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医師が独断で選ぶ「サプリメント」10種【注意】がんに効くサプリはありません

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これまで、サプリメントに関して多くの文献(医学論文)を調査し、また自分でも試してみた結果で厳選した「がん患者さんをサポートするサプリメント(トップ10)」ランキング形式で紹介します。

できるだけエビデンスを重視し、ある程度の効果が証明されているものを選びました。

ただし、何度も言いますが、「それだけでがんが治る(消える)サプリメント」はありません。

考え方としては、「がん治療や日々の生活をサポートするために、無理にならない範囲で続けられる健康補助食品」です。

「知り合いがすすめるから」、「”末期がんが消えた”とうたっているから」、「値段が高いほうが効きそうだから」、といった理由で飲み始めるものではありません。

くれぐれもよくご検討のうえ、ご自分の判断で試してください。

医師が独断で選ぶ「抗がんサプリメント」ベスト10

では10位からいきましょう!

10位 HMB

目的:筋肉増強、サルコペニア予防

HMBとは3-ヒドロキシイソ吉草酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate)の略で、必須アミノ酸の「ロイシン」の代謝物のことです。

最近、このHMBが筋肉の合成をうながし、分解を防ぐサプリメントとして注目を集めています。

じつは、がん患者さんが「筋肉を保つこと」はとても重要です。

というのは、がんによって筋肉量と筋力が低下するサルコペニアがおこる可能性があるからです。このサルコペニアがある患者さんでは、術後の合併症が増えたり、抗がん剤の副作用が多くなったり、死亡リスクが増加することがわかっています。

HMBは、筋肉を保ち、体重を維持・増加させ、サルコペニアを予防するサプリメントとして期待されています

実際に、サルコペニアを認める高齢の胃がん患者さんに、手術前から運動療法(握力トレーニング、ウォーキング、レジスタンス運動)と栄養サポート(必要カロリー+タンパク質摂取のアドバイス)に加え、HMBの投与を行ったところ、サルコペニアが改善し、重大な術後合併症はみられなかったとのことです。

9位 乳酸菌(プロバイオティクス)

目的:腸内環境の改善・免疫力アップ

がん治療の成否を決定する要因のひとつに腸内細菌(マイクロビオータ)があります。

最近の研究では、悪玉菌が少なく、善玉菌が多い腸内環境をもつ人のほうが、免疫療法などの治療が効きやすく、長生きすることがわかっています。

腸内細菌を改善する方法として、長期的な食事パターンとプロバイオティクス(プロビオティクス)が重要であると言われています。

プロバイオティクスとは、乳酸菌やビフィズス菌など、腸内細菌叢のバランスを改善し、人体に有益な作用をもたらす生きた微生物(いわゆる善玉菌)のことです。

このプロバイオティクスは、がんの予防や治療にも効果が期待されています

実際に、乳酸菌(ラクトバチルス・カゼイ)の培養液から単離した物質であるフェリクローム(ferrichrome)を、大腸がん細胞を皮下に移植したマウスに投与したところ、がんの増殖をほぼ完全に阻害しました(Nat Commun. 2016 Aug 10;7:12365:下図)。

フェリクローム マウス大腸がんモデル

善玉菌は、腸内を通過し、やがて体外に排泄されてしまいます。そこで、腸内環境をベストな状態にするためには、毎日、乳酸菌をはじめとした善玉菌をできるだけたくさん摂る必要があります。

8位 マイタケ D-フラクション

目的:免疫力アップ、がんの増殖・転移をおさえる作用

きのこ類、なかでも舞茸(マイタケ)にはがん抑制効果が確認され、がんに効く食べ物(あるいはサプリメント)として注目されています。

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マイタケから抽出された成分であるD-フラクション(可溶性β-グルカン)は、がんと戦う免疫細胞(マクロファージ、T細胞、ナチュラルキラー細胞)の活性を高めることに加え、直接がん細胞の増殖を抑制することが示されています

マイタケ D-フラクションは、乳がん細胞の生存、遊走、および浸潤を抑制し、さらにマウスの乳がんモデルにおいて、腫瘍の成長および肺への転移(個数)を抑制することが報告されました(Nutr Cancer. 2017 Jan;69(1):29-43)。

また、マイタケ D-フラクションは、悪性度の高いトリプルネガティブ乳がんの増殖および転移を防ぐことが示されました(Oncotarget. 2018 May 4;9(34):23396-23412:下図)。

Dフラクションマウストリプルネガティブ乳がんモデル 

7位 アントシアニン

目的:抗酸化作用、がんの増殖・転移をおさえる作用

アントシアニンとは、植物に含まれるポリフェノール(光合成によってできる植物の色素や苦味の成分)の一種です。

「アントシアニンが目にいい」ことは有名ですが、酸化炎症を抑える作用があり、一部の研究によるとがんの予防や治療効果もあるという報告があります。

実際に、ブルーベリー(ビルベリー)のジュースを飲んで得られる程度のアントシアニンの濃度でも、膵臓がんや肝臓がん細胞の遊走能(転移に必要な運動能力)を抑える可能性が示されました(Eur J Nutr. 2017 Feb;56(1):203-214)。

アントシアニンは、アサイーベリーやブルーベリー(ビルベリー)、ブラックベリーなどに豊富に含まれています。

6位 ケルセチン

目的:がんの浸潤・転移をおさえる作用

野菜や果物など植物中に存在する天然の化学物質(ファイトケミカル)には、がんを予防したり進行を抑える作用をもつものがあります。

中でもタマネギに多く含まれるケルセチン(ポリフェノールの一種)は、強力な抗がん作用をもつことがわかってきました

ケルセチンは、膵臓がん細胞の増殖だけでなく、浸潤および遊走(運動能)を阻害することが報告されていますOnco Targets Ther. 2017 Sep 25;10:4719-4729:下図)。

ケルセチン膵臓がん遊走浸潤

ケルセチンは、タマネギの薄茶色の外皮に非常に多く含まれているため、皮ごと調理するか、タマネギの皮をつかったお茶などで工夫して摂取する必要があります。

外皮をふくんだサプリメントもあります。

5位 スルフォラファン

目的:抗酸化作用、抗炎症作用、がんの浸潤・転移をおさえる作用

多くの疫学研究により、アブラナ科の野菜を多く食べる人は、がんになりにくいことが分かっています。この理由の1つに、アブラナ科野菜にふくまれる化学成分(ファイトケミカル)であるスルフォラファンのがん予防効果が考えられています。

スルフォラファンには、強力な解毒作用、抗酸化作用、および抗炎症作用があり、がんに対する予防・治療効果があることが証明されています。

実際に、多くの細胞や動物実験により、スルフォラファンは、肺がん、乳がん、膵臓がんなどの増殖を抑制することが示されています。

とくに、スルフォラファンは、抗がん剤が効きにくいがんの親玉である「がん幹細胞(かんさいぼう)」を殺すことで、トリプルネガティブ乳がんに対する抗がん剤治療の効果を高めという報告があります(Cancer Lett. 2017 May 28;394:52-64)。

スルフォラファンをとるには、ブロッコリースプラウトがいいようです。最近では、野菜コーナーでよく見かけるようになりました。

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「ブロッコリー(ブロッコリースプラウト)を毎日食べるのは無理」という人におすすめのサプリメントです。

4位 フコイダン

目的:免疫力を高める、がんの抑制作用

フコイダンとは、褐藻類(かっそうるい)といわれるコンブ、ワカメ(メカブ)、モズクに含まれる特有のヌメリ成分(食物繊維)の一種です。

抗がんサプリメントとして人気があります。

これまでの多くの研究により、フコイダンは以下の5つのおもな作用によって、がんの治療をサポートすることがわかりました。

1.がん細胞に対する抗腫瘍(アポトーシス導入)作用 

2.血管新生を抑制し、がんの成長・転移を阻止する作用

3.免疫力を高める作用

4.抗がん剤・分子標的薬の効果を高める作用

5.疲労感を軽減し、がんや抗がん剤治療にともなう筋肉の萎縮を改善する作用

さらに、フコイダンの効果を実際のがん患者さんで調べた3つの臨床試験があります。

このうち、ランダム化比較試験において、フコイダンは抗がん剤治療と併用することで、転移性大腸がん患者さんの病勢コントロール率(効果があった+進行を認めなかった患者さんの率)を改善し、生存期間を延長する可能性が示されました。

3位 クルクミン(ウコン)

目的:抗酸化、抗炎症作用、がんの成長抑制(血管新生阻害、間質抑制、免疫の賦活化)

ウコン(ターメリック)に含まれる黄色のポリフェノール化合物であるクルクミンは、以下のさまざまな作用機序によってがんを抑制することが報告されています。

  • 抗酸化・抗炎症作用
  • がん細胞の増殖シグナルを阻害する作用
  • がん細胞に対する細胞死(アポトーシス)の導入作用
  • 血管新生(がんの成長に不可欠な、新たな血管を引き寄せる作用)の阻害
  • がんの進行を手助けする周囲の間質(かんしつ)細胞への抑制作用
  • がん免疫のブレーキとなる制御性T細胞を減少させ、一方がん攻撃の司令塔となるTh1細胞を増加させる作用

さらに、クルクミンは、実際の臨床試験においてもその抗腫瘍効果が確認されています

たとえば、膵癌(すい臓がん)患者を対象とした、クルクミン単独治療による臨床試験では、クルクミンの血中濃度が低かったにもかかわらず、2人に効果がみられ、肝臓への転移病変が著明に縮小した症例が報告されています(下図)

Dhillon N., et al. Clin Cancer Res. 2008;14:4491-9.より引用

2位 EPA(エイコサペンタエン酸

目的:抗炎症作用、がんの増殖抑制

EPA(エイコサペンタエン酸)はDHA(ドコサヘキサエン酸)と同様、必須脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の一種で、魚油(フィッシュオイル)に多く含まれています。

EPAには強い抗炎症作用があり、心筋梗塞や虚血性心疾患、動脈硬化、脳梗塞、脳卒中、血栓症高脂血症などの予防や改善に役立つことが明らかになっています。

また、以下の理由により、EPAには、がんの予防および治療効果があると考えられています

● 多くの細胞や動物実験において、EPAはがんの発生や増殖・転移を抑える

● EPAを多く含む青魚を食べている人はがんになりにくいという研究結果や、前立腺がんのリスク低下も報告されている

● ランダム化比較試験において、術前のEPAの投与は、大腸がん肝転移の患者さんの生存期間を延長する傾向があることが示された(Gut. 2014 Nov;63(11):1760-8:下図)

EPA生存率

EPAは、特に青魚に多く含まれる脂肪酸ですが、体内では作られにくく毎日の食事やサプリメント等でしっかりと摂り入れることが大切です。ただ、サプリメントによってEPA量のばらつきがあるので注意が必要です。

1位 ビタミン+ミネラル(微量元素)

目的:抗酸化作用、がん予防、副作用の軽減・全身状態の改善

おすすめのサプリメント第1位は、やはりビタミンとミネラルでしょう。

ビタミンとミネラルは、からだの調子をととのえ、免疫力や生活の質(QOL)を保つために必要な栄養素です。実際、ビタミンやミネラル欠乏によって、貧血など様々な病気になります。

「ビタミンとがん」に関する研究は非常に多く、一部にネガティブなデータがあることも確かです。ただ、同じような研究でも、スタイル(後ろ向きか前向きか等)、対象者や規模(誰を何人対象にしているのか等)によって結果が異なることはよくあることです。

これまでの研究結果を独自に調査した結果、以下のことが明らかとなっています。

● 120万人以上を対象とした最新のメタ解析(多くの研究結果を総合的に解析する手法)によると、ビタミンの摂取(とくにビタミンB12とビタミンD)は膵臓がんのリスクを10%減少するMedicine (Baltimore). 2018 Mar;97(13):e0114)

● リンチ症候群という、がんの発症リスクが高まる遺伝性疾患の患者さん約2000人を対象とした臨床研究において、3年間以上にわたってマルチビタミンを摂取していた人は、大腸がんを発症するリスクが50%以上も減少していたInt J Epidemiol. 2016 Jun;45(3):940-53)

● 日本の臨床研究(ランダム化比較試験)において、ビタミンDのサプリメント(1,200 IU/日)によって肺がん患者の生存率が改善したClin Cancer Res. 2018 Jul 17. doi: 10.1158/1078-0432)

● マルチビタミンのサプリメントによって抗がん剤の副作用である末梢神経障害(手足のしびれ)が軽くなった(J Natl Cancer Inst. 2017 Dec 1;109(12))

マルチビタミン(+ミネラル)は、こちらのネイチャーメイドのサプリメントで十分だと思います。

注意

一部のビタミンの摂取によって、抗がん剤の治療効果が低下したり、がんの転移が促進されたというデータもあります。

たとえば、抗がん剤治療を受けた乳がん患者さんを対象とした臨床試験において、ビタミンB12のサプリメントを治療前+治療中にとっていた人では、再発のリスクが80%、死亡のリスクが2倍に増加していました(マルチビタミンの摂取は、再発・死亡率との関連を認めませんでした)。

したがって、抗がん剤治療を受ける患者さんは、飲んでいるサプリメントについて、主治医とよく相談してください。

まとめ

以上、私が独断で選んだ「がん患者さんをサポートする抗がんサプリメント(トップ10)」でした。

順位 サプリメント
10位  HMB
9位  乳酸菌(プロバイオティクス)
8位  マイタケ D-フラクション
7位  アントシアニン
6位  ケルセチン
5位  スルフォラファン
4位  フコイダン
3位  クルクミン(ウコン)
2位  EPA
1位  ビタミン+ミネラル

この中から、ご自分に合ったサプリメントを選ぶとよいでしょう!

すぐに効果があらわれる訳ではありませんが、続ければ、きっとあなたのがん治療をサポートするパワーになると思います。

 


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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