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がんの痛みは我慢しない!がん疼痛の原因と治療法(薬物療法)について

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がん患者さんは、さまざまな原因により、痛み(がん疼痛)を感じることがあります。

がんの痛みは生活の質の低下につながり、治療への意欲を失わせ、ひいては予後(生存期間)にも影響をあたえる可能性があります。

にもかかわらず、がんそのものに対する治療ばかりが重視され、がんの痛みは軽視されてきました。

しかし最近では、「がんの痛み」に対する治療法も進歩し、ほとんどの患者さんでコントロールできるようになりました。

また、末期の患者さんに限らず、がんと診断されてから早期に痛みをとる治療(緩和医療)を導入するメリットも報告されています。

今回は、がん患者さんにみられる「痛み」の原因と治療(おもに薬物療法)について解説します。また、多くの患者さんがもつ「がんの痛みに関する誤解」についても取り上げます。

がん患者さんの痛みの原因

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がん患者さんの痛みの原因はさまざまで、すべてがんによる痛みとは限りません。

がん患者さんが感じる痛みの原因には、以下のものがあります。

● がん自体による痛み

がんによって直接引き起こされる痛みです。たとえばがんの浸潤(しんじゅん)による内臓や神経の破壊、虚血、圧迫などが原因となります。

典型的な例では、乳がんなどの骨転移があります。

● がん治療に伴う痛み

手術による傷の痛み、抗がん剤や放射線治療の副作用・後遺症などです。

● がんに伴う消耗や衰弱による痛み

筋肉や関節の萎縮、拘縮(こうしゅく)などによる痛みです。

● がんとは直接関係のない痛み

がん以外の病気、たとえば変形性関節症、胃潰瘍、胆石などによる痛みです。

がんの痛みに対する治療

薬物療法

がん疼痛に対する薬物療法は、WHO方式がん疼痛治療法にしたがっておこなわれます。

第一段階:まず軽度の痛みに対して、非オピオイド鎮痛薬(アセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs))を開始します。
第二段階:軽度から中等度の痛みに対して、弱オピオイド(コデイン、トラマドールなど)を追加します。
第三段階:中等度から高度の痛みに対して、弱オピオイドから強オピオイド(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなど)に切り替えます。

この他、急に痛みが強くなったとき(突出痛)には、速効性の頓服薬(レスキュー薬といいます)を用います。

最終的には、がんの痛みから解放されることを目標とします。

一般的ながん疼痛治療の流れ(アルゴリズム)を図にまとめます(下図)。

がん疼痛治療アルゴリズム

放射線治療

痛みの原因が局所の腫瘍による場合は、放射線治療が効果的なことがあります。

具体的には脳転移による頭痛、神経や軟部組織への腫瘍の浸潤に伴う痛み、腫瘍による管腔臓器(胃や腸)の狭窄や閉塞に伴う痛みなどがあります。

また、痛みを伴う骨転移に対して放射線治療が有効であると報告されています。

外科的治療

腫瘍による胃や腸の狭窄や閉塞が痛みの原因の場合、バイパス手術によって痛みが緩和されることがあります。

神経ブロック

痛みの原因となっている神経に、直接、局所麻酔薬やアルコールなどの神経破壊薬を注射することで、痛みを緩和する方法です。

麻酔科(ペインクリニック)の専門医によって行われることが一般的です。

その他

この他に、イメージ療法、呼吸法、リラクゼーション、音楽療法、マッサージ、鍼灸、あるいは心のケアなどが痛みを緩和するのに有効であることが報告されています。

がんの痛みに関する誤解

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がんの痛みに関しては、いまだに多くの誤解があります。

たとえば、患者さん自身が「がんだから、ある程度の痛みはあたりまえ」と思いこみ、痛みをがまんしたり、医療者に伝えないことも多いようです。

また、「早死にする」とか「中毒になる」といった理由から、鎮痛剤とくに医療用麻薬(オピオイド)に対する抵抗感をもっている患者さんもいます

実際にはどうなのでしょうか?

以下に、清水大一郎先生(清水クリニック院長)が「がんが再発・転移した時、あなたは?」の中で紹介している答えを引用し、がんの痛みに関する誤解を解きたいと思います。

1.がんの痛みは我慢するべきか?

痛みを我慢することはストレスになります。また睡眠障害や食欲低下を引き起こします。さらに不安、抑うつ状態になることもあります。

痛みは我慢せず、十分な量の痛み止めを使って、早めに痛みをとることが大切です。

2.あまり痛みを訴えると、がん治療のさまたげになるのでは?

痛みは本人しかわからない情報です。伝えない限り適切な治療ができません。

「痛みを訴えすぎて、医師に悪い印象を与えるのでは」といった心配は無用です。けっして痛みを訴えない患者が「良い患者」ではありません。

3.鎮痛剤が増えることで副作用が強くなるのでは?

可能性はありますが、今は副作用対策がきちんとされているので心配ありません。

4.医療用麻薬を使うと麻薬中毒になるのでは?

適切に使用すれば中毒の心配はありません。麻薬は痛みがある患者で使用した場合、安全であり、依存(中毒)を起こさないことがわかっています。

5.医療用麻薬を使うと寿命が縮む?

適切に使用すれば死期を早めることはありません。むしろ、ストレスが減り、不眠が解消され、全身状態が改善することで延命効果につながると考えられます。

6.医療用麻薬を早くから使うとあとで効かなくなる?

一般的に長期間使用しても、効かなくなることはありません。

7.医療用麻薬を飲んだら何もできなくなる?

適正な量を使えば、眠くて何もできないといった問題はありません。

8.医療用麻薬は、症状の悪い末期の人が使う薬なのか?

がんの痛みに限らず、手術後の痛みなどにも使っています。したがって、「医療用麻薬=末期がん」ではありません。

以上です。

参考文献:がんが再発・転移した時、あなたは?


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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