ウコンの成分であるクルクミン(ターメリック)には、がんの発生、増殖、浸潤、転移などを抑制する効果があることが明らかとなってきました。
このクルクミンの抗がん作用の背景には、抗酸化・抗炎症作用、がん細胞のアポトーシス誘導、血管新生阻害、免疫調節作用などさまざまなメカニズムが報告されています。
今回、クルクミンが、がん幹細胞(がんの中でもとくに薬が効きにくい細胞)を標的として膵臓がんに対する抗がん剤(ゲムシタビン)の効果を高めるという実験データが報告されました。
薬剤耐性(抗がん剤が効かなくなること)が問題となる膵臓がんに対する新たな治療戦略となる可能性があります。
クルクミンの抗がんメカニズム
これまでに、クルクミン(またはその代謝物であるテトラヒドロクルクミン)は以下の作用機序によってがんを抑制することが報告されています。
- 抗酸化・抗炎症作用
- がん細胞の増殖シグナルを阻害する作用
- がん細胞に対する細胞死(アポトーシス)の導入作用
- 血管新生(がんの成長に不可欠な、新たな血管を引き寄せる作用)の阻害
- がんの進行を手助けする周囲の間質(かんしつ)細胞への抑制作用
- がん免疫のブレーキとなる制御性T細胞を減少させ、一方がん攻撃の司令塔となるTh1細胞を増加させる作用
このように、クルクミンは様々なメカニズムを介してがんを抑制していると報告されています。
クルクミンはがん幹細胞を抑制して膵臓がんに対するゲムシタビン(ジェムザール)の効果を高める
この研究では、まず膵臓がん細胞を用いて、クルクミンとゲムシタビン、および両者の併用治療が細胞の生存および増殖(コロニー形成)に与える効果を調べています。
抗がん剤が効かない原因の一つとして、がん幹細胞が注目されています。
これは、自己複製能(自分と同じ細胞を作る能力)と腫瘍形成能(腫瘍を作る能力)が高い細胞集団のことで、「がんの親玉」ともよばれています。
がん幹細胞は抗がん剤や放射線治療が効きにくく、治療後に少数でも残存すると再発の原因になるといわれています。
つまり抗がん剤が効きにくいために生き残り、自己複製能によってどんどん増えていくと考えらえています。
そこで、クルクミンによるゲムシタビンの効果増強のメカニズムとして、がん幹細胞について調べました。
以上の結果は、クルクミンががん幹細胞を標的としてゲムシタビンの薬剤耐性を克服していることを示唆します。
最後に、このクルクミンの抗がん剤増強効果を動物実験でも調べました。
マウスにゲムシタビン耐性膵臓がん細胞を移植し、クルクミンとゲムシタビンの併用効果を調べました。
以上の結果より、クルクミンは細胞レベル(試験管)および動物実験において、膵臓がんに対するゲムシタビンの治療効果を増強しました。
さらに、この背景にはクルクミンのがん幹細胞への抑制作用が関与していることが示唆されました。
膵臓がんに対するクルクミンとゲムシタビンの併用治療:実際の臨床試験
過去に、膵臓がん患者に対してクルクミンとゲムシタビンの併用治療についての臨床試験(第I/II相試験)が実施されています。
この試験によると、クルクミン(8g/日)の投与は毒性なく安全であったとのことですが、参加した患者数が少ないこともあり、治療効果(生存期間)についてのデータは不十分であるとのことでした。
今後、より大規模な臨床試験においてさらなる評価が必要であると考えられます。
一般的に「抗がん剤が効きにくい」とされる膵臓がんですが、クルクミンのサプリメントを併用することで膵臓がんに対する化学療法の効果を高めることが期待されます。

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