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クルクミンはがん幹細胞を標的として膵癌に対する抗がん剤(ゲムシタビン)の効果を増強

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ウコンの成分であるクルクミン(ターメリック)には、がんの発生、増殖、浸潤、転移などを抑制する効果があることが明らかとなってきました。

このクルクミンの抗がん作用の背景には、抗酸化・抗炎症作用、がん細胞のアポトーシス誘導、血管新生阻害、免疫調節作用などさまざまなメカニズムが報告されています。

今回、クルクミンが、がん幹細胞(がんの中でもとくに薬が効きにくい細胞)を標的として膵臓がんに対する抗がん剤(ゲムシタビン)の効果を高めるという実験データが報告されました。

薬剤耐性(抗がん剤が効かなくなること)が問題となる膵臓がんに対する新たな治療戦略となる可能性があります。

クルクミンの抗がんメカニズム

これまでに、クルクミン(またはその代謝物であるテトラヒドロクルクミン)は以下の作用機序によってがんを抑制することが報告されています。

  • 抗酸化・抗炎症作用
  • がん細胞の増殖シグナルを阻害する作用
  • がん細胞に対する細胞死(アポトーシス)の導入作用
  • 血管新生(がんの成長に不可欠な、新たな血管を引き寄せる作用)の阻害
  • がんの進行を手助けする周囲の間質(かんしつ)細胞への抑制作用
  • がん免疫のブレーキとなる制御性T細胞を減少させ、一方がん攻撃の司令塔となるTh1細胞を増加させる作用

このように、クルクミンは様々なメカニズムを介してがんを抑制していると報告されています。

クルクミンはがん幹細胞を抑制して膵臓がんに対するゲムシタビン(ジェムザール)の効果を高める

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Curcumin sensitizes pancreatic cancer cells to gemcitabine by attenuating PRC2 subunit EZH2, and the lncRNA PVT1 expression. Carcinogenesis. 2017 Oct 1;38(10):1036-1046. doi: 10.1093/carcin/bgx065.

この研究では、まず膵臓がん細胞を用いて、クルクミンとゲムシタビン、および両者の併用治療が細胞の生存および増殖(コロニー形成)に与える効果を調べています。

■ クルクミンおよびゲムシタビンは、それぞれ単独で膵臓がん細胞の生存率(増殖能)を低下させるが、とくに両者を併用したところ著明に低下させた(下図)。
■ さらに、ゲムシタビン治療で生き残ったがん細胞だけを増やして作ったゲムシタビンが効きにくい膵臓がん細胞株(ゲムシタビン耐性膵臓がん細胞)に対しても、クルクミン単独およびクルクミンとゲムシタビンの併用によって生存率(増殖能)が低下した(下図)。

クルクミンとジェムザール併用コロニー形成

抗がん剤が効かない原因の一つとして、がん幹細胞が注目されています。

これは、自己複製能(自分と同じ細胞を作る能力)腫瘍形成能(腫瘍を作る能力)が高い細胞集団のことで、「がんの親玉」ともよばれています。

がん幹細胞は抗がん剤や放射線治療が効きにくく、治療後に少数でも残存すると再発の原因になるといわれています。

つまり抗がん剤が効きにくいために生き残り、自己複製能によってどんどん増えていくと考えらえています。

癌幹細胞

そこで、クルクミンによるゲムシタビンの効果増強のメカニズムとして、がん幹細胞について調べました。

■ クルクミンの単独治療、およびクルクミンとゲムシタビンの併用治療は、がん幹細胞に特徴的なスフェロイド(細胞の塊)の形成を抑制しました(下図)。

クルクミンとジェムザール併用スフェロイド

■ さらに、クルクミンは自己複製能のマーカーであるいくつかの遺伝子発現を低下させました。

以上の結果は、クルクミンががん幹細胞を標的としてゲムシタビンの薬剤耐性を克服していることを示唆します

最後に、このクルクミンの抗がん剤増強効果を動物実験でも調べました。

マウスにゲムシタビン耐性膵臓がん細胞を移植し、クルクミンとゲムシタビンの併用効果を調べました。

■ クルクミンは単独でゲムシタビン耐性膵臓がんの増殖を抑制し、ゲムシタビンとの併用ではさらに著明に増殖を抑制した(下図)。

クルクミンとジェムザール併用マウス膵癌

以上の結果より、クルクミンは細胞レベル(試験管)および動物実験において、膵臓がんに対するゲムシタビンの治療効果を増強しました

さらに、この背景にはクルクミンのがん幹細胞への抑制作用が関与していることが示唆されました。

膵臓がんに対するクルクミンとゲムシタビンの併用治療:実際の臨床試験

過去に、膵臓がん患者に対してクルクミンとゲムシタビンの併用治療についての臨床試験(第I/II相試験)が実施されています。

A phase I/II study of gemcitabine-based chemotherapy plus curcumin for patients with gemcitabine-resistant pancreatic cancer. Cancer Chemother Pharmacol. 2011 Jul;68(1):157-64. doi: 10.1007/s00280-010-1470-2. Epub 2010 Sep 22.

この試験によると、クルクミン(8g/日)の投与は毒性なく安全であったとのことですが、参加した患者数が少ないこともあり、治療効果(生存期間)についてのデータは不十分であるとのことでした。

今後、より大規模な臨床試験においてさらなる評価が必要であると考えられます。

一般的に「抗がん剤が効きにくい」とされる膵臓がんですが、クルクミンのサプリメントを併用することで膵臓がんに対する化学療法の効果を高めることが期待されます


高吸収型クルクミンのサプリメントがいよいよ発売

そして、ついに、京都大学発ベンチャー セラバイオファーマ社によるクルクルージュ使用のサプリメントが発売されました!

クルクミンを非晶化し、通常品の約93倍の吸収率を向上したとのことです。

このサプリメントに期待したいですね!

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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