乳がん 食事療法

リンゴや四季柑に含まれるポリフェノール、フロレチンの抗がん作用:最新の研究結果

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リンゴなどのフルーツをたくさん食べる人は、がんの発症率が低いことが明らかとなっています。

また、以前の記事で紹介したように、乳がんの再発を防ぐための食べ物のひとつに、リンゴがあります。

リンゴには、がんの予防や治療の手助けをするポリフェノールがたくさん含まれているのですが、とくにフロレチン(phloretin)という成分に注目が集まっています。

過去の研究では、フロレチンはがん細胞の増殖を抑制し、細胞死(アポトーシス)に導くことが報告されていました。

今回、このフロレチンが、乳がん細胞の増殖と遊走能(がんの転移に必要な運動能力)を阻害したという実験結果を紹介します。

リンゴのポリフェノール、フロレチンが乳がん細胞の増殖と遊走を阻害

The apple polyphenol phloretin inhibits breast cancer cell migration and proliferation via inhibition of signals by type 2 glucose transporter. J Food Drug Anal. 2018 Jan;26(1):221-231. doi: 10.1016/j.jfda.2017.03.009. Epub 2017 Apr 18.

本研究では、トリプルネガティブ乳がん細胞(MDA-MB-231)を用い、フロレチンの増殖および遊走(細胞の運動能)に対する作用を調べました。

最後に、マウスのがん移植モデルにおいて、フロレチンの抗がん作用を調べました。

結果を示します。

フロレチンは乳がん細胞の増殖を抑制する

フロレチンの治療(150 μM)により、乳がん細胞MDA-MB-231の増殖が抑制されました。一方で、正常の乳管細胞の増殖には影響を与えませんでした(下図)。

フロレチン乳がん細胞増殖抑制

フロレチンは乳がん細胞の遊走を阻害する

フロレチンは、濃度依存的に、乳がん細胞MDA-MB-231の遊走を阻害しました(下図)。

フロレチン乳がん細胞遊走阻害

フロレチンはマウス乳がんモデルの腫瘍成長を阻害する

マウスを用いた実験により、フロレチン(50mg/Kg)は移植した乳がんの成長を抑制しました(下図)。

フロレチン乳がんマウスモデル

フロレチンの抗がんメカニズム:GLUT2経路を介したグルコース取り込み阻害

フロレチンによる抗がんメカニズムを考察します。

フロレチンは、細胞のグルコース取り込みのポンプ作用を持つグルコーストランスポーター(GLUT2)を阻害するはたらきがあるといわれています。

つまり、フロレチンはがん細胞のグルコース取り込みを阻害し、その結果、がん抑制遺伝子p53に依存した細胞周期停止と、遊走分子であるFAK(焦点接着キナーゼ)を介した細胞遊走能の低下をもたらすと考えられます(下図)。

フロレチンによる抗がん作用メカニズム

フロレチンを含むフルーツ

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フロレチンはポリフェノールの一種で、リンゴナシに含まれています。

また、シークワーサーと似た柑橘系フルーツの四季柑(しきかん)にも豊富に含まれています。

四季柑カラマンシー

四季柑(別名:カラマンシー)は、フィリピンなど東南アジアで人気の柑橘類で、フロレチンに加え、クエン酸、ノビレチン、シネフリン、ビタミンC、β-クリプトキサンシン、ヘスペリジン、カルシウムなどの栄養成分を豊富に含んでいることから、健康食品として注目されています。


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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

医師(産業医科大学 第1外科 講師)、医学博士。消化器外科医として診療のかたわら癌の基礎的な研究もしています。 標準治療だけでなく、代替医療や最新のがん情報についてエビデンスをまじえて紹介します。がん患者さんやご家族のかたに少しでもお役に立てれば幸いです。

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