を蛍光で測定

6.RNAの発現パターンを見ることで、陽性か陰性かを判定

7.検査結果の報告(検査結果は2週間から1か月後に、再度受検施設を訪問して確認)

となっています(下図)。

GTAC検査のながれ

G-TACの「がんの早期スクリーニング検査」3つの特徴

1.【医師を介する信頼感】

G-TACのパートナー医療機関で、経験ある医師が随時対応するから安心です。

2.【早期リスク判定】

従来のがん検査が判定出来なかった早期の段階で、がんリスクを判定可能です。また、非常に罹患率が高い胃がん、大腸がんと、死亡率が高い胆道がん、膵臓がんを同時に検査できるので、無駄が少ない検査法といえます。

3.【高いリスク発見率】

一般で使用されている腫瘍マーカーより、2倍以上の高いがんリスク発見率(感度)があります。

以上、現時点ではまだ費用が高いのが欠点ですが、消化器系がん(胃がん、大腸がん、胆道がん、膵臓がん)の早期診断法としては非常にすぐれた検査だと思います

4.マイクロRNAによるがん診断

これらの遺伝子検査の他に、マイクロRNAによるがん診断が注目を集めています。

マイクロRNAとは、メッセンジャーRNAとはちがってタンパク質をコードしない(つまりタンパク質の生成には関与しない)短いRNAのことです。

このマイクロRNAは、ほかの遺伝子の発現を調節するという重要な役目を持っています。

また、これまでの研究により、がん細胞では正常細胞とは異なったマイクロRNAの発現パターンを持っていることがわかってきました。

がん細胞から血液中にでてくるエクソソーム(細胞から分泌されるごく小さな顆粒状の物質)内のマイクロRNAを検出する検査が、株式会社ミルテルが提供するミアテストです。

このミアテストにより、がんやアルツハイマー、認知症などが早期に発見できるとのことです。

がんについては、以下の種類が検査可能です。

  男性;胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、脳腫瘍、食道がん、膵臓がん、

     頭頸部がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がん

  女性;胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、脳腫瘍、食道がん、膵臓がん、

     頭頸部がん、腎臓がん、甲状腺がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん

とくに乳がん、膵臓がん、アルツハイマーについては、93%以上の精度になるとのことです。

クリエーターの高城 剛氏はこのミアテストを受け、画像で検出できないほど早期の膵臓がん(あるいは前がん病変?)が発見されたとのことです。

現在、一部の病院でこのミアテストを受けることができます。

ミアテストが受けられる医療機関

ちなみに費用は、1疾患につき2万円~であり、検査できるすべてのがんのスクリーニング(男性12種類、女性13種類)では26~40万円程度かかります(病院によって違います)。

かなり高いですが、今後、より低コストで検査できるようになる可能性が高いと思います。

以上、現在利用できる遺伝子検査についてまとめてみました。

基本的にネットで購入できる3万円程度の比較的安いものは、がんになりやすい体質を評価するもので、がんの診断(今現在がんが存在するかどうかの判定)には役に立ちません。

一方、病院で実施するがんの早期発見を目的としたものはまだ高額で、スクリーニングでは10~40万円(あるいはそれ以上)かかります。

もしがんの診断(とくに早期診断)を目的にされるのであれば、ミアテストあるいはG-TACをおすすめします(それぞれカバーするがんの種類が違います)。

それぞれの検査のメリット、デメリットをよく考えて利用されることをおすすめします。


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